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  3. 2013年11月号(45巻4号)

ヒッグス粒子,ノーベル賞スピード受賞のワケ

浅井 祥仁(物理学専攻 教授)

図1

祝福される歴代のCERN所長など(写真提供:CERN)

2013年10月8日(火)に本年のノーベル物理学賞が発表され,つい昨年に発見されたヒッグス粒子の存在を,半世紀前に予言したアングレール (François Baron Englert) とヒッグス (Peter Ware Higgs) の両博士に贈られることになった。「発見した実験側にも贈るべきだ」とノーベル委員会内でもめて,発表が1時間も遅れる異例な状況だったことが後日リークされたが,とにかく発見から最短で,予言者が受賞する運びとなった。このスピード受賞が,「ヒッグス粒子発見」に続くはずの素粒子研究の新しい波に対する,世界の期待を表している。

ノーベル賞は,新しい自然観や実りある新研究分野創成への「ブレークスルー」となった研究に対して与えられるものである。ヒッグス粒子の発見は, Brout (故人) — Englert-Higgs (BEH) 機構,すなわち自発的にヒッグス場の対称性が破れ,素粒子の質量起源になるという理論の,実験的な検証である。確かにこれは,南部陽一郎先生(2008年ノーベル物理学賞受賞)による自発的対称性の破れの概念を,素粒子の「標準理論」の完成につなげるブレークスルーを提供したが,これだけではスピード受賞の理由にはならず,実験側が評価されることもない。

今回の受賞には,ヒッグス粒子の発見がもたらす展望に強い期待が込められており,これは受賞理由の説明のかなりの部分を,ヒッグス粒子を発見した実験の成果に割いたことからうかがえる。ヒッグス粒子は,既知の「物質を形成する素粒子:スピン1/2」と「力を伝える素粒子:スピン1」とは全く異なる,「真空に関係した:スピン0」の全く新しいカテゴリーの素粒子である。このことはまた宇宙の誕生に深く関係しており,ヒッグス粒子発見は,宇宙論を実証的な研究にとして発展させる上でも,大きな意義をもつ。さらに「スピン0の素粒子」の存在は,標準理論では説明できない新しい素粒子現象が,すぐ近くのエネルギースケールのあることを強く示唆している。今回のスピード受賞には,ヒッグス粒子発見がもつ,この新しい素粒子現象へのブレークスルーへの期待感が込められているのである。

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