コラム2 コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会の役割と意義

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コラム2

コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会の役割と意義


内閣府男女共同参画局は,令和2(2020)年9月に各方面の専門家で構成される「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」を開催し,新型コロナウイルス感染症の感染拡大が女性の雇用や生活等に与えている影響及び女性の視点からの政策課題を把握することとした。本研究会は,同年11月には,8項目からなる緊急提言を女性活躍担当大臣兼内閣府特命担当大臣(男女共同参画)に提出し,その内容は政府の経済対策に反映され,令和2(2020)年度第3次補正予算等の措置が行われた。その後,研究会は令和3(2021)年4月末までに計11回開催され,議事録及び資料は内閣府ホームページに掲載されている1

本研究会は,地域行政の担い手やNPOからの構成員,経済学者,社会学者など労働市場や家庭における問題等についての社会科学的な実証研究を続けてきた専門家,医療に関わる専門家から構成されている。研究会では,構成員による調査研究・分析,最新情報の提供に加え,大学教授やシンクタンク等の有識者,労使団体,支援団体やNGO等の実務担当者,省庁の政策担当者等からのヒアリングを踏まえ,「ウィズコロナ」,「ポストコロナ」両面から分野横断的な議論を行い,新型コロナの感染拡大が女性に及ぼす影響と課題をいち早く総合的に浮き彫りにすることを試みた。

本研究会座長の白波瀬佐和子・東京大学大学院教授は,女性視点に基づくコロナ対応の必要性や意義について次のように述べている。

「コロナ下において,もともと存在した諸問題が,社会的に不利な立場にある者により顕著な影響となって露呈しており,特に日本では社会の基本構造に内包されている頑強なジェンダー格差の負の効果が顕在化した。したがって,"gender-responsive/gender-sensitive"な政策対応(ジェンダーの違いを,政策を立案する過程から配慮し,政策自体の位置づけの中に組み込み,ジェンダーの違いに常に敏感な形で政策を構築していくこと)が求められている。」

本研究会の活動は,日を追うごとに注目を集めるようになり,また,研究会の構成員がパイプ役となり,コロナ対策の各方面に影響を与えることとなった。研究会の集大成は,「コロナ下の女性における影響と課題に関する研究会報告書〜誰一人取り残さないポストコロナの社会へ〜」にまとめられ,令和3(2021)年4月28日に女性活躍担当大臣兼内閣府特命担当大臣(男女共同参画)に提出された。本報告書は,研究会の議論を踏まえ,ポストコロナに向けて(1)ジェンダー統計・分析の重要性,(2)ジェンダー平等・男女共同参画への取組,(3)女性の参画,(4)制度・慣行の見直しを提言している。

1内閣府男女共同参画局「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」ホームページ(https://www.gender.go.jp/kaigi/kento/covid-19/index.html)


コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会の開催について

令和2年9月23日
内閣府男女共同参画局長決定
令和2年10月14日
一部改正

1 趣旨

新型コロナウイルス感染症の拡大により,外出自粛や休業等による生活不安・ストレスからのDVや性暴力の増加・深刻化が懸念されている。また,今般の感染症の拡大は,非正規雇用労働者,宿泊,飲食サービス業等への影響が大きいことから,女性の雇用に特に影響が強く表れており,経済的困難に陥るひとり親家庭の増加も危惧される。さらに,子育てや介護等の負担増加も懸念されている。

一方,これを契機に,オンライン活用が普及し,男女ともに新しい働き方の可能性が広がっており,在宅での働き方の普及は,男性の家事・育児等への参画を促す好機でもある。

このように性別による影響やニーズの違いを踏まえて政策課題を把握し,今後の政策立案につなげていくことが必要である。

このため,以下の事項を調査検討するため,「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」(以下「研究会」という。)を開催し,「第5次男女共同参画基本計画」や「女性活躍加速のための重点方針2021」の策定に向けた議論に反映させることとする。

1新型コロナウイルス感染症の拡大が女性の雇用や生活等に与えている影響 2女性の視点からの政策課題の把握

2 構成

(1)研究会は,別紙に掲げる者をもって構成する。なお,男女共同参画局長は,必要と認める場合,構成員を追加することができる。 (2)座長は,構成員の中から,男女共同参画局長が指名する。 (3)座長は,必要に応じ,構成員以外の者の出席を求めることができる。

3 庶務

研究会の庶務は,内閣府男女共同参画局総務課において処理する。

4 その他

前各項に定めるもののほか,研究会の運営に関する事項その他必要な事項は,座長が定める。


コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会構成員名簿

(五十音順,敬称略,にじゅうまるは座長)

