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VOL.200 FEBRUARY 2025
HISTORIC JAPANESE PUBLIC ARCHITECTURE OF THE MODERN ERA 日本における建築の近代化の進展を示している希少な石造りの建築

札幌市資料館の正面

1926年に札幌控訴院1として建てられ、現在は「札幌市資料館」して活用されている建物は、日本における建築の近代化が進展した時代を具体的に示している価値の高い建築だ。その特徴について、同資料館の担当者に話を聴いた。

日本の最北部に位置する北海道の中心的な都市が札幌市だ。その札幌市の中心部に位置する大通おおどおり公園の西端に札幌市資料館がある。この建築は2020年に国の重要文化財に指定された。その特徴について、札幌市資料館の川股かわまた 幸乃ゆきのさんはこう話す。

「外壁に札幌さっぽろ軟石なんせき2という、石材が用いられています。軽く加工しやすく保温性に優れた特徴があり、主に外壁の装飾用として用いられていました。札幌市資料館は札幌軟石を使った現存する建物としては最大級であり、貴重なものです。その見どころは建物正面です。シンメトリー(左右対称)なデザインで、ルネサンス様式3を基調としていますが、装飾が控えめで重厚な石造の外観に、均一に縦長な窓が配置されています。こうした比例や対称性を重視しつつ、優雅で壮大な印象を与える点が大きな特徴です。車寄せのアーチの屋根部分には、「札幌控訴院」の文字と、法の女神の頭像が彫刻されています。また、窓が、寒冷地の仕様で、外側が両開き窓、室内側は上げ下げ窓の二重窓の構造になっているのも見どころです。ほかにも、館内の中央階段の出窓には、当時流行していたステンドグラスが使われています」。


札幌市資料館の正面玄関車寄せの屋根部分にある法の女神・テミスの頭像。目隠しには「私情を挟まず、公平無私」といった意味が込められているとされる。
Photo: 札幌市資料館

こうしたデザインや構造を持つ資料館は、「日本の近代化が進展した時代を具体的に示している」と評価され、2020年に国の重要文化財に指定された。


札幌市資料館の二重窓を内側から見た様子。
Photo: 札幌市資料館

札幌市資料館の中央階段。ステンドグラスがはめられた窓は出窓になっている。
Photo: 札幌市資料館

また、館内には19世紀の刑事法廷を復元した展示から、当時の裁判の様子をうかがうことができるという。

「この刑事法廷展示室は市民や、学生たちにも模擬裁判の体験を実施するなど活用しています」。

19世紀の札幌市の裁判所の歴史も建築も知ることができると、見学に立ち寄る市民も多いという。

「当時の裁判所としての意匠が見て取れることと、建築の近代化が進んでいたことが分かることから、高い価値がある資料館です。その設計から、当時の日本政府が建てた西洋建築には、公共性と権威を象徴する意図が読み取れると思います。末永く残すべき貴重な建物ですので、札幌市にいらした際はぜひ訪れてみてください」。


札幌市資料館の刑事法廷展示室の様子。
Photo: 札幌市資料館
  • 1. 1886年から1947年まで設置されていた裁判所のこと。1947年の司法制度改革により「高等裁判所」に変えられた。
  • 2. 4万年前の支笏しこつ火山の噴火で、20数km離れた札幌さっぽろ石山いしやま地区に火山灰が降り積もってできた石。石材としては軽く、加工しやすかったため、19世紀から20世紀初頭まで建築資材として盛んに使われた。
  • 3. 15世紀から17世紀初頭(諸説ある)にイタリアを中心にヨーロッパに普及した建築・美術様式。建築ではシンメトリー(左右対称)とバランス(調和)を重視した。

By TANAKA Nozomi
Photo: Sapporo Shiryokan; PIXTA

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