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VOL.200 FEBRUARY 2025
HISTORIC JAPANESE PUBLIC ARCHITECTURE OF THE MODERN ERA 日本の近代初期建築の傑作・旧済生館(きゅうさいせいかん)本館


正面から見た旧済生館本館。現在は山形市郷土館として活用されている。
Photo: ISHIZAWA Yoji

日本の東北地方の日本海側に位置する山形県。その中央部東寄りの山形市には、19世紀後半半ばに病院として建てられた建築「きゅう済生さいせいかん本館」があり、現在は山形市郷土館として活用されている。欧米の建築を日本の職人が真似て建築した「洋風ようふう建築」1の傑作として、国の重要文化財に指定されている同館の歴史と特徴を紹介する。

山形市の市街地のほぼ中央に位置する霞城かじょう公園にある「山形市郷土館」は、1878年に竣工した「旧済生館本館」を移築復元ふくげんした建物だ。山形市役所文化創造都市課の田辺たなべ 政則まさのりさんに話を聴いた。

「現在の山形市郷土館は、もともと1878年9月に山形城の旧三の丸大手門跡に建てられた県立病院でした。それを解体して復元し、1969年4月に霞城かじょう公園内に移築後、1971年に郷土館として開館しました」

初代山形県令2三島みしま 通庸みちつねが、文明開化の象徴として山形市に県立病院の新築を計画し、筒井つつい 明俊あきとしの設計により、大工の棟梁の原口はらぐち 祐之すけゆきらによって建てられた。

「原口は、山形の宮大工たちを多く集め、職人集団全部でおよそ300人の手で、わずか7か月で完成させたそうです。山形の人々は、この美しい三階建ての木造の高層の建物を、親しみを込めて「さんそうろう」と呼びました」


中庭側から見た三層楼の様子。
Photo: ISHIZAWA Yoji

「 “済生”とは、「人の命を救う」「人の命を助ける」という意味で、江戸時代の漢方薬の本によく使われていました。名前のとおりこの病院は、「人々の生命を救ってくれる館」として役立ってきました」

今日、旧済生館本館は、日本が本格的に近代化を歩み始めた明治時代(1868年から1912年)の初期に全国で建築された擬洋風建築の最高傑作の一つと賞賛されている。


特徴的なドーナツ型の回廊。
Photo: ISHIZAWA Yoji

「三層の塔屋とドーナツ型の回廊という、奇抜で斬新なデザインが特徴です。特に三層楼は旧済生館本館を最も象徴する部分です。1層が8角形で正面に吹き放し3の石敷きベランダ、2層が16角形の広間で屋根はドーム型の大屋根、3層は8角形の小部屋で広いバルコニーが取り付けられています。外観は3層ですが、ベランダやバルコニーが四つあることからも分かるように、内部は4階建てとなっています。2階と最上階の3階の間にある部屋を、中3階あるいは階段室などと呼称しています。このような複雑な構造は、小屋組み4の一部に西洋の技術が取り入れられているほかは、日本古来の高度な木造建築技術が支えています」

特にぜひ見てもらいたいのは、2階から3階へ繋がる螺旋らせん階段だ。

「階段の踏み板の一段一段に施された唐草からくさ模様5の装飾や、1本の芯柱で支える構造など、建築物の意匠としても建築技法的な観点からもとても興味深いスポットです。文化財の保護などのため、この階段は下から鑑賞するのみですが、じっくりと見る価値はあると思います」


当時の職人たちの工夫を凝らした様子がうかがえる螺旋らせん階段。
Photo: ISHIZAWA Yoji

現在は医学資料や郷土資料の展示などを楽しむことができる山形市郷土館として今でも市民に活用されている「旧済生館本館」。北国、山形市を訪れる機会があったら是非立ち寄っていただき、その独特の意匠と日本の優れた伝統的な木造建築のわざを見ていただきたい。

  • 1. その土地の大工たちが洋風建築に似せて建てた主に木造建築。
  • 2. 当時における県知事のような役職。
  • 3. 柱の間に壁がなく、風が自由に通る構造。
  • 4. 屋根を支えるために設けた骨組み。
  • 5. つる草が絡み合う様子を図案化した文様。生命力や長寿、繁栄などを表す意味を持つとされる。

By MOROHASHI Kumiko
Photo: ISHIZAWA Yoji

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