南米チリでminiTAO望遠鏡完成記念式典を開催
吉井 讓(天文学教育研究センター 教授)
会場となった建物は1925年の完成当初から貴族の社交場として使用されてきたもので,式典は彫刻や絵画の並ぶ大広間にて厳かに行われた。
南米チリ北部アタカマ砂漠,チャナントール山頂(標高5640 m)に標高世界一となる東京大学アタカマ1 m望遠鏡(miniTAO望遠鏡)が完成,観測を開始したことを記念し, 2010年7月7日,南米チリの首都サンチャゴにて記念式典が開催された。
miniTAO望遠鏡は,天文学教育研究センターを中心としたTAO(The University of Tokyo Atacama Observatory)研究グループが,口径6.5 mの大型赤外線望遠鏡に先駆けて, 2009年3月,チャナントール山頂に建設し観測を開始した口径1 mの赤外線望遠鏡である。
式典は,東京大学,チリ科学技術庁,チリ外務省エネルギー科学技術局,在チリ日本国大使館の4機関合同で開催され,日本・チリ両国から約140名が出席する盛大なものとなった。 本学からは松本洋一郎副学長,山田興一総長室顧問,相原博昭理学系副研究科長はじめ多数の教職員が出席したほか,文部科学省,チリ科学技術庁,チリ外務省,在チリ日本国大使館,日本企業などから多数の出席があった。 チリ共和国ピニェラ大統領からはTAO計画を激励する祝辞が寄せられた。
会場となったClub de la Unionは,大統領府であるモネダ宮殿から歩いて5分の距離にある歴史ある建物であり,その厳かな雰囲気の中,松本副学長の挨拶で式典は幕を開けた。 続いて, TAO計画代表である吉井が, miniTAO望遠鏡建設までの道のりと観測成果を紹介,将来の口径6.5 mの大型赤外線望遠鏡の構想について説明し,チリの人々の支援と友情に対して感謝を述べた。 その後, Jose Miguel Aguileraチリ科学技術庁長官,林渉在チリ日本国大使,磯田文雄文部科学省研究振興局長からの祝辞が続き,最後はGabriel Rodriguezチリ外務省エネルギー科学技術局長の挨拶で式典を締めくくった。
続くレセプションパーティは西岡喬三菱重工業相談役の乾杯の音頭で始まった。 チリ風にアレンジされた寿司とチリワインを片手に,望遠鏡立ち上げに至るまでの思い出話があちこちで聞かれた。 また式典に先立って開催された望遠鏡サイトツアーの参加者からは,過酷な環境下で観測する研究者の強い意志に対する驚きの声が聞かれた。
式典の前日には松本副学長の講演会がカトリカ大学で行われ,式典直前にはチリ郵政局によるTAO計画の記念切手の発行式典,翌日には東京大学共催のピアノコンサートがアンドレス・ベージョ大学で行われ,あたかも東大ウィークのようであった。 これらの行事はチリに東大の存在感を示す良い機会となった。
式典の多彩な参加者を見ると,本計画がTAO研究グループのみならず,理学系をはじめとする東大の教職員,日智政府関係者,日本企業や現地ワーカーなどひじょうに多くの人々の努力によって進められてきたことを実感する。 地球の裏側で困難に挑戦するTAOプロジェクトに,これからも変わらぬご理解・ご協力を賜りたい。
松本洋一郎
東大理事・副学長
吉井譲
東大理学系研究科教授・
TAO計画代表
Jose Miguel Aguilera
チリ科学技術庁長官
林渉
駐チリ日本国特命全権大使
磯田文雄
文部科学省研究振興局長
Gabriel Rodriguez
チリ外務省エネルギー
科学技術局長