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VOL.200 FEBRUARY 2025
HISTORIC JAPANESE PUBLIC ARCHITECTURE OF THE MODERN ERA 伝統と革新の融合:金沢21世紀美術館

美しい円形が特徴的な美術館
Photo: ISHIZAWA Yoji

古くから城下町として栄えた石川県金沢市1の中心部に2004年に開館した金沢21世紀美術館。SANAAサナア(建築家の妹島せじま 和世かずよ西沢にしざわ 立衛りゅうえのユニット)2の設計による。この建物は、国際的な賞を受賞している日本の21世紀の建築を代表する公共建築の一つだ。

日本を代表する日本庭園の一つとして有名なけんろくえん3と街の繁華街である香林坊こうりんぼう片町かたまちを結ぶ動線上に位置し、美しい円形の建物として金沢市の新たなシンボルマークとなっている金沢21世紀美術館について、同美術館広報課長の落合おちあい 博晃ひろあきさんに話を聴いた。

「金沢21世紀美術館は、新しい文化の創造と新たな町の賑わいの創出を目的として建設されました。1990年代、金沢市中心部から県庁や金沢大学等公共施設の移転が相次ぎ、都市機能の低下が懸念される中、街中に人を集める施設として美術館建設が検討されたのです。美術館は現代アートを中心とした様々なテーマの企画展を開催しています。「スイミングプール」など、注目作家による常設アートも人気です」

[画像:金沢21世紀美術館フロアマップ]

パブリックスペースと展示室が街のように配列された館内(AからIは常設アート(恒久展示作品)の展示場所を示している。)
Photo: 金沢21世紀美術館


©レアンドロ・エルリッヒ《スイミング・プール》2004
金沢21世紀美術館蔵
レアンドロ・エルリッヒ作「スイミング・プール」。この作品も含め常設展示の作品の人気も高い。
Photo: ISHIZAWA Yoji

金沢21世紀美術館は、交流館と現代美術館が一体化した建物として、建築家の妹島 和世と西沢 立衛によるユニットSANAAによって設計された。館内は市民ギャラリーやレクチャーホールなど市民が無料で活用できるPublic Zoneと14の展示室が独立した建物のように配置されており、街の路地裏を歩くような体験ができる。


金沢21世紀美術館の外観
Photo: ISHIZAWA Yoji

「建築の主要コンセプトとして「多方向性」「水平性」「透明性」が掲げられています。四方に入口が設けられ、円形で全方位に公平に開かれた美術館は、市民や観光客が自由に行き来できる公園のような公共性の高い建物を目指して建てられました」

ガラス張りの美しいデザインやこれらのコンセプトは、海外からも高い評価を受け、美術館の建物自体が2004年ヴェネチアビエンナーレ国際建築展金獅子賞など国際的な賞を受賞している。


Public Zoneの一つであるレクチャーホール
Photo: ISHIZAWA Yoji

「さらに、この建物は柔軟性が高く、それぞれの展示室の間仕切りを取り払って空間を再構成できる作りが特徴的です。これは日本家屋がふすま4を取り外して大広間を設える変える考え方に似ています。また、外側のガラス張りの通路を日本家屋の縁側えんがわ5と捉えるかたもいます。円形の斬新な近代的な建築物ですが、日本家屋の伝統的なつくりを内包しているのです」


カーブを描いた122枚のガラスに覆われた外側通路
Photo: ISHIZAWA Yoji

そういったこの美術館の建築の特徴は、まさに金沢という伝統工芸の街にふさわしい美術館だと落合さんは考える。

「金沢には、伝統を未来へとつなげていくことは、単に古いものを保存するだけでなく新しいものを加えて大切にしていくという考え方があります。金沢21世紀美術館は、まさに伝統と革新を融合するという考え方が具現化された場所だと思います」


©マイケル・リン《市民ギャラリー 2004年10月09日 -2005年03月21日》2004
金沢21世紀美術館蔵
マイケル・リン作「市民ギャラリー 2004年10月09日 -2005年03月21日」。展示作品でもある椅子に座って、ゆったりとした時間を過ごせる。
Photo: ISHIZAWA Yoji

実際に、美術館を建設する際には122枚の微妙にカーブを描く曲面ガラスが円を描くように緻密に計算され設置するなど、最新の建築技術がさまざまに採用されている。

「実は館内には多種多様な椅子が配置され、自由にくつろげる空間を提供しています。ぜひ金沢を訪れた際は、美術館に足を運んでいただき、展示されている作品はもとより、美術館の建築自体が織りなすさまざまな風景に溶け込んでいただく体験をゆっくりと楽しんで頂きたいですね」

  • 1. 江戸時代(17世紀初頭から19世紀後半半ば)に、金沢城を擁する加賀藩前田家の城下町として栄え、近世の文化遺産が数多く残されている都市である。九谷焼や金箔工芸、加賀友禅などの伝統工芸や、能楽などの伝統芸能が受け継がれている町としても有名。
  • 2. 2004年ヴェネチアビエンナーレ国際建築展 金獅子賞、2010年プリツカー賞など数多くの賞を受賞。金沢21世紀美術館をはじめ、熊野古道なかへち美術館、飯田市小笠原資料館、ルーヴルランス (ランス、フランス)、ニューミュージアム(ニューヨーク、アメリカ)など、近年の主要な美術館建築を手がけている。
  • 3. 兼六園は金沢を統治していた加賀藩の歴代藩主により、長い歳月をかけて形づくられてきた名勝。近世の代表的な大名庭園であり、日本三大名園の一つとして知られている。
  • 4. 主として引き戸の形式で、日本独特の建具の一種。木で骨を組み、両面から紙でしたりをし、表面に布や紙を貼ったもの。
  • 5. 和室と屋外の庭との間にある空間で、部屋の外側に設けられた板敷きの通路のこと。西洋建築にあるウッドデッキ、ポーチ、テラス、ベランダと似たような役割を持つ。

By MOROHASHI Kumiko
Photo: ISHIZAWA Yoji; 21st Century Museum of Contemporary Art, Kanazawa

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