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戦前の東西応用心理学会

戦前の学会開催の変遷

戦前,応用心理学的会合は,東京と関西それぞれでおこなわれていた。また,両応用心理学会は1934年からは合同で,1年おきに大会を開催していた。

[関西]大正から昭和初期のころの会の動向(1927年〜1933年)

大正10年〜15年頃,倉敷労働科学研究所,大阪府立産業能率研究所,愛知県立児童相談所,神戸市立児童相談所,京都府少年教育相談所などが設立され,いずれにおいても,臨床的テスト研究がさかんであった。このため,京都府立少年教育相談所の千葉信は,それらテスト研究についての連絡と一堂に会しての討議の必要を感じ,藤沢乙夫同研究所長,さらには京都帝大の岩井勝二郎に提案,賛意を得て,次のような関係各相談所,研究所の人々に呼びかけをおこなった。
大阪府立産業能率研究所所長 伊藤熊太郎
愛知県立児童研究所所長 丸山良二
神戸市立児童相談所 田中政太
その他京都中央職業紹介所,京都七条職業紹介所,
大阪中央職業紹介所,神戸中央職業紹介所の各所長,関係者。
以上の人々の賛意を得,それを岩井に報告したところ,岩井は,倉敷労働科学研究所の桐原葆見(きりはら しげみ)所長に連絡し,その結果,1926年暮れ,外遊中の野上俊夫京都帝國大學教授の帰国をまって,第1回の会合をもとうということになった。


岩井 勝二郎
桐原 葆見

第1回の研究会

1927年4月10日頃おこなわれた。出席者は野上俊夫(京大教授),岩井勝二郎(京大助教授),桐原葆見(倉敷労研所長),藤沢乙夫(京都府少年教育相談所所長),千葉信(同主任研究員),伊藤熊太郎(大阪府立産業能率研究所所長),松行翁介(同研究員),丸山良二(愛知県立児童研究所所長),田中政太(神戸市立児童相談所所長),緒方(神戸中央職業紹介所所長),谷口直彦(同少年部長テスト担当),福井宗次郎(大阪中央職業紹介所・同少年部長テスト担当),ほか京都の2ヵ所の職業紹介所所長とテスト係4名。合計16名。当時テストというものがまだ完成していなかったため,テスト(知能テストを含む)についての研究発表と討議であった。
会の終わり近く,出席者から非常に良い研究会であったので定期的にこれをおこなおうという提案があり,また(おろらくは桐原の提案で),関西応用心理学会として発足させるという動議が出され,満場一致の賛同を得,この日の会合を第1回とするということになった。

[東京]昭和初期の学会設立と会の開催(1931年〜1933年)

在京の応用心理学関係者の間に,相互の連絡協調懇親のために学会設立の議が起こり,1931年6月14日,第1回應用心理學會の会合が東京帝國大學航空研究所航空心理部を当番としておこなわれた。同会は応用心理学者及び実際家間の懇親研究調査上の連絡を図ることを目的としており,第1回の会合では,「思想調査法」及び「児童個性調査法」の2つを主題とした(「應用心理」第1巻9月號65頁,1931年)。
「應用心理学論文集」第8集(1957)所収の「渡辺徹教授と日本応用心理学会」には,「応用心理学会」は心理学を一層社会・人生に応用して役立つものにしなければならないという立場から,渡辺徹,田中寛一,淡路圓治郎が中心となって,大いに奔走され,新たに学会を創立したと述べられている。

両学会の合同大会

東西合併の応用心理学会は,1934年4月6日午前9時,京都帝國大學法学部第九教室において開催され,野上俊夫の開会の辞に続いて研究発表がおこなわれた。7日午後4時全ての発表を終わり,病気で欠席の松本亦太郎(まつもと またたろう)にかわり城戸幡太郎(きど まんたろう)が閉会の辞を述べて散会。


松本 亦太郎
城戸 幡太郎

心理学会大会の開催

日本心理学会,(東京)応用心理学会,(関西)応用心理学会,その他心理学関係の諸学会を統合する新しい発展的学会の設立が要望され,これに対して上記の学会がそれぞれ「解消」の決議をした。そして,1941年7月20日,既存の種々の心理学系の学会を統合する「心理学会」が成立した。
6月下旬に会則その他が決定し,7月1日付で各学会の全会員に,新学会設立及び創立総会についての案内状が発送された。総会は7月20日に開催される予定だったが,中旬になって時局柄輸送輻輳のため不急の旅行,全国的各種会合は一切これを取り止めるよう通達があったので,これを延期することに決定,出席予定の会員に対してはその旨通知した。
しかし,新学会の設立は早急におこなうべきであるとの考えから「7月20日を以て新学会は成立致したるものなることを,......宣言」し,心理学会として各学会の統合が完成したものとされた。そして,7月から延期された総会は,10月26日,「創立大会」として開催された。心理学会による大会は,1942年と翌年,2回開催された。


