回
年度
受賞者
授賞理由
8
2021
室田一雄
(東京都立大学)
室田一雄氏は,数値計算法(数値積分,線形計算),マトロイド理論のシステム解析への応用,群論的分岐理論の構造工学への応用,計算幾何学,経済地理学・空間経済学など数理工学の様々な分野に渡って,優れた研究成果を挙げると共に,数々の著書を通じて,数理工学の教育・普及に多大な貢献をしてきた.特に離散凸解析という分野を創始し,最近の25年間に渡って主導的な立場で研究を進めている.
室田一雄氏は,2014年に第15回業績賞を受賞しており,数理工学の様々な分野で顕著な業績を挙げてきたことが高く評価されている.2014年から2年間は副会長を務めるなど,日本オペレーションズ・リサーチ学会の発展にも寄与している.また,東京大学,京都大学,筑波大学,東京都立大学において長年教育に携わり,企業・教育機関等に多くの優秀な人材を輩出し,オペレーションズ・リサーチ分野の人材育成に大きく貢献している.
7
2019
山下浩
((株)
NTTデータ数理システム)
山下浩氏は,オペレーションズ・リサーチにおける理論と実践の両立を身をもって示した稀有の存在である.1982年4月に(株)数理システム(現(株)NTTデータ数理システム)を設立し,数理科学とコンピュータサイエンスを活用してさまざまな現実問題を解決する日本有数の技術力をもった企業に育て上げた.その一方で,研究者として非線形最適化と数理モデリングの研究を行い,その研究成果を国際学術誌に論文として発表するとともに,数理計画法ソフトウェアNUOPT(現Numerical
Optimizer)を通じて社会に還元してきた.
これらの業績により,山下氏は,2004年に日本オペレーションズ・リサーチ学会業績賞を受賞し,同学会のフェローにも列せられている.また,数理システム(2013年より商号変更によりNTTデータ数理システム)は,
1999年および2016年に同学会実施賞を受賞している.さらに,他学会からもその業績を認められ,日本計算機 統計学会貢献賞を2回受賞している.
6
2017
田口 東
(中央大学教授)
田口東氏は,30数年間にわたり,現実社会の課題にORの手法を適用する,OR本来の実用研究を実践してきた.現実のデータに基づく精緻なモデル化を行い,ORの高度な手法を駆使して解決策を導き社会へフィードバックするという,氏の一貫した研究スタイルにより,田園都市線の遅れの原因の究明,東日本大震災地域におけるバス時刻表の提案,東京オリンピック観戦客輸送の混雑分析など,意義のある事例研究を数多く発表し,ORの有用性を世の中に知らしめた.
また,「都市のOR」研究会では中心的な役割を果たし,都市や地域の現象に関する諸問題にOR手法を適用する新しい研究分野を確立し,多くの研究者が集う活気ある分野に成長させた功績は大きい.
本学会においても,庶務理事,理事OR誌編集委員長,副会長を歴任し,学会の発展に大いに貢献した.
5
2015
福島雅夫
(南山大学教授・京都大学名誉教授)
福島雅夫氏は,非線形計画法を中心として,変分不等式問題や相補性問題などの均衡問題の研究に取り組み,200編を超える学術論文を発表し,日本を代表する研究者として,世界的に高い評価を得ている.また,京都大学,奈良先端科学技術大学院大学において,多くの優れた研究者を育成するとともに,中国,香港,米国などの著名研究者とともにPacific
Optimization Research Activity Groupを立ち上げ,その会長を務め,Pacific
Journal of Optimization誌を発行し,その編集長を務めるなど,アジア太平洋地域における数理最適化分野の発展に中心的な役割を果たしてきた.また,15誌にも及ぶ国際学術雑誌の編集に携わるなど,その功績は極めて大きい.
本学会では,数理計画専門部会(RAMP)主査,論文誌編集委員を務めるなど,学会の発展に多大な貢献をされている.
4
2013
藤重 悟
(京都大学数理解析研究所特任教授)
藤重悟氏は,数理計画法における劣モジュラ関数の分野で多くの卓越した研究業績をあげてきた.最大の業績は,劣モジュラ関数の理論の体系化であり,多面体理論を通じて劣モジュラ関数を研究する枠組みを確立したことである.数理計画法における離散最適化問題の多くは,何らかの意味で劣モジュラ関数に関連しており,藤重氏は数理計画法における最も基礎的な部分の進歩に貢献したと言える.
藤重氏が著した論文は90篇を越え,世界的に権威のある学術誌に掲載されている.著書も多く,それらを通じて離散最適化やマトロイドの理論に目を開かれた若い人々は多い.今日の離散最適化の分野において,世界に通用する研究者が日本から多数輩出されているのは,藤重氏の貢献によるところが大きい.
本学会においては,平成20年度から2年間,編集担当理事・論文誌編集委員長を勤め,本学会論文誌の充実に尽力した.
3
2011
宮沢政清
(東京理科大学教授)
宮沢氏は,待ち行列・応用確率論の分野における理論面を中心とした研究で多くの卓越した行政を挙げられ,海外の研究者との共同研究の成果も多く,世界をリードするトップクラスの研究者として知られている.宮沢氏が著した英文論文は80篇を数え,世界的に権威のある学術誌に掲載されている.
主要な研究テーマは,1980年代前半から90年代前半までは,点過程を用いた待ち行列のモデル化とその応用,1990年代後半からは,待ち行列ネットワークに関する研究,2000年代に入ってからは,非積形式ネットワークモデルにおける定常分布の解析で,他の研究者の多くの研究を刺激している.
本学会「待ち行列」研究部会で30年間にわたり研究をリードしてこられ,内外の学術雑誌の編集者としても活躍されている.
2
2009
小島政和
(東京工業大学教授)
小島氏は,およそ40年間にわたって,数理計画法の分野で,世界をリードする研究活動を続けてこられた.研究テーマは,初期の相補性問題に始まり,不動点問題に対するホモトピー法,内点法,半正定値計画法,大域的最適化,多項式計画問題など多岐にわたるが,特筆すべき業績として次の3つを挙げることができる.
- 不動点における狭義安定性の概念の非線形計画法への導入
- 線形計画問題における双対内点法の設計と線形相補性問題への拡張
- 半正定値計画問題に対する主・双対内点法の設計とソフトウェアSDPAの開発
以上の研究業績に加えて,卓越した研究指導力によって,多くの優れた研究者を育てた功績も特筆すべきものがある.
1
2007
茨木俊秀
(関西学院大学教授・京都大学名誉教授)
茨木氏は40年間にわたって,組合せ最適化,離散数学に関する研究を中心に,ORとその周辺分野で400編を超える学術論文を発表され,日本を代表する研究者として世界的に高い評価を獲得されている.
また,京都大学,豊橋技術科学大学,関西学院大学において多くの後継者を育てられるとともに,20誌に及ぶ国際学術雑誌の編集に携わり,イリノイ大学,ウォータールー大学,サイモン・フレーザー大学,ラトガース大学などの客員教授も務めている.
本学会においても,各種委員,理事,評議員,代議員,副会長などを歴任され,その発展に多大な貢献をされている.