96/09/26【堺市学童集団下痢症の原因究明ー調査結果まとめ】3

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V 関連事例の調査結果
 堺市の学童集団下痢症の発生と同時期に発生した大阪府下の老人ホームの
 O−157食中毒事例では、7月9日の昼食の献立で堺市の事例と同じ特定の生産施
 設から出荷された貝割れ大根が喫食されていたことが判明し、その後、大阪市内及び
 京都市内の集団給食施設において同時期に発生したO−157感染事例(京都市内の
 事業所の1事例、大阪市内の病院と保育所の2事例)においても、当該生産施設から
 出荷された貝割れ大根が使用されていたことが判明したため、これらの事例について
 担当する地方自治体からの現時点における情報を収集するとともに有症者から検出さ
 れたO−157のDN Aパターンを分析した。
 また、これらの食中毒調査と並行して、7月10日から20日までの間の大阪府内
 で発生した散発事例についても貝割れ大根の喫食状況及び有症者から検出されたO−
 157のDNAパターンを分析した。
1 集団発生事例の調査状況
(1)大阪府下の老人ホーム
 ア 7月15日に有症者の発生の通報があり、7月6日から7月24日までの有症
  者は98名(うち入院者14名)、33名(有症者は12名)からO−157が
  検出された。
 イ 調理の過程及びその後の取扱いの調査において、直接の原因と考えられる問題
  点は確認できなかった。
 ウ 7月4日から14日までの献立についての喫食調査の結果から、統計学的に解
  析を行ったが、特定の献立を原因食とする結果を得ることができなかった。
 エ 7月15日から18日までの間に発症者数のピークが存在するので、
  O−157の一般的な潜伏期間が4〜8日であることから、7月7日から14日
  までの間の食事を中心として調査を行った。
 オ 検食及び流通経路調査において確認した関係食材等の検査においては、
  O−157は検出されなかった。
 カ 調理従事者の検便検査結果については20名中5名が陽性であったが、給食を
  喫食しているため、感染源と特定することはできなかった。
 キ 一方、O−157の陽性者33名の喫食調査によると、共通食は7月9日に老
  人ホームの調理場で調理された昼食(ビーフカレー、貝割れ菜サラダ、らっきょ
  う漬)のみであった。
 なお、この貝割れ菜サラダに使用された貝割れ大根は堺市の事例と同一の生産
  施設から、7月7日に出荷されたもの(堺市の学校給食では、北・東地区で喫食
  された。)であった。
 ク また、本事例の有症者から検出されたO−157のDNAパターンは、堺市の
  小学校の有症者から検出されたO−157のDNAパターンと一致した。
(2)京都市内の事業所
 ア 7月18日に食中毒様の症状を有する者が発生した旨の通報があり、75名の
  検便の結果、5名からO−157が検出された。
 イ O−157が検出された5名の発症日が7月16日から18日までであること
  発症の第1のピークが17日、第2の小さなピークが20日から22日までの間
  にあることから、15日から22日までの間に発症した47名を本事例を調査す
  る際の有症者とした。
 ウ 京都市で設けた原因解明プロジェクトチームの検討内容は次のとおりである。
  当該事業所の従業員を
 Aグループ:O−157陽性の発症者5名
  Bグループ:7月15日から22日までの発症者47名
  Cグループ:Bグループのうち、罹病期間に下痢が1日3回以上あった27名
  の3グループとその他の従業員3,108名のグループに分けて、前者3グルー
  プを症例、後者を対照として疫学的な検討を行った。
  なお 、検討の対象とした食事は、
  1.O−157の潜伏期間は幅広く見積もっても1日から8日と考えられること
 2.O−157陽性の発症者のうち、最も早期の発症日は7月16日であること
  3.7月15日からの発症者を食中毒例として取り扱っていること
 から、7月8日から14日までの間の食事とした。
  この結果により、3つの症例群と対照群の間に有意差が認められた食事であっ
  て、かつ、症例群における喫食割合(食堂の利用割合)が特に高い7月11日と
  12日の昼の定食が最も疑わしいと考えられた。
 エ 調理の過程及びその後の取扱い状況の調査の結果には、特に問題はなかった。
  調理従事者の検便、検食及び流通経路調査において確認された関係食材等の検査
  においては、現在までのところO−157は検出されていない。
 オ 非加熱食材は、7月11日の昼の定食では貝割れ大根、マヨネーズ、7月12
  日の昼の定食では線キャベツ、カット人参、トマト、パセリ、かまぼこであった
  なお、7月11日の昼の定食に使用された貝割れ大根には、堺市の事例と同一
  の生産施設から7月9日に出荷されたもの(堺市の学校給食では中・南地区で喫
  食された。)が含まれていた。
 カ また、本事例の有症者2名から検出されたO−157についてのDNAパター
  ンを分析した結果、堺市の小学校の有症者から検出されたO−157のDNAパ
  ターンと一致した。
2 その他の関連事例の調査状況
(1)大阪府下の有症者の調査状況
 ア 7月10日から20日までの間に、大阪府下においては老人ホームの事例以外
  にもO−157陽性の有症者(以下「O−157陽性者」という。)が157名
  発生しており、そのピークは7月15日である。
 イ これらの事例のうち、大阪市内の病院の事例及び保育所の事例は、発生が散発
  的で発症率も低いため、原因が給食であるとは断定し難い。
 ウ なお、大阪市の病院及び保育所については、堺市の事例と同一の生産施設が7
