開発したサービスロボット協働型見廻りシステムでは、異業種の自律移動サービスロボットが運用される現場において、各々のロボットが担当する持ち場で"本来業務"を行いつつ、人からの見廻り依頼やほかのロボットからの協力依頼に応じて見廻りを行うことを想定しています。最初に見廻り依頼を受け付けたロボットが、自らよりも見廻り場所に近いほかのロボットの存在を確認できた場合には、代わりにそのロボットに見廻りを行ってもらうことで効率的な見廻りが可能となります。また、撮影データを有するロボットにとって、データを届ける先が本来業務の移動範囲外であった場合、異なるロボットにデータの運搬を依頼することでデータ配信エリアの拡張も可能になります。
図7に、本実証実験により確認した見廻り場所の撮影の依頼を協調動作によって実現する場合の動作フローを示します。ここでは、システムは見廻り依頼を最終的に引き受けて撮影を担うロボット(見廻り係ロボット)と、見廻り依頼の情報を中継発信することに加え、撮影データを引き取って見廻り依頼者の元まで届けるロボット(運搬係ロボット)で構成されています。
今回開発したサービスロボット協働型見廻りシステムにおけるロボットは、920MHz帯IoT無線を用いた各種情報の発信や交換を行う機能を有するYeST+を搭載しており、数百m範囲内に存在するほかのロボットの存在検出や協力依頼、互いの位置情報を知らせ合うなど、ロボット同士で協調動作することが可能となっています。
図7では、まず、見廻り依頼者はIoTメッセージ端末を用いて920MHz帯IoT無線フレームを発信し、周辺のロボットに見廻りを依頼しますが、この際に、見廻り場所の位置情報(Position A)と見廻り映像データの届け先の情報(Position B)が無線フレームの中に挿入されます(図71参照)。
見廻り依頼を受け付けたロボットは、同じく920MHz帯IoT 無線を用いて、見廻り場所である"Position A"により近い位置に見廻り可能なロボットがいないか検索を行い、発見された場合には、そのロボットに対して見廻り場所の撮影を依頼します(図72参照)。今回の実証システムでは、この検索・撮影依頼は、"問合せ・応答"という1往復のメッセージ交換でまとめて実現しています。問合せ無線フレームには、見廻り場所の撮影を依頼することを示す情報が搭載されており、周辺に複数存在し得るロボットに同報(ブロードキャスト)されます。これを受信して見廻り場所の撮影を行うことを了承したロボットは、依頼元のロボットに対してユニキャストで了承応答するとともに、見廻り場所に移動して撮影を開始します。
図7では、さらに、運搬係ロボットは見廻り係ロボットからの応答を受信後、見廻り場所"Position A"に移動し見廻り係から撮影データを受け取ります。その後、届け先である"Position B"まで撮影データを運搬し、TransferJet Xにより再生装置に無線伝送します(図73参照)。
なお、今回の実証システムは、3台以上のロボットの協調動作にも対応しており、例えば、撮影データを異なるロボット間で協力してバケツリレー的に転送を行うことで、より広域かつ柔軟な範囲の撮影データの収集・配信が可能になります。また、図71〜3の見廻りの依頼から撮影データが届くまでの動作については、同時に複数の異なる見廻り場所に対して実践することも可能です。