第12回JHFハンググライダー・パラグライダーフォトコンテスト入賞作品

JAPAN HANG&PARAGLIDING FEDERATION
フライヤーサポートデスク・連盟からのお知らせ

第12回JHFハンググライダー・パラグライダーフォトコンテストにたくさんのご応募ありがとうございました。審査員による審査の結果、優秀賞作品として3点、入選作には6点が選出されました。今回は残念ながら最優秀賞作品は選定されませんでした。優秀賞作品は受賞者によるコメントとともに、JHFレポート251号に掲載しますのでご覧ください。

優秀賞 入選 審査員総評

優秀賞 「光の中へ」 田幡祐基 (山梨県上野原市西東京パラグライダースクール)


優秀賞 「裏後光の指す方へ」 殿塚裕紀 (熊本県阿蘇エリア)


優秀賞 「Flying into Light」 Rick Neves (Oludeniz, Turkey)


優秀賞 「光の中へ」 田幡祐基

[審査員 嘉納]
印象的な作品です。文字通り日の丸構図の背景、辺の対角線上に配した被写体。シャッターを押したタイミングがとても良いと思います。

画面を構成する要素は、空・太陽・雲・グライダー・人、というシンプルさ、しかも色がほぼ青という潔さで目を惹きました。個人的には、上部のモヤモヤした薄い雲と中央の流れる雲の感じが好きです。撮影は2021年9月13日となっていますが、秋の空らしい季節感もあります。

単体の写真としての魅力はやや弱いのですが、広告の写真としては非常に使いやすいと思われます。また、写真を見る者にとっても緊張を強いず「ああきれいだな」と素直に思えます。

[審査員 山本]
太陽に薄い雲がかかることで現れるハロという自然現象の中を、パラグライダーが飛行している瞬間を捉えた作品です。

ハロ自体は比較的よく見られる現象ではあるものの、発生には特定の気象条件が必要で、いつ現れるか予測が難しいため、狙って撮影するのは容易ではありません。おそらく撮影者も、あらかじめこの現象を意図していたわけではなく、偶然現れたハロと飛行中のパラグライダーをうまく組み合わせて撮影されたのだと思います。幾何学的に完璧な円環として現れたハロと、その内部を横切るように配置されたパラグライダーの対比がとても印象的です。

太陽の下に写り込んだ小さな円は、おそらくレンズフレアによるものと思われますが、これもまた視覚的なアクセントとなり、作品に一層の奥行きを与えています。偶然に現れた自然現象と、鳥のように空を舞う人間の姿が美しく融合した一枚になっております。
優秀賞 「裏後光の指す方へ」 殿塚裕紀

[審査員 嘉納]
裏後光とは「反薄明光線」の別名で、日の出前または日没時に太陽のある側とは反対側の空の地平(または水平)の一点から広がるように光が伸びる現象です。 (実際の仕組みは、例えば西の空の地平(または水平)下に太陽があって太陽の前には厚い雲がかかっている時、隙間から漏れた光が東側の空の塵や水蒸気に反射して一点から光が広がっているように見える。)

この条件が揃っている時を狙って撮影に挑んだのでしょうか。アウトドアスポーツの中でも天候・気象に大きく(時には命さえも簡単に)脅かされるのがスカイスポーツ・マリンスポーツ。そのためフライヤーの方々は詳しい方が多いように思います。

こういった自然現象までも予測して想像通り・または思いがけない現象を(現実はほとんどがこちらだと思いますが)自分の目と肌で空気を感じながら体験できる素晴らしいスポーツなのだと、この写真を見てあらためて感じました。

写真的にはグライダーが写っていなければただのキレイな風景写真ですが、グライダーとフライヤーが写っていることで生き生きとした絵になっています。そして、このコンテストの狙いである「空を飛んでみたい」と思わせることに成功している作品だと思います。

[審査員 山本]
おそらく太陽が沈んだ後だと思うのですが、焼けた空に伸びる光芒に向かっていくパラグライダーを捉えた作品となります。

太陽が沈む前だとこのような光芒は見えず逆光で景色はもっと暗くなるか、もしくは空が白飛びしてしまう写真になったと思いますが、太陽はすでに地平線の下に隠れ残照だけが残っているため景色とパラグライダーもシルエットにはならずディテールが残っています。

