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Columns & Reportsコラム・レポート

2021年03月01日

プラスチック汚染抑制〜プラスチック製品の供給側ができることと限界 2

供給者側に求めたい「削減(リデュース)」という視点と私たちに求められる生活の文化の活かし方

20210220B_Fig1_DrAsari.jpg プラスチックごみ問題について,廃棄物問題に詳しい浅利美鈴・京都大学大学院地球環境学堂准教授(写真)にオンラインでインタビューした。内容は次のとおり。

-プラスチックごみ減量における原則は何でしょうか。
「廃棄物に関する大原則としては,リデュース(削減),リユース(再使用),リサイクル(再生利用)があります。これにプラスチックごみについてはリニューアブル(再生可能な天然資源等の利用)を入れる場合があります」


-世界経済フォーラム(WEF)の『新プラスチック経済 促進方法』では,供給者側の改革として,リユースとリサイクルに的を絞っているように思えます。
「供給者側は,プラスチックごみ減量において,リユース,リサイクルには触れますが,リデュースにあまり触れません。その点は供給者側の課題だと感じます。欧州などがサーキュラー・エコノミー(循環型経済)を目指していますが,プラスチックの供給者側である産業界が,大量生産-大量消費-大量廃棄というシステムを断ち切るのは簡単ではないようです。たとえば米国の工業会ではプラスチックの代替(リニューアブル等)は環境に良くないとするレポートを出しています。供給者側は,今の価値基準で判断しています。そうした考え方を変えるのはなかなか難しいと思います」

-こうした供給者側の考えを変えるにはどうしたらいいのでしょうか。
「まずは消費者が変わらないといけないでしょう。そして大量生産-大量消費-大量廃棄という仕組みを変えていこうとしていくことが大事です。たとえば,こうした価値観を一般の人に伝えていき,たとえ値段が高くても環境に負荷を与えない物を買うような賢い消費者を育てていかないといけないと思います。一般の人が,安いというだけで安易に商品を買わない,多少高額でも長く使える物を買う,といった消費行動を取るようになれば,供給者側にも影響を与えるのではないでしょうか。物を家に充たすことが豊かだという発想こそ,今では古いかもしれませんが,その仕組みからも卒業したいものです」

-プラスチックなどの廃棄物の処理システムは国によって差異がありますか。
「日米欧でもかなり違います。端的に言うと,日本では,廃棄物は出す側が分別してから工場に運ばれ,リサイクルされます。欧米では,主に混在した廃棄物を工場で機械的に分別し,リサイクルされます。一方,新興国では,人の手で分別している国が多いですが,中国やタイなどのアジア諸国では,廃プラスチックの受け入れを制限するなどして,国内循環を目指す動きがあります」

-日本ではプラスチックを大量に焼却しています。
「日本は家庭ごみを数千基ある自治体の焼却施設で燃やしています。世界の廃棄物焼却施設の8割が日本にあると言われた時代もありました。プラスチックも例外ではありません。プラスチックごみの焼却は,エネルギー利用を伴う場合,サーマルリサイクルと言われていますが,これがリサイクルかどうかは議論のあるところです。家庭ごみは生ごみと汚れた紙・プラスチックなどが重さでいうと大半を占めます。焼却施設では水分の多い生ごみやほかのごみを大量に燃やしているのです。「もったいない」という考えからも,資源の観点からも,生ごみを減量し,プラスチックごみなども削減して,その結果残ったものだけを燃やしていくようにすることが必要です。生分解性プラスチックなど堆肥化やバイオマスとして処理できるプラスチックが増えれば,ごみとして出される量も減ると思います」

-焼却されるごみはゼロにはできませんか。
「マスクや防護服といった医療用品など,衛生面を考えると焼却以外の選択肢がないものもあります。しかし,焼却すれば温室効果ガスが排出されます。現行の焼却施設のエネルギー回収効率は2〜3割です。プラスチックごみを減らした上で,焼却しなければならないものだけを燃やし,熱回収効率を上げていく必要があります。循環型経済を目指し,プラスチックの焼却は衛生面などから必要な場合に限り行うべきです。将来的には焼却はメインであってはいけないと思います」

-日本が廃棄物問題で貢献できることがありますか。
「廃棄物に関してきめ細かな技術力で世界に貢献できることを期待しています。また,私は「脱プラスチック」として昔ながらの物,技術,知恵にも注目しています。たとえば,京都の木や紙,金属を活用した物づくりには,京都人の生活の知恵が詰まっています。また,それらの世界にも技術や素材の革新が起こっています。将来の姿を考えたときに,それらがそのように進化し,私たちの暮らしに豊かさを与えているか,想像するのも楽しいものです」

(文責:三島勇)

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