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理学部発の「うまみ」が,未来技術遺産に

佐藤 健太郎(化学専攻グローバルCOE 広報担当特任助教)

図1

図:認定証と長谷川哲也化学専攻長

日本の食卓に欠かせない味覚「うまみ」の正体が,グルタミン酸ナトリウムであることはよく知られている。この事実は東京帝国大学理学部教授であった池田菊苗によって 1908年に発見された(理学部ニュース2008年7月号を参照)。当時,欧米では「うまみ」という味覚が認知されておらず,この発見は大きな驚きをもって迎えられたと伝えられる。

池田教授の開発したグルタミン酸ナトリウムの製法は工業化され,「味の素」として一般にも大きな人気を博した。うまみの発見は学問的に重要であったというだけでなく,日本の化学工業史においても大きな金字塔であるといえる。

池田教授の単離した記念すべき第一号のグルタミン酸ナトリウムは,瓶詰めにされて今も大事に保存されている。国立科学博物館は最近,この瓶を「未来技術遺産」に指定した。これは国民の生活や経済に大きな影響を与えた技術資料を保存・活用することを目的としており,各分野の草分けとなった製品22点が指定を受けている。

2009年10月6日(火),その認定式が国立科学博物館で執り行われた。本研究科からは長谷川哲也化学専攻長が出席し,認定状と記念の楯を授与された。ビデオ・テレビ・新幹線など暮らしを支える製品と並んで,百年前に見出された一化合物が認定を受けた意義は大きい。化学上の発見が大きく世界を変えた例として,長く人々の記憶に残ることを望みたい。

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