裏後光という難しい環境を巧みに捉え、被写体の配置もバランスがよく空間の広がりとパラグライダーの飛翔感が見事に表現されています。絵画のような美しさがあり、そこを自由に飛ぶパラグライダーが写っていることで詩的な力が生まれています。一見して朝焼けなのか夕焼けなのかが判別しづらい点も、観る者の想像力をかき立てる効果を生んでいます。

太陽が地平線のすぐ下にある、わずかな時間だけ現れる繊細な光とパラグライダーを組み合わせた、芸術性の高い作品となっています。
優秀賞 「Flying into Light」 Rick Neves

[審査員 嘉納]
ロケーションがまず良い。トルコのオルデニズ(Oludeniz)はエーゲ海と地中海に面した温暖なビーチリゾート。フライヤーの方ならよくご存知だと思いますが、ここは急峰ババダク山が生み出す上昇気流がパラグライダーに最適で、聖地のような場所なのだそうです。

Rickさんは過去にも最優秀賞を受賞されていて作風に独特の雰囲気があるので、今回も複数の作品を見て(これはRickさんだな)とわかりました。

撮影のテクニックや画像の美しさ、構図も申し分ありませんし、何よりフライヤー自身が思いっ切り楽しんでいる様子が活写されているので見ている側も清々しい気分になります。カメラの特性だと思いますが、広範囲にピントがきているのもクリアな写真に見える要素ですね。次はどんな写真を見せてくれるのかな?と、とても楽しみです。

[審査員 山本]
本作は360度カメラを用いて撮影された作品です。撮影者は以前にも同様の機材を使った作品で入賞されており、今回はさらに完成度が高まっている印象を受けます。

両手をトグルから離して飛行していることから、安定した風の中で余裕を持って操縦している様子がうかがえます。太陽に向かって飛び、ちょうど体で太陽を隠すタイミングを切り取ることで、まるで体から光を放っているようにも見えます。飛行そのものの気持ちよさや、素晴らしい空の環境で飛んでいることの喜びが、画面から自然に伝わってきます。

構図としてはシンプルな日の丸構図ですが、被写体の位置と姿勢の美しさ、シンメトリーの効果が相まって、洗練された作品に仕上がっています。360度カメラは、すべての方向を記録できる反面、どの角度・画角で「切り取るか」が作品の質を大きく左右します。この作品では、その選択におけるセンスの高さが際立っており、機材の特性を深く理解し、それを最大限に活かした見事な一枚です。

入選 「湖の上を飛ぶ」 加藤かおり (イタリア Sale Marasino)

入選 「スリリングな飛行」 ??木志津夫 (福島県いわき市薄磯)

入選 「順番待ち」 ???P吉康 (山形県南陽スカイパーク(十分一山))

入選 「Parallel Flight:Mirage and Real」 田中 秀 (沖縄県明石パラワールド)

入選 「クラウドサウナ」 富樫 岳 (山形県置賜盆地外縁)

入選 「はい!いまだワン!」 平坂一幸 (茨城県ソラトピア)

[審査員 嘉納愛夏 Photographer]
[画像:kano] 今回は最優秀賞が出ず、少し残念な結果になりました。優秀賞の三点は偶然にもタイトルが「光の中へ」「裏後光の指す方へ」「Flying into Light」といずれも光へ向かうという同様のもので、ちょっと驚きました。

毎回思うのですが、入選も含めてタイトルの付け方が安直です。せっかくの写真の可能性の広がりを狭めていると言えます。報道写真のタイトルは状況を表すものであるというのが原則ですが、芸術性を求められる写真ではその限りではありません。写真というのはその一枚を見れば全てがわかる、というのが理想かも知れませんが、実際は「タイトル」「キャプション」が揃って完成するものです。なぜなら、万能の知識と経験を持つ者はこの地球上に誰も存在しないから。

こういったフォトコンテストの写真は芸術性が高く評価されるのは言うまでもないことで、芸術性というのは一律ではなく法則もないに等しいため、タイトルに具体性がなくても構わないのです。抽象的でもいい、ということなのですが、空にいる者にしかわからないフィーリングや現象を込めるのも良いと思います。少なくとも、空にいない私はその感覚を知りたいです。

