附属臨海実験所設立120周年記念シンポジウム
赤坂 甲治(東京大学大学院理学系研究科附属臨海実験所 教授)
所内見学での2005年に再建された木造和船「みさき」の試乗。正面向きの方,右より岡村定矩理事・副学長,関藤守技術職員(船頭),山本正幸研究科長。
明治20年(1887年)4月1日,帝国大学臨海実験所として発足した理学系研究科附属臨海実験所(通称三崎臨海実験所)は,この4月に120周年を迎えた。大日本帝国憲法制定の3年前,富国強兵を目指していた明治時代に,海産動物学という基礎学問を,世界に先駆けて日本で始めた東京大学の先人たちの先見の明に驚かされる。
120周年を節目として,2007年4月7日(土)に今後の三崎臨海実験所のあり方を議論するシンポジウムが開催された。文部科学省から来賓を迎え,本学からは岡村副学長,山本研究科長らが出席し,関連各学会の会長を交えて活発な議論が展開された。三崎臨海実験所が面する相模湾は,世界的にも稀な豊かな生物相を誇り,多様な海洋生物を活かした研究業績は高く評価されてきた。また,本学の他部局や他大学,国外からも利用があり,年間延べ1万人を超える研究者・学生が活動している。
今回のシンポジウムの議論の中心は,その規模にあった。利用人数に比べスタッフが少なく職務の負担が重いこと,国内では質・規模とも他の追随を許さないが,欧米に比べると圧倒的に規模が小さいことである。欧米では,海洋生物から医学・工学にも応用されるノーベル賞級の研究が多数生まれていることが理解され,国を挙げて海洋生命科学を支援している。海洋生物学の最前線基地である臨海実験所の将来像を,東京大学のみならず,日本学術会議,関連学会においても議論していく必要があるとの認識で一致し,閉会した。