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  2. 深海魚のイオン調節機能に関する分子生物学的研究

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ホソヌタウナギから人へと進化した浸透圧調節ホルモン

海水で生きるために必要な浸透圧調節

海の水が塩からいのは、食塩として使用する塩化ナトリウムをはじめとして、マグネシウムやカルシウムなどの多くの塩類が溶けているためです。私たち人間や多くの脊椎(せきつい)動物の体液は、約0.9%の塩類を含んでいますが、海水はその3倍以上(約3%)を含みます。濃い食塩水の中に野菜を入れるとしなびてしまうことは知っていますか? 塩類の多い環境にさらされると、浸透圧*の関係で、薄い体液を持つ生物はからだの中から水分が奪われてしまいます。ですから、海で生活する生物たちは、濃い塩分の海水のなかで体内の水を奪われないように、様々な戦略をとりながら生きています。 (*浸透圧とは、膜で2つに仕切った容器のそれぞれに濃さの異なる溶液を入れた場合、濃いほうから薄い方へ溶液の成分が移動する時に、膜にかかる圧力のことです。)

浸透圧を調整するホルモン

魚類には、硬骨魚類(骨の大部分が、硬骨と呼ばれる硬い骨)と軟骨魚類(骨がすべて軟骨。サメ、エイなど)がいます。ほとんどの硬骨魚類の体液は、他の脊椎動物と同じく海水の1/3ほどです。ではなぜ体液の3倍もの塩類を含む海水にかれらは生きていられるのでしょうか。彼らは飲んだ海水の成分を体内で海水より濃く濃縮し、浸透圧によって余分な成分を鰓や腎臓から海へ排出することで、体液を1/3に保っています(図1)。 このように浸透圧を調節することは、魚が海で生きていくのに欠くことのできない機能です。浸透圧の調整には、体内で作られる浸透圧調整ホルモンが大きく関係しています。浸透圧調整ホルモンには、アンギオテンシンやコルチゾルと呼ばれるホルモンなどがあります。

図1

ホソヌタウナギは海水と同じ濃度の体液をもつ!

実は、魚には硬骨魚類や軟骨魚類のほかに無顎類(むがくるい)とよばれる魚(下あごのない魚。ホソヌタウナギ、ヤツメウナギなど)がいます。無顎類は、もっとも古い脊椎動物だといわれています。ホソヌタウナギ(図2)は、通常深い海にすみ、他の動物の死体を食べて生活しています。硬骨魚類と違い、ホソヌタウナギの体液は海水と同じ濃度です。ホソヌタウナギは、硬骨魚類よりずっと昔、地球上に誕生しました。その頃の生物にはまだ浸透圧調整ホルモンを作る機能がなく、ホソヌタウナギは体液を海水の1/3にすることができないのです。しかし分子生物学の進歩が、興味深い事実を発見してくれました。最近になって、ホソヌタウナギにも浸透圧調節ホルモンらしい遺伝子がいくつもあることがわかったのです。ホソヌタウナギの遺伝子も、体液を1/3にする準備をしていたのですね。ホソヌタウナギが持っていた浸透圧調節ホルモンらしき遺伝子の中に、アドレノメデュリンというホルモンがありました。アドレノメデュリンは、私たち哺乳動物も持つ重要なホルモンで、血管や気管支の拡張、利尿など多くの働きをすることから、現在医学的にも注目されています。硬骨魚類の中にも、ホソヌタウナギのものとは少し形のちがったアドレノメデュリンを持つものが見つかっています。それぞれの遺伝子を比較した結果、ホソヌタウナギのアドレノメデュリンは、硬骨魚類のアドレノメデュリンの祖先であることがわかりました(図3)このように、環境に適応するためのホルモンであるアドレノメデュリンが、魚類の中に、あるいは私たち哺乳動物へどのようにひろがってきたかを研究することによって、私たち生物がそれぞれの地球環境にどのように適応してきたかという進化の道筋も理解することができそうです。

図2

図3

より詳しく知りたい人に

  • 1.「浸透圧的適応」井上広滋。「海洋生物の機能‐生命は海にどう適応しているか」竹井祥郎編。東海大学出版会
  • 2.「海は不思議の玉手箱」竹井祥郎。「16歳からの東大冒険講座{1}記号と文化/生命」東京大学教養学部編。培風館
  • 3.「カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)ファミリーの分子進化」御輿真穂、竹井祥郎。生体の科学57、436-438、2006
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