海洋プラスチック問題は海洋汚染の要因にも きれいな海と生態系を守る!「プラスチック・スマート」キャンペーン
POINT
ペットボトルなどの容器包装から家庭用品やオモチャまで、日常生活のあらゆる場所で利用されているプラスチック。便利な一方で、ポイ捨てなど不適切に処分されたプラスチックごみが大量に海に流出し、海洋環境を汚染し、海洋生物に深刻な影響を与えています。この「海洋プラスチック問題」は、海の生態系を含めた海洋環境への影響、観光・漁業への影響など様々な分野に悪影響を及ぼす喫緊の課題となっています。このままだと、令和32年(2050年)には海のプラスチックごみは魚の量を上回ると予測されています。海のプラスチックごみを減らすために、私たち一人ひとりのプラスチックとの賢い付き合い方が問われています。
1海のプラスチックごみが海洋汚染につながる?大量のプラスチックごみが海で暮らす生き物の脅威に!
平成31年(2019年)3月、フィリピンの海岸に打ち上げられたクジラの胃から40kgものビニール袋が出てきたというニュースがありました。日本でも、平成30年(2018年)の夏、神奈川県鎌倉市の浜辺に打ち上げられたクジラの赤ちゃんの胃の中からプラスチックごみが出てきました。このように死んだクジラの胃からビニール袋などのプラスチックごみが発見される例が世界各地でいくつも報告されています。クジラは海に漂流するビニール袋をエサと間違えて食べてしまいます。しかし、ビニール袋は消化されないため、クジラの胃の中がビニール袋でいっぱいになり、魚などのエサが食べられなくなって死んでしまったと考えられます。
クジラだけでなく、ウミガメやイルカ、海鳥など他の海の生き物でも、海に漂流しているビニール袋などのプラスチックを食べたり、プラスチック製の袋や網が体にからんだりして、死んでしまったり傷ついてしまったりする例が数多く報告されています。また、プラスチックごみが小さな破片になった「マイクロプラスチック」を、魚や貝などがエサと間違えて食べてしまう例も確認されています。
なぜ、海の生き物がプラスチックを食べてしまうのでしょうか。それは、私たちが使ったプラスチックのごみが、大量に海に流れ出てしまっているからです。海に流れ込むプラスチックごみは年間500万から1,300万トンとも言われています(ある研究者の推計)。プラスチックは自然分解されないため、ずっと海に残ります。世界経済フォーラムの報告書で報告された推計によると、今後も海に流れ込むプラスチックごみが増えれば、令和32年(2050年)には海のプラスチックごみは魚の量を上回ると予測されています。
2海のプラスチックごみはどこから来るの?海のプラスチックのほとんどは陸から出たもの
プラスチックは、軽くて丈夫で持ち運びしやすい、様々な製品に加工しやすいなど、多くのメリットがあり、世界中で様々な製品に使われています。
しかし、その中には、レジ袋やペットボトル、使い捨ての食器、商品のパッケージなど、使い捨てにされるプラスチックもたくさんあります。そうしたプラスチックごみがポイ捨てされたり、屋外に放置されたりすると、雨や風によって河川に入り、海に流れ出てしまいます。海のプラスチックのほとんどは陸からプラスチックごみです。
海に流れ出たプラスチックのごみは、潮の流れや風の力によって遠くまで運ばれたり、水面や水中を浮遊して遠くまで運ばれたり、海底に沈んだりしています。
四方を海に囲まれた日本の海岸には、海に流れ出たごみがたくさん漂着しています。自治体などが清掃活動を行って漂着ごみを回収していますが、清掃できない場所に漂着し、回収できない漂着ごみもたくさんあります。
環境省の調査によれば、令和4年度(2023年度)に全国で回収した漂着ごみはおよそ5万トンです。それを種類別に個数でみると、プラスチックごみが最も多くなっています。外国から流れ着いたプラスチックごみもありますが、多くは日本国内から出たプラスチックごみです。つまり、私たち自身が捨てたプラスチックごみが、日本の海岸を汚したり、海の生き物に悪影響を与えたりしている原因になっているのです。
様々なプラスチックごみ
(写真提供:環境省)
3私たちにできることは?プラスチックの3Rを実践し、プラスチックと賢く付き合おう
「捨てればごみ、分ければ資源」と言われますが、プラスチックも、きちんと分別すれば資源としてリサイクルすることができます。日本では、プラスチックごみを分別回収し、プラスチックをリサイクルする社会の仕組みもできています。しかし、日本の廃プラスチックのリサイクル率は27.8%で、リサイクルがあまり進んでいません。回収された容器包装プラスチックの半分以上は燃やして発電や熱利用に使われ、14%は未利用のまま、焼却や埋め立てることで処分されているのが実情です。
もっとプラスチックの3R(リデュース・リユース・リサイクル)を進め、プラスチックを有効に、賢く利用することで、海のプラスチックごみも減らすことができるはずです。
