新見市より植物園にアテツマンサクが寄贈される
邑田 仁(植物園 教授)
植樹式の様子。
左から石垣新見市長,邑田園長。
理学系研究科附属植物園に岡山県新見市から「新見市の花」アテツマンサク(マンサク科)寄贈の申し入れがあり,2008年11月11日(火)に石垣正夫新見市長をはじめ6名が来園され,理学系研究科からは山本研究科長,平賀事務長,植物園長などが出席し,植樹式を行って園内のボダイジュ並木付近に定植した(写真)。
アテツマンサクは牧野富太郎が創刊した「植物研究雑誌」第1卷(1916年)で命名発表したもので,現在では日本に広く分布するマンサクの地域的な変種とされている。通常のマンサクやマルバマンサクにくらべて葉裏に毛が多くて白っぽいことが特徴で,花の蕚片は紫色ではなく黄色で,明るく華やかな感じがする。
アテツマンサクの名前の由来となっている「阿哲地域」は植物園園長も務めた前川文夫が注目した新見市周辺(旧阿哲郡)の石灰岩地が発達する比較的乾燥した地域で,シロヤマブキ(バラ科),ヤマトレンギョウ(モクセイ科),ナツアサドリ(グミ科),アオイカズラ(ツユクサ科),といったアジア大陸と共通の,あるいは密接に関連した特有の種類があることが知られている。アテツマンサクは大陸との関係が議論される種類ではないが,「アテツ」という冠詞のついた唯一の植物名であろう。牧野富太郎と前川文夫という植物園で活躍した二人の植物学者がかかわる植物であり,大切に育てていきたい。