チャレンジ支援! 3名の女性助教が着任
男女共同参画委員長 黒田 真也(生物化学専攻 教授)
東京大学大学院理学系研究科では,このたび,男女共同参画事業の一環として総長裁量枠で雇用する女性教員3名が着任した。着任順に,植物園の角川洋子(かくがわようこ)さん,地球惑星科学専攻の並木敦子(なみきあつこ)さん,ビッグバン宇宙国際研究センターの平賀純子(ひらがじゅんこ)さんである。今回は,これらの経緯と事業について簡単に報告したい。
本学では,科学技術振興調整費事業「東大モデル『キャリア確立の10年』支援プラン」(2007年度〜2010年3月)など男女共同参画の活動を積極的に行ってきた。今後もその活動を継続するため,2009年度に総長裁量枠として女性教員3名(5年間)が「東京大学男女共同参画加速」として公募され,理学系の企画「チャレンジ支援!理学系女性研究者養成改革加速」が,工学系研究科,農学系研究科の企画とともに採択された。総長裁量枠は,2009年から2011年まで3年にわたり1年に1名配分されるポストであったが,理学系はこれらの活動をさらに推進すべく総長裁量枠に加え理学系のポスト(2009年度2名,2010年度1名)も用意することにより,2009年度に3名のポストを準備し,公募を行った。応募者数が,工学系では10名,農学系では50名程度だったのに対し,理学系では合計91名にも達し,理学系における男女共同参画の意識の高さを示す結果となった。
91名の中から6専攻それぞれ1名の候補者を選出してもらい,面接の結果,3名を決定した。面接にあたっては各候補者がそれぞれ教育・研究について説明をしたが,すべての候補者のプレゼンの能力はきわめて高く,それぞれの分野を超えて本質をうまく伝える工夫がなされていたのがとても印象的であった。また,本人の面接だけでなく,各専攻からの支援体制を専攻長からも説明してもらい,その結果を総合して判定して, 3名を決定した。3名とも素晴らしい実力と能力を兼ね備えており,理学系としても自信をもって男女共同参画を進めていけると期待している。
理学系の教員の女性比率は,2009年4月では7.4%であったが,2010年4月1日時点では9.0%(特任を含むと10.8%)となっており,急激な伸びを示している。本学の中では,今のところ理学系だけが教員の女性比率の目標を達成している。米国の理系大学院,たとえばカリフォルニア工科大学の女性教員の比率は12%であるので,追いつく日も近いと期待される。理学系研究科での男女共同参画の活動は,本学の中でも一番古いもののひとつであり,これまでのさまざまな活動により,本部からきわめて高い評価を得ており,本学の男女共同参画をリードすることを強く期待されている。
角川洋子助教
専門は植物系統進化学です。おもにシダ植物を材料として集団遺伝学的解析や量的形質遺伝子座の解析を行なっています。種分化の過程で,いかにして新しい生育環境に進出するのかなどを研究課題として,適応進化の遺伝的背景を調べています。このことにより,陸上植物の多様性がどのように生み出されてきたのかを明らかにしていきたいと思います。
並木敦子助教
専門は固体地球ダイナミクスです。このたびは男女共同参画助教に採用していただきありがとうございます。男女関係なく若手が就職困難の中,女性ということで職につけたことに感謝すると同時に申し訳なく思います。5年という限られた時間ではありますが,自分の研究だけでなく,教育にも積極的に携わっていく所存です。よろしくお願いいたします。
平賀純子助教
専門は,X線天文学です。天文衛星による観測データを基に,超新星残骸で見られる極限物理,元素合成の痕跡や,宇宙線加速の起源の解明を目指します。また,検出器,とくにX線CCDの開発にも力を入れており,現在,次期X線天文衛星Astro-H開発に参加。恵まれた研究環境に感謝し,研究・教育と子育ての両方に邁進したいと思います。