月刊 経団連2025年6月号
特集 トランプ2.0と国際秩序の行方
巻頭言
国土強靭化の一層の推進に向けて
2025年1月に埼玉県八潮市で道路陥没が発生し、インフラ老朽化対策が社会課題として注目を集めている。大きなインフラ事故のたびに警鐘が鳴らされてきたが、包括的な対策には至っておらず、一方で、高度成長期に整備された道路橋やトンネル、上下水道などが今後急速に老朽化することが懸念されている。加えて、激甚化する自然災害に対応する防災インフラの整備も喫緊の課題となっている。これらは政府の次期社会資本整備重点計画の論点となる見込みであるが、地域住民の安全・安心を守るためにも、官民一体となって迅速に取り組まなければならない。
特集
トランプ2.0と国際秩序の行方
米国の影響力低下・中国の台頭・米中の戦略的競争の激化、ロシアによるウクライナ侵略をはじめとする国際秩序への挑戦行為、グローバルサウスの台頭などにより国際秩序が大きく揺らぐ中、米国のトランプ政権が矢継ぎ早に打ち出している政策が世界に多大な影響を与えている。
座談会:トランプ2.0と国際秩序の行方
- 東原 敏昭 (経団連副会長(当時)、ヨーロッパ地域委員長/日立製作所会長)
- 澤田 純 (経団連副会長、アメリカ委員長/日本電信電話会長)
- 佐橋 亮 (東京大学東洋文化研究所教授/経団連総合政策研究所客員研究委員)
- 秋田 浩之 (日本経済新聞社本社コメンテーター)
- ■しかく 現在の国際情勢ならびに国際秩序をどう見るか
- 大きな連続性の中で必然的に誕生した第2次トランプ政権
- 揺らぐ米国への信頼
- 世界秩序の変わり目を好機と捉える
- 民族主義的な価値観の衝突に潜む格差拡大や移民問題
- トランプ政権の動きを前向きに活かすには
- 米国依存の形を変え、持続可能な制度やルールで国際秩序を作り直す
- ■しかく 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けた日本の役割
- 短期の視点と中長期の視点
- トランプ政権の戦略を先読みする
─ キーワードは連携 - グローバル化を諦めない
- 離米主義に陥るのは危険
- グローバリズムを捉え直す必要性
- 世界秩序の「気候変動」を起こす中国
- ■しかく 経団連ならびに企業の果たすべき役割
- グローバル企業は分散経営、国家とも協業
- 世界の変化を見極められる人材を社内に
- "頼られる日本"を目指して
- 欧米中心の考え方から脱却し世界中にネットワークを持つ国へ
世界秩序の裏書人であった米国が既存秩序を壊す時
齋藤 ジン(オブザバトリー・グループ マネージング・ディレクター&共同設立者)
第2次トランプ政権の関税政策の政治的側面と日本の対米外交上の戦略的インプリケーション
森 聡(慶應義塾大学法学部教授)
- 経済的に不合理な政策を理解するポイント
- トランプ関税の三つの目的
- 日本の対米外交にとって最も重要な視点
高関税では得られぬ製造業と労働者階級の復権
今村 卓(丸紅執行役員・丸紅経済研究所社長/経団連外交委員会企画部会長)
- 2025年後半には景気後退の可能性
- 製造業復権は重要だが、解決策は関税ではない
トランプ2.0と中国
川島 真(東京大学大学院総合文化研究科教授/経団連総合政策研究所研究主幹)
- 中国から見たプラス/マイナス
- 関税問題
─ 中国こそが「普遍」だ - 安全保障と米国の安全保障網
- 話語権(言論の主導権)とグローバルサウス
- 日本のなすべきこと
トランプ2.0へのEUの対応
―対米自立と多角化
伊藤 さゆり(ニッセイ基礎研究所経済研究部常務理事/
経団連総合政策研究所特任研究主幹)
- 視界不良の対米交渉
- 報復への抑制的な姿勢
- 