大崎 麻子
特定非営利活動法人 Gender Action Platform 理事
関西学院大学総合政策学部客員教授
大竹 文雄
大阪大学大学院経済学研究科教授
新型コロナウイルス感染症対策分科会構成員
にじゅうまる白波瀬 佐和子
東京大学大学院人文社会系研究科教授
種部 恭子
医療法人社団藤聖会女性クリニック We!TOYAMA 代表
公益社団法人日本産婦人科医会常任理事
筒井 淳也
立命館大学産業社会学部教授
永濱 利廣
株式会社第一生命経済研究所首席エコノミスト
松田 明子
山形県しあわせ子育て応援部長
全国知事会 男女共同参画プロジェクトチームリーダー県
武藤 香織
東京大学医科学研究所公共政策研究分野教授
新型コロナウイルス感染症対策分科会構成員
山口 慎太郎
東京大学大学院経済学研究科教授
山田 久
株式会社日本総合研究所副理事長

コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会 開催経緯

第1回 令和2年9月30日(水)16:00〜18:00

〇今後の進め方について 〇意見交換

第2回 令和2年10月21日(水)14:00〜16:00

〇構成員からのプレゼンテーション ・永濱利廣構成員(女性雇用により厳しいコロナショック〜日本の労働市場を変える非接触化経済〜) ・武藤香織構成員(COVID-19対策における患者・市民との協働) ・大崎麻子構成員(国際協調における政策枠組み〜「女性政策」と「ジェンダー主流化」〜,10代20代女性における新型コロナ感染症拡大に伴う影響についてのアンケート調査報告書(特定非営利活動法人BONDプロジェクト)) 〇有識者からのヒアリング ・「シングルマザー調査プロジェクト」/特定非営利活動法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ 小森雅子氏,立教大学 湯澤直美教授(新型コロナウイルス 深刻化する母子世帯のくらし)

第3回 令和2年10月29日(木)16:00〜18:00

〇有識者からのヒアリング ・独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)/樋口美雄理事長,周燕飛主任研究員(新型コロナと女性の雇用危機) 〇構成員からのプレゼンテーション ・大竹文雄構成員(コロナ下の女性と柔軟な働き方) ・山口慎太郎構成員(休校・休園と女性の就業)

第4回 令和2年11月16日(月)16:00〜18:30

〇構成員からのプレゼンテーション ・山田久構成員(雇用の面から見たコロナ禍の女性への影響と課題) ・筒井淳也構成員(コロナ下における女性の生活:家庭環境の影響の大きさ) ・種部恭子構成員(女性に対する暴力・妊娠・貧困の連鎖にコロナが与えた影響) ・松田明子構成員(地域におけるコロナ下の女性への影響と課題,取組等について,山形県におけるひとり親家庭支援策の取組) ・白波瀬佐和子座長(「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」その背景と意義) 〇緊急提言(座長私案)について

にじゅうまる緊急提言 令和2年11月19日(木)

橋本聖子内閣府特命担当大臣(男女共同参画)に手交/白波瀬佐和子座長,永濱利廣構成員

第5回 令和2年12月24日(木)14:00〜16:00

〇緊急提言に係る政府の対応状況・関連施策について 〇有識者からのヒアリング ・一般社団法人日本経済団体連合会/大山みこ上席主幹(ダイバーシティ&インクルージョンによりポストコロナ時代を見据えた新たな成長へ) ・日本労働組合総連合会/井上久美枝局長(コロナ禍における連合の取組) 〇構成員からのプレゼンテーション ・筒井淳也構成員(令和2年度「男女共同参画の視点からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響等に関する調査」中間報告)

第6回 令和3年1月25日(月)13:00〜15:00

〇省庁からのヒアリング ・総務省,厚生労働省,経済産業省(テレワークについて) ・厚生労働省(自殺対策) 〇有識者からのヒアリング ・株式会社野村総合研究所/武田佳奈上級コンサルタント(コロナ禍で急増する女性の「実質的失業」と「支援からの孤立」,コロナによる働き方・暮らし方の変化と女性活躍)

第7回 令和3年2月15日(月)13:00〜15:00

〇有識者からのヒアリング ・関西国際大学/中尾繁樹教授(コロナ下における心の課題に関する報告) ・一般社団法人若草プロジェクト/大谷恭子代表理事,村木厚子代表呼びかけ人(若草プロジェクトとは?(少女・若い女性への支援の現状と課題)) ・W20-2019共同代表/上智大学・目黒依子名誉教授,上智大学・三浦まり教授(Covid-19対策の国際潮流と日本への示唆)