私たちは、毎日のようにプラスチックを使い、プラスチックごみを出しています。例えば、お店でもらうレジ袋、プラスチック製のスプーンやストロー、商品のパッケージ…。日本は、一人当たりのプラスチック容器包装の廃棄量が世界で2番目に多い国です。
プラスチックの3Rを進めるためには、私たち一人ひとりが毎日の暮らしの中でプラスチックごみを減らす取組をしていくことが重要です。次のような行動を参考に、皆さんも生活の中で実践していきませんか。
プラスチックごみを減らすための行動
- マイバッグを持参し、レジ袋はもらわない
- マイボトルを持ち歩き、プラスチックのカップを減らす
- マイ箸を持ち歩き、プラスチックのスプーンやフォークを減らす
- プラスチック製のストローの使用を控える
- スーパーなどで食品を小分けにするポリ袋の使用を減らす
- 詰め替え用ボトルなど繰り返し使えるものを選ぶ
- 食品の保存はふた付き容器を使い、ラップの使用を減らす
- 買い物のときには簡易包装を頼む
- 海・川・山のレジャーではごみを持ち帰る
- 屋外で出たごみは家に持ち帰って処分する
- 河川敷や海岸の清掃活動に参加する
- ごみは所定の場所・時間に、分別して出す
- ごみのポイ捨て、不法投棄はしない
4「プラスチック・スマート」キャンペーンプラスチックと賢く付き合うための取組を発信し、シェアしよう
海のプラスチックごみは日本だけでなく、世界全体で大きな問題となっています。国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」でも、「令和7年(2025年)までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」ことが、目標の一つとして掲げられています。
こうした中で、日本国内でも、企業がプラスチックのストローをやめたり、プラスチックに替わるものを開発したり、行政やボランティア団体などが海岸の清掃活動やプラスチックごみ削減運動をしたり、それぞれの立場で様々な取組を始めています。
環境省では、そうした様々な取組を応援し、さらに広げていくために、「Plastics Smart(プラスチック・スマート)」キャンペーンを実施しています。
「プラスチック・スマート」キャンペーンでは、ウェブサイトやSNSを通じ、プラスチックと賢く付き合うための皆さんの取組やアイディアを国内外に発信します。個人、企業、団体、行政あらゆる立場の皆さんが参加できます。
皆さんも、下記の方法で「プラスチック・スマート」キャンペーンにご参加ください。
個人(消費者)の皆さんへ
プラスチックごみを減らし、プラスチックと賢く付き合うためのあなたの取組やアイディアに、「#プラスチックスマート」とタグをつけて、Instagram、X 、facebookに投稿してください。
「ごみ拾いイベントに参加した」「マイボトルを持参して、ワンウェイの容器を控えた」など個人でできる取組をほかの人にもシェアしましょう。
また、それぞれのSNSで「#プラスチックスマート」で検索して、ほかの人の取組も見てみましょう。
企業、自治体、NGOなどの皆さんへ
「プラスチック・スマート」キャンペーンでは、海洋プラスチック問題の解決に貢献する企業、自治体、NGOなどの取組を募集しています。ポイ捨て・不法投棄撲滅運動や散乱ごみや海岸漂着物の回収イベント、リデュース・リユース・リサイクルの取組、代替素材(バイオプラスチックや紙)の利用など、皆さんの取組を登録してください。
「プラスチック・スマート」のウェブサイトにアクセスし、「登録用フォーマット」に、氏名、所属、電話番号、取組の内容などを記入し、掲載写真を添付して、事務局宛てにメールで送ってください。
「プラスチック・スマート」ウェブサイトには、令和6年(2024年)11月10日時点で約3,500件の取組が登録されていますので、皆さんの「プラスチック・スマート」の取組の参考にしてください。登録された取組は、キーワードやカテゴリーなどで絞り込んで調べることもできます。
また、環境省では、海のプラスチックごみ対策に向け、(公財)日本財団と連携し、下記のイベントを実施します。
海ごみゼロウィーク
平成31年(2019年)から、環境省は日本財団と共同で毎年「ごみゼロの日(5月30日)」、「環境の日(6月5日)」、「世界海洋デー(6月8日)」を含む約10日間を、「春の海ごみゼロウィーク」、「World Cleanup Day(9月20日)」を含めた約10日間を「秋の海ごみゼロウィーク」として海洋ごみ削減に向けた全国一斉清掃アクションを、全国の個人・団体・企業・自治体へ呼びかけています。詳しくは「海ごみゼロウィーク」をご覧ください。
海岸の清掃活動
(写真提供:環境省)
(取材協力:環境省 文責:内閣府政府広報室)