量子ICT協創センター
量子ICT協創センターについて
量子ICT協創センターは、量子セキュリティ融合領域の開拓や衛星量子通信分野の研究開発を進めること、及び量子コンピューティング、量子通信・暗号、量子計測・センシングを統合した量子技術プラットフォームの構築を先導することを目的に2021年4月に設立されました。
NICT内の関連する研究グループと協力しながら、他の量子技術イノベーション拠点、国内外の大学、企業、公的機関と積極的に連携し、基礎研究から技術実証、オープンイノベーション、人材育成等に至るまで一気通貫で取り組んでまいります。
量子技術イノベーション拠点として
国の統合イノベーション戦略推進会議は、2020年1月に量子技術イノベ—ション戦略を策定しました。 この戦略では、国内外から優れた研究者・技術者を結集するとともに、企業等から積極的な投資を呼び込み、大学・企業間の有機的な連携・協力体制を構築する量子技術イノベーション拠点を国内に形成することとされています。
NICTも「量子セキュリティ拠点」として国内8機関の一つに選定されました。量子ICT協創センターは、量子セキュリティ拠点の中核組織としての役割を果たしてまいります。
研究開発概要
NICTは、量子通信や量子暗号に関して20年以上にわたり、基礎から応用まで網羅した総合的な研究開発に取り組んできました。その間、100km圏の東京QKDネットワーク(QKD:量子鍵配送)や地上7.8kmの光空間テストベッド、衛星量子通信のための施設などを構築し、実用化に向けたフィールド実証を推進してきました。
量子ICT協創センターでは、このような実績に基づき、量子通信や量子暗号を情報セキュリティ技術やネットワーク技術と掛け算することによってもたらされる新たな融合領域「量子セキュリティ分野」の創出に取り組みます。
量子セキュアクラウド
このような融合によってもたらされる新たな技術パラダイムの一例として、量子セキュアクラウド技術が挙げられます。
これは、量子暗号と秘密分散を組み合わせることで、将来にわたり機密漏洩せず、災害等があってもデータが消失しない安全なデータバックアップ保管を実現するものです。さらに、耐量子計算機暗号や秘匿計算を組み込むことにより、なりすましや改ざんの防止、及び秘匿化したままでの安全なデータの2次利用が可能になります。量子セキュアクラウド技術は、医療、新素材、製造、金融分野で蓄積された個人情報や企業情報など秘匿性の高いデータの保管、交換、利活用を可能にするものと期待されます。
ネットワークの展開
また、量子セキュリティ分野で生み出された技術をドローンや衛星に搭載し、空間光通信や衛星光通信に展開することで、宇宙、成層圏、高高度から地上網まで網羅する大容量かつ安全な移動通信ネットワーク(量子セキュア移動通信ネットワーク)を実現することができます。
現在の移動通信ネットワークで使われる電波の帯域はすでにひっ迫しており、急増するデータトラフィックを支えてゆくには十分ではありません。これに対して、空間光通信や衛星光通信で使われるレーザ光は、電波よりはるかに広帯域で指向性が高いため、電力の利用効率を上げることができ、干渉も大幅に低減できるため免許申請が不要といった利点があります。また、宇宙空間では、光の減衰自体はほとんどないため、地上の光ファイバ回線では不可能だった地球規模での量子暗号も可能になります。
最終的には、これらの技術を量子コンピューティングや量子計測・センシングとも融合することにより量子ネットワーク(量子インターネット)技術を実現し、さらにそれらを従来のネットワークインフラ上に統合した量子技術プラットフォームを構築してゆくことを目指して取り組んでまいります。
量子ネットワークホワイトペーパー
量子通信に関する国内外の動向、量子ネットワークが実現する社会像・ユースケース、その実現に向けてNICTが取り組む研究開発・ロードマップ、推進戦略などをまとめたホワイトペーパーを公表しています。
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