作品の内容についてですが、今回は全体的に「青い」写真が多かったです。空は晴れていれば青いものだし、それを映す海や川も青いので半ば仕方のないことなのでしょう。それにしても色が単調すぎました。入選作品も全部青いのです(笑)。

入選作の中で構図が面白いと思ったのは「スリリングな飛行」。虹色のグライダーが本物の虹のように灯台にかかるように斜めに配置されている点(ただしタイトルはかなり微妙)。

ほぼ真上からグライダーを大きく写した「湖の上を飛ぶ」。空を高く飛ぶ鳥から見たような目線が楽しい(これもタイトルは微妙)。

「Parallel Flight:Mirage and Real」。飛行機に乗っている時にたまに見かける現象ですが、自分が雲に投影されるというのは非日常な上、景色も石垣島のラグーンときたら気分爆上がりですよね。こちらはタイトルも工夫されていて良いと思います。

また、潜在的に「アニマル枠」が設けられていることをご存知でしょうか。「カワイイは正義」と言われるようになって久しいですが、そういうことなのです(しかし動物なら何でもいいわけでもない)。まあ、あくまで潜在的に、なのですが。意外性のある写真が見たいです。

人というのは未知のものを見たいという欲望があります。見たことのない風景に惹かれるのです。それは自分が立ったままの通常の目線で撮った写真がほぼ退屈になってしまう理由でもあります。通常の目線であっても一歩二歩寄る、ズームで被写体の表情まで撮る、逆にワイドで周りの状況を広く入れる、など工夫があってほしいと思います。
[審査員 山本直洋 Aerial Photographer]
今年もたくさんの応募ありがとうございました。最終的に入賞候補として三作品が選ばれました。いずれも完成度の高い作品でしたが、「これが最優秀賞にふさわしい!」と明確に断言できるほどのインパクトを持った一作がなく、今回は最優秀賞の選出を見送り、最終候補の三作品すべてを優秀賞とする判断となりました。

これは「優れた作品がなかった」というネガティブな理由ではなく、「優劣をつけがたいほど優秀な作品が集まった」というポジティブな結果と捉えています。一方で、作品の完成度は高いものの、タイトルの付け方に工夫が足りなかったり、パラグライダーやハンググライダーの普及を目指すJHFの主旨にそぐわない被写体を含んでいたため、評価が難しいと判断される作品も見受けられました。JHFハンググライダー・パラグライダーフォトコンテストに限らず写真のコンテスト全般に言えることですが、主催者の意図から逸れた内容や、見る人によって危険あるいは不快と受け取られる可能性のある作品は、写真としての完成度が高くても選出されにくくなります。

特に、タイトルの付け方で選ばれないというのは非常にもったいないと感じました。応募に際しては、そのフォトコンテストの主催者の立場から見てどう評価されるか、という視点も持つことが、入選への近道となります。もちろん写真を撮る時にそんなことを考えていると気持ちに制限がかかってしまい面白くないので考える必要は全くなく、とにかく楽しく撮るのが一番重要ですが、応募作品を選ぶ時に少しだけそういう点にも意識を向けて応募いただけると入選・入賞の可能性がぐっと上がると思います。また来年もみなさまの作品を拝見できることを楽しみにしております!
[JHF会長 竹村治雄]
[画像:yasudakaicho]フォトコンテストの審査にJHF会長として初めて参加しました。応募作品の中から,山本さん、嘉納さんの両審査員が候補としてピックアップした作品に、JHFの視点、すなわちハンググライダーやパラグライダーの楽しさが、伝わってくる写真を見つけていく方法で審査をすすめることができました。

ハング・パラはアウトドアスポーツのため、フライト中の自然現象を構図としてうまく組み合わせた写真の評価が高くなりました。もう少しスポーツ自体をアピールできる作品があればなということで、結果的に最優秀作品賞は該当なしとなりました。

撮影技術も進歩し、360度カメラから切り出した写真などの応募も多くなりつつあります。来年は、ハンググライダーやパラグライダーが大きく写っていて尚且つ、スポーツの楽しみが伝わるような作品を、より多くの方に応募いただけることを期待します。



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