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  2. 弧―背弧海盆系の下に存在する微量元素に富むマントルの起源および北西太平洋上部マントルの不均質性の起源

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新種の火山「プチスポット」はリサイクルの先輩!?

2006年7月28日、ある一つのニュースが新聞各紙の紙面を賑わせました。それは、「今まで地球上で知られていなかった全く新しいタイプの火山が、三陸沖800kmの太平洋の深海底に見つかった」というものでした。この新種の火山活動は「プチスポット」と名付けられ、地球がどの様な構造でどの様な物質でできているのか?地球を構成する物質がどの様に循環しリサイクルされているのか?を理解するための鍵として注目を集めています。

プチスポットってどんな火山活動?

今までのプレートテクトニクスに関する理論では、地球上で火山ができる場所は次の3カ所だと考えられてきました(図1)。

  • (1)プレート同士が離れて新たなプレートが作られるところ
    (中央海嶺:東太平洋中央海膨、大西洋中央海嶺など)
  • (2)一方のプレートがもう一方のプレートの下に沈み込むところ
    (島弧または陸弧:日本列島、アメリカ大陸西岸など)
  • (3)プレート内の地球深部から熱い岩石の塊(マントルプルーム)が上昇してくるところ
    (ホットスポット:ハワイ諸島、ガラパゴス諸島など)

しかし、プチスポットが発見された三陸沖(図2)は、これら3つのどの場所にもあてはまりません。そこは、太平洋プレートの北西部にあたる、約1億2千−6千万年前に作られた古くて冷たいプレートです。今までは、この様な古い海底の上に活発な新しい火山活動など「あるわけが無い」と考えられ、注目されていませんでした。 プレートは、海溝から沈み込む前に大きくたわみます(図3)。火山が発見された三陸の800km沖は、ちょうどプレートがたわみ始める場所に相当します。プチスポット火山は、プレートがたわんだときにできた亀裂に沿って、プレートの下のマグマが染み出してできたと考えられています。プチスポット火山の特徴は、山の最も長い部分(長径)が2km以下で高さが数百mというとても小さい山だということです(図2)。もともと「プチスポット」という名前は、火山が海底上の小さな(プチ)点(スポット)のように分布していた、その分布の様子から名付けられました。ただし今は、「プレートの屈曲に伴った火山活動」あるいは「マントルプルームに関連しないプレート内火山活動」という現象のことを「プチスポット」と呼び、その結果作られる火山のことを「プチスポット火山」と呼んでいます。

プチスポットは地球内部を覗くための新しい窓

地球内部の物質を調べるにはどのような方法があるのでしょうか? その答えは、地球表面の火山が握っています。火山を作るマグマは、地下のある深さの岩石が融けることによって作られます。したがって、マグマを分析することによって地球深部の物質に関する情報を得ることができるのです。 中央海嶺で噴出するマグマは、地球の浅い部分の上部マントルが溶けて作られます(図4)。一方、ホットスポットで噴出するマグマは、地球の深い部分から上昇してくるマントルプルームがプレート直下で溶けて作られます(図4)。したがって、中央海嶺の溶岩が上部マントルを、ホットスポット火山が下部マントルの組成を反映していると考えられます。では、プチスポットはどうでしょうか? プチスポット火山をつくるマグマは、地下90km以深で作られたと考えられています(図3)。そこはちょうどプレートの直下の上部マントルですので、プチスポットは「上部マントルを覗くための新しい窓」ということになります。

プチスポット火山は昔のプレートのリサイクル!

中央海嶺で作られたプレートは、海溝で地球内部へ沈み込んでいます(図1、4)。プレートは、地球が誕生した頃から作られ続けているので、地球深部には、何億年前という遠い昔に作られて沈み込んでしまったプレートが、たくさん蓄積されています。また、大陸を作っているプレートも、大陸が分裂したり成長したりする時に一部(主に深いところ)が剥がれ落ちることがあります。それらのプレート物質は、マントルプルームと一緒に上昇し、ホットスポット火山活動の元となります(図4)。このようにホットスポット火山は、昔のプレートをリサイクルして作られているのです。しかし、中央海嶺の溶岩からは、プレートがリサイクルされている証拠はほとんど見つからず、太平洋の上部マントルには、昔のプレートは存在していないと考える研究者がほとんどでした。 プチスポット火山から得られた溶岩の化学組成を詳しく調べた結果、実はプチスポット火山活動のマグマも、プレートをリサイクルして作られたものであることがわかりました(図4)。すなわち、プチスポット火山のある太平洋の下の上部マントルにも昔のプレートの断片は確かに存在していたのです。 この驚くべき結果から新たに浮かび上がった問題は、どんなプレート物質が、いつどの様に太平洋の下に運ばれてきたのか?ということです。これは、地球全体の循環メカニズムにも関連する大変重要な問題です。現在、より詳しくプチスポットの溶岩を解析することによって、この問題を解明しようとしています。

図1

図2

図3

図4

より詳しく知りたい人に

  • 1.「海洋プレートと島弧の深部構造-IODP超深度掘削へ向けて-I」月刊地球, 2007年9月号。海洋出版
  • 1−1.「北西太平洋で発見された新種の火山-プチスポット火山-」平野直人。p. 540-547.
  • 1−2.「プチスポット産アルカリ玄武岩の同位体組成が示す北西太平洋上部マントルの不均質性」町田嗣樹、平野直人、木村純一。p. 554-560.
  • 1−3.「プチスポット総合調査」馬場聖至、阿部なつ江、平野直人、富士原敏也、市來雅啓、町田嗣樹、高橋亜夕、山本順司、山野誠、濱元 栄起、杉岡裕子、志藤あずさ。 p. 548-553.
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