第8回 令和3年2月22日(月)16:00〜18:00

〇有識者からのヒアリング ・公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパン/長島美紀チームリーダー(コロナ禍における若年女性への影響) ・独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)/樋口美雄理事長,周燕飛主任研究員(新型コロナと女性雇用危機II-雇用持ち直しをめぐる新たな動き-) 〇研究会報告書取りまとめに向けた論点整理について

第9回 令和3年3月15日(月)16:00〜18:00

〇構成員からのプレゼンテーション ・筒井淳也構成員(令和2年度「男女共同参画の視点からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響等に関する調査」報告書(概要)) ・山口慎太郎構成員(コロナ下の子育て女性の就業状況) 〇報告書について

第10回 令和3年4月6日(火)16:00〜18:00

〇構成員からのプレゼンテーション ・筒井淳也構成員(令和2年度「男女共同参画の視点からの新型コロナウイルス感染症拡大の影響等に関する調査」報告書(概要)補足) ・大竹文雄構成員(男女間賃金格差の理由と対策) ・山田久構成員(わが国における男女賃金格差の背景とデフレ(サービス物価低迷)との関わりについて) ・報告書骨子(案)について

第11回 令和3年4月22日(木)10:00〜12:00

〇構成員からのプレゼンテーション ・山口慎太郎構成員(コロナ下の子育て女性の就業状況(改訂版)) ・武藤香織構成員(COVID-19の医学・公衆衛生の観点からみたジェンダー平等) ・種部恭子構成員(「COVID-19の流行下での「困難な問題を抱える居場所のない若年女性」の予期せぬ妊娠等に関する実態調査と支援方策の検討」の研究成果より) 〇報告書(案)について

にじゅうまる報告書手交 令和3年4月28日(水)

丸川珠代内閣府特命担当大臣(男女共同参画)に手交/白波瀬佐和子座長,大崎麻子構成員,永濱利廣構成員,武藤香織構成員,山田久構成員


緊急提言

2020年11月19日
コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会

新型コロナウイルスの新規感染者数は,秋以降,全国的に増加しており,一日の感染者数は過去最多を記録している。

新型コロナウイルス感染症の拡大は,特に女性への影響が深刻であり,「女性不況」の様相が確認される。女性就業者数が多いサービス産業等が受けた打撃は極めて大きく,厳しい状況にある。事実,2020年4月には非正規雇用労働者の女性を中心に就業者数は対前月で約70万人の減少(男性の約2倍)となり,女性の非労働力人口は増加(男性の2倍以上)した。DVや性暴力の増加・深刻化,予期せぬ妊娠の増加が懸念され,10月の女性の自殺者数は速報値で851人と,前年同月と比べ増加率は8割にも上る。シングルマザーからは,収入が減少した,生活が苦しいとの切実な声が上がっている。医療・介護・保育の従事者などのいわゆるエッセンシャルワーカーには女性が多く,処遇面や働く環境面が厳しい状況にある。感染症による差別も報告されている。緊急事態宣言下の休校・休園は生活面,就労面において特に女性に大きな負の影響をもたらした。テレワークについては,その普及と充実に向けて対応すべき課題は少なくない。女性の家事,育児等の負担増に留意するとともに,エッセンシャルワーカーをはじめテレワークの導入が困難な職業に従事する方々の状況をしっかり受け止める必要がある。

国連では,2020年4月9日,グテーレス事務総長がコロナ対策において女性・女の子を中核に据えるよう,声明を発した。

こうした状況を踏まえ,本研究会として,以下の事項を緊急に提言する。

今後,政府にあっては,自治体や民間企業等の協力を得ながら取組を進めていくことを期待する。

〇DV,性暴力,自殺等の相談体制と対策を早急に強化するとともに,感染拡大期においても可能な限り必要な機能を果たすこと 〇休校・休園の判断において,女性・子供への影響に最大限配慮すること 〇いわゆるエッセンシャルワーカーの処遇改善等を十分考慮すること 〇感染症に伴う差別的な扱いの解消に向けた取組を進めること 〇ひとり親家庭への支援を強化すること 〇テレワークについて,課題を踏まえた上で,普及,充実を進め,柔軟な働き方を進めていくこと 〇デジタル,福祉分野など成長分野等へのシフトに向けた人材育成,就労支援を進めていくこと 〇行政の業務統計を含む統計情報の積極的活用を促し,迅速な実態把握とその分析を進めること

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