[関西] [東京]
開催 代表あるいは
大会(準備)委員長
開催 当番幹事
1 1927(昭和2)年4月10日頃
京都大学楽友会館
野上 俊夫
2 1927(昭和2)年10月12日
大阪府立産業能率研究所
伊藤 熊太郎
3 1928(昭和3)年初夏
神戸中央職業紹介所
緒方 庸雄
4 1928(昭和3)年秋
名古屋高等商業学校
古賀 行義
5 1929(昭和4)年5月26日
倉敷労働科学研究所
桐原 葆見
6 1929(昭和4)年秋
京都大学楽友会館
野上 俊夫
7 1930(昭和5)年4月28日
大阪中山文化研究所
堀口 潤一郎
8 1930(昭和5)年10月25日
神戸商業大学兼松記念館
小川教授
9 1931(昭和6)年6月7日
倉敷労働科学研究所
桐原 葆見 1 1931(昭和6)年6月14日
東京帝国大学航空心理部
航空心理研究所(駒場)
松本 亦太郎
10 1931(昭和6)年10月17日
名古屋高等商業学校
宇都宮 仙太郎 2 1931(昭和6)年10月25日
日本大学
渡辺 徹
11 1932(昭和7)年5月28日
広島文理科大学
久保 良英 3 1932(昭和7)年6月5日 or 7日
東京文理科大学
田中 寛一
12 1932(昭和7)年10月29日
京都市児童院
田寺 篤雄 4 1932(昭和7)年11月13日
東京帝国大学(本郷)
桑田 芳蔵
13 1933(昭和8)年6月20日
大阪府立産業能率研究所
伊藤 熊太郎 5 1933(昭和8)年6月4日
體育研究所
松井 三雄
14 1933(昭和8)年10月21日
兵庫県立児童相談所
田中 政太 6 1933(昭和8)年10月29日
法政大学
城戸 幡太郎
15 (注記)第15回としてカウント 野上 俊夫 1934(昭和9)年4月6日〜7日
第1回の応用心理学会合同大会
京都帝国大学
16 1934(昭和9)年10月6日
倉敷労働科学研究所
桐原 葆見 7 1934(昭和9)年9月16日
立教大学
岡部 弥太郎
17 1935(昭和10)年5月12日
名古屋高等商業学校
宇都宮 仙太郎 8 1935(昭和10)年6月9日
早稲田大学
赤松 保羅
18 1935(昭和10)年10月16日
大阪府立産業能率研究所
伊藤 熊太郎 9 1935(昭和10)年10月27日
慶應大学(日吉)
横山 松三郎
19 (注記)第19回としてカウント 久保 良英 1936(昭和11)年4月2日〜3日
応用心理学会第2回合同大会
広島文理科大学
(日本応用心理学会第2回大会)
20 1936(昭和11)年10月24日
関西学院大学
今田 恵 10 1936(昭和11)年10月11日
日本女子大学校
21 1937(昭和12)年5月15日
同志社大学
本宮 弥兵衛 11 1937(昭和12)年5月16日
東京女子高等師範学校
付属幼稚園
倉橋 惣三
22 1937(昭和12)年10月16日
名古屋高等商業学校
12 1937(昭和12)年11月7日
日本労働科学研究所
(会場は府立10高女)
桐原 葆見
(注記)この回に限り,カウントしない 1938(昭和13)年4月2日〜4日
日本応用心理学会第3回大会
東京帝国大学心理学研究室と
東京帝国大学航空研究所航空心理部
23 1938(昭和13)年11月27日
大阪府立産業能率研究所
13 1938(昭和13)年11月13日
佐藤新興生活館
第13囘應用心理學會總會報告
高良 富子
24 1939(昭和14)年6月10日
関西学院大学
今田 恵 14 1939(昭和14)年6月11日
東京科学博物館
水野 常吉
25 1939(昭和14)年10月
兵庫県立児童研究所
15 1939(昭和14)年11月12日
東京文理科大学
田中 寛一
26 (注記)第26回としてカウント 野上 俊夫 1940(昭和15)年4月1日〜3日
日本応用心理学会第4回大会
京都帝国大学
27 1940(昭和15)年秋 16 1940(昭和15)年11月17日
佐藤新興生活館
兼子 宙
28 1941(昭和16)年春 17 1941(昭和16)年6月8日
司法省構内法曹会館
増田 幸一
(注記)心理学会関西地方会 こ こ で 中 断
29 1941(昭和16)年秋
神戸職業安定所
心理学会 1941年7月20日 〜
30 1942(昭和17)年6月14日
兵庫県立児童研究所
31 1942(昭和17)年11月
奈良学芸大学
32 1943(昭和18)年7月4日
大津女子師範学校
33 1943(昭和18)年秋
同志社大学
本宮 弥兵衛
34 1944(昭和19)年春
35 1944(昭和19)年秋
36 1945(昭和20)年春
京都中央児童相談所
37 1945(昭和20)年12月9日
京都北白川「愛国寮」

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