  月8日に出荷した貝割れ大根が喫食されていた。
 エ これら157名の有症者から検出されたO−157のDNAパターンと堺市の
  学童の有症者から検出されたO−157のDNAパターンの一致状況は、以下の
  とおりだった。
   −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 l l 大 阪 府 l 大 阪 市 l 合 計 l
 l l(大阪市及び l l l
 l l堺市を除く。)l l l
  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 lO−157検出者計 l 98( 9/12) l 59(47/51) l 157(56/63)l
  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 l貝割れ大根喫食者計 l 26( 3/ 3) l 21(20/20) l 47(23/23) l
 l −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 l l当該生産施設関係 l 7( 1/ 1) l 12(12/12) l 19(13/13) l
 l l −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 l l l病院、保育所 l  − l 12(12/12) l 12(12/12) l
 l −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 l l他の生産施設関係 l 5( 1/ 1) l 0( 0/ 0) l 5( 1/ 1) l
 l −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 l l施設の特定不可能 l 14( 1/ 1) l 9( 8/ 8) l 23( 9/ 9) l
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 l貝割れ大根非喫食者計l 38( 4/ 7) l l l
 −−−−−−−−−−−−−−−−−l 38(27/31) l 96(32/39) l
 l不明者計 l 20( 1/ 1) l l l
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 l調査不能計 l 14( 1/ 1) l 0( 0/ 0) l 14( 1/ 1) l
 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
 人数(一致者数/DNA分析終了者数)
(2)堺市の事例の生産施設からの貝割れ大根の出荷状況
 ア 当該生産施設では、7月1日から15日までの間に計24.6トンの貝割れ大
  根を24カ所の一次卸業者に出荷し、最終的に納入された販売施設は967か所
  (2府5県)あることが確認された。
 イ これらの販売施設のうち958施設について販売実績及び散発事例の調査を行
  ったところ、このうち10施設について13名のO−157陽性者が購入した施
  設であることが確認された。
VI 結論
1 以上の調査結果においては、汚染源、汚染経路の特定はできなかったが、
 1. 入院者が全員出席した日が中・南地区で9日、北・東地区で8日のみであるこ
  と
 2. 喫食調査の結果からも8日及び9日の両日の献立が疑われ、共通の非加熱食材
  が特定の生産施設の貝割れ大根のみであること
 3. 実験により貝割れ大根の生産過程におけるO−157による汚染の可能性があ
  ること及び保管の過程における温度管理の不備により食品衛生上の問題が発生す
  る可能性が示唆されたこと
 4. 中・南地区及び北・東地区の有症者のO−157のDNAパターンが一致した
  こと
 が判明し、さらに詳細な分析結果も含め総合的に判断すると、堺市学童集団下痢症の
 原因食材としては、特定の生産施設から7月7日、8日及び9日に出荷された貝割れ
 大根が最も可能性が高いと考えられる。
 なお、同時期に発生した集団事例において、7月7日及び9日に出荷された特定の
 生産施設の貝割れ大根が献立に含まれており、かつ、有症者から検出されたO−
 157のDNAパターンが堺市のものと一致した。
2 今後、当該食材について、農林水産省における生産過程を通じた衛生対策の検討結
 果を踏まえつつ、適宜、食品監視を行い、再発の防止を図るとともに、今回明らかと
 なった給食システムにおける食材管理等の問題点について、文部省との協力の下、適
 切な対応を行うことが必要と考えられる。
VII おわりに
1 堺市の学童集団下痢症の原因究明の結果からは、特定の生産施設から特定の日に出
 荷された貝割れ大根が原因食材として最も可能性が高いとしたものであり、特定の日
 以外に出荷されたもの及び他の生産施設から出荷されたものについて、安全性に問題
 があると指摘したものではない。
 現在、農林水産省において、貝割れ大根の生産施設について衛生管理の徹底の指導
 がされていることから、貝割れ大根の安全性は十分に確保されているものと考える。
2 本調査の実施及び結果のとりまとめに当たって、多大の御協力をいただいた地方公
 共団体及び試験研究機関の関係者並びに学識経験者に対して深く感謝する次第である
 。
 問い合わせ先 厚生省生活衛生局食品保健課
 担 当 南(内2445)、道野(内2447)
 電 話 (代)[現在ご利用いただけません]
 (直)3501-4867

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