VOL.204 JUNE 2025
JAPAN’S RELATIONSHIP WITH WATER
四季折々の美しさを見せる「袋田の滝」
Photo: ISHIZAWA Yoji
関東地方の北東部、茨城県に日本を代表する名瀑として知られている袋田の滝がある。季節によって移り変わる大自然の風景を見に、多くの観光客が訪れるという。その魅力について大子町観光協会の担当者に話を聴いた。
茨城県は関東地方の北側に位置し、東部は太平洋に面し、南部は広い平野に恵まれた、農林水産業が盛んな地域だ。北部は渓谷や滝など季節ごとの景観が楽しめるエリアで、ここに袋田の滝がある。この滝について、大子町観光協会の加藤 君美さんはこう語る。
Photo: 大子町観光協会
「袋田の滝は高さ120m、幅73mの大きさを誇り、茨城県を代表する観光スポットです。国名勝1にも指定されています。この滝の特徴は、四段に岩壁を流れ落ちるダイナミックさにあり、このことから、四度の滝という別名もあります。この別名には、西行法師2が滝の風景を見て感銘を受け、四季に一度ずつ来てみなければ真の風趣は味わえないと絶賛したことを由来とする説や、空海3が四度にわたり滝を訪れたことを由来とする説など、諸説あります」
Photo: 大子町観光協会
春は冬の厳しい寒さで凍った滝が溶け出し、周りの木々の芽吹きと合わせて季節の変わり目を感じることができる。夏は抜けるような青空と水しぶきも浴びて涼やかで、秋は渓谷を彩る紅葉との調和、冬は雄大な滝が凍結する様など、四季折々でさまざまな表情を見せてくれるという。この素晴らしい景観は、古くから文化人に愛され、その情景を詠った和歌や俳句が数多く残されている。
Photo: 大子町観光協会
「滝を鑑賞するには、川沿いにあるトンネルを通り抜け、滝つぼから10mの場所で鑑賞できる第1観瀑台や上から滝の全景を眺めることができる第2観瀑台があります。また、川にかかる吊り橋から見る滝もおすすめで、色々な方向から楽しむことができます」と加藤さんは教えてくれた。
Photo: ISHIZAWA Yoji
近年では、滝を目当てに訪れる外国人観光客も増えており、2024年度は約1万2,600人が訪れたという。観光協会のホームページでは英語、中国語(簡体字、繁体字)、韓国語での多言語対応にて、情報発信をしている。
東京からも比較的行きやすい場所にある袋田の滝。自然が織りなす景色を見に訪れてみてはいかがだろうか。
- 1. 文化財保護法に基づき、文部科学大臣が指定する重要な記念物の一つ。庭園・橋梁・峡谷・海浜・山岳その他の名勝地やそれを展望できる地点で、歴史上または学術上価値の高いもの。
- 2. 1118年生、1190年没。武士であり僧侶、歌人。日本全国を旅しながら歌を詠んだ。その歌は新古今和歌集、山家集などに収められている。
- 3. 774年生、835年没。唐(当時の中国)で修行を積んだ後、9世紀初頭に日本仏教の宗派の一つである真言宗を開いた。書や詩にも優れた才能を発揮し、弘法大師とも呼ばれている。
※(注記)本稿中に登場する人物の生没年については諸説あり。
By TANAKA Nozomi
Photo: Daigo Tourism Association; ISHIZAWA Yoji