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VOL.206 AUGUST 2025
THE APPEAL OF YOSHOKU: JAPANESE-STYLE WESTERN CUISINE (PART 1) 西洋と日本の文化が融合して生まれた「あんぱん」


誕生から約150年の歴史を持つ「あんぱん」
Photo: 木村屋總本店

日本で親しまれている甘いあんこ1を包んだパン「あんぱん」は、パン屋として長い歴史を持つ老舗「木村屋きむらや總本店そうほんてん」の創業者が発案したものだ。東京都中央区の商業地である銀座に本店を構える同店は、パンを作る上で必要な酵母こうぼとして、米・こうじ・水からできた酒種さかだね酵母こうぼを使った日本独自の製法であんぱんを生み出した。

ふんわりとしたパンに、豆のペーストであるあんこが包まれている「あんぱん」は、「木村屋總本店」の創業者親子が作り出した。その歴史を、広報担当の方に教えてもらった。


「木村屋總本店」創業当時の店舗外観
Photo: 木村屋總本店

「創業者の木村きむら 安兵衛やすべえが、1869年に木村屋總本店の前身である「文英堂」を開業しました。日本の近代化改革である明治維新めいじいしん2の後、西洋文化が急速に流入し、パンも少しずつ普及し始めていましたが、当時の西洋のパンはイースト酵母で発酵させた硬くて酸味が強いものだったため、日本ではなかなか受け入れられていませんでした。そんな中、木村 安兵衛とその息子・英三郎えいざぶろうは、和菓子の「酒まんじゅう」3からヒントを得て、日本独自の「酒種さかだね」という酵母菌を使った発酵法でしっとりと柔らかい生地を開発。そこに甘いあんこを包み込んだのが、現在の「あんぱん」のはじまりです」


創業者の木村 安兵衛氏(左)と息子・英三郎氏(右)
Photo: 木村屋總本店

日本人にとって、親しみやすく優しい味わいのあんぱんは、1875年に明治天皇(第122代天皇。在位1867年から1912年)に献上されたことで、瞬く間に大衆に広まったそうだ。


桜の塩漬けを載せた「酒種あんぱん 桜」(写真中央)や、けしの粒をまぶした「酒種あんぱん けし」(写真上下)など、木村屋總本店の酒種あんぱんには様々な味がある。
Photo: 木村屋總本店

文明開化ぶんめいかいか4という言葉が流行した19世紀後半には、「文明開化の七つ道具」5というものがありました。「新聞社」「郵便」「瓦斯灯ガスとう6「蒸気船」「写真絵」7「展覧会」「軽気球けいききゅう8おか蒸気」9とともに、「あんぱん」が挙げられていました。あんぱんが当時いかに画期的であったかがうかがえます」

あんぱんの発明は、パン食文化が日本に広がるきっかけにもなったと言われている。酒種を使ったあんぱんは、今も当時と変わらない製法で作られる看板商品だ。


酒種を用いた柔らかなパン生地に控えめな甘さのあんこを手包みして作られる。
Photo: 木村屋總本店

「酒種は、日本酒を作るときにも使われます。イースト菌よりも発酵力が弱く、菌の数が少ないため発酵するスピードが遅いのが特徴です。種づくりからお客さまのもとに届くまで10日間かかります。また、気温や湿度によってパンの発酵が安定しない場合があるため、「たね」と呼ばれる発酵の専門職が室内環境を適切に調整する役割を担っております」


伝統の製法を守るあんぱんは、1968年頃から現在の丸型となった。それ以前は細長い形だったと伝えられている。
Photo: 木村屋總本店

種師が酒種の様子を観察し、最適な環境になるよう室内の気温や湿度をコントロールしているお陰で、今でも当時と変わらないおいしいあんぱんが食卓に届いているという。

「あんぱんは、西洋のパン文化と日本の和菓子文化が融合して生まれた日本独自のパンで、和と洋のおいしさを一度に楽しめます。日本の味を気軽に体験できる一品として、海外の方にもぜひ味わってみていただきたいです」

  • 1. 豆などを煮詰めて、砂糖と共に練ったペースト状のもので、和菓子などによく使われる。
  • 2. 19世紀半ば、幕藩体制を打破し、西洋国際体系へ参加して近代国民国家を形成する契機となった政治社会の大変革。
  • 3. 酒種を使用して作られるまんじゅう。作り方が酒の作り方と似ていることや、仕上がったまんじゅう自体も酒の香りがすることから「酒まんじゅう」と言われる。
  • 4. 世の中が開けて生活が便利になること。西洋文明を積極的に模倣し、急速に西洋化・近代化した現象。
  • 5. 19世紀後半に日本で流行した言葉。文明開化を象徴するものを指す。
  • 6. ガスを導管に通して点火し闇を照らす装置。
  • 7. 現在の写真のこと。
  • 8. 熱気や水素などの軽い気体を利用して空中に浮かぶ気球で、娯楽や見世物としても登場した。
  • 9. 現在の蒸気機関車のこと。

By MOROHASHI Kumiko
Photo: Kimuraya Sohonten

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