西之島のマグマ水蒸気噴火(1973年9月14日小坂撮影)
西之島火山は東京の南方約1,000kmに位置する無人島であり、1973-74年噴火が唯一の噴火記録である。以下の記述は海野・中野(2007)に一部加筆修正したものである。1973-74年噴火写真など、2003年7月の中野と海野による現地調査以外の写真はすべて故小坂丈予東工大名誉教授(2011年11月23日ご逝去)の撮影・提供によるものである。小坂先生からは地質図幅およびデータベースでのオリジナル写真使用をご許可いただいており、その大部分は小坂(1991)で使用されたものである。
西之島は1973-74年に噴火した火山島であるが、これは巨大な円錐形の成層火山の山頂部に過ぎない。火山体の大部分は海面下であり、西之島火山の形成開始時期は不明である。火山体の山頂部には直径約1kmの火口地形が存在し、旧島はその火口縁の一部であり、新島はその火口内に形成された火口丘である。
旧島及び西之島北沖の岩礁群は西之島溶岩から構成される。1973-74年に形成された新島部分及びその周辺の岩礁群は1973-74年噴出物から構成される。いずれも陸上噴出の火山岩である。旧島・新島を連結する沖積層は1973年以降に発達した海浜砂礫層(海浜堆積物)である。旧島の大部分が海食崖で囲まれているため、1973年以前からの海浜砂礫層は陸域ではわずか旧島西側の中央部などに局所的に分布する程度である。
旧島・新島を構成する岩石はいずれも斜方輝石単斜輝石安山岩である。かんらん石やピジョン輝石を含むという報告もあるが(伊津,1976;伊津ほか,1980;海上保安庁水路部,1993,p.9),2003年調査の採取試料中では確認されていない。なお、西之島近海の海底からは安山岩のほかに玄武岩が採取されている(伊津ほか,1980;Aoki and Tokai University Research Group for Marine Volcano, 1983; Bloomer et al., 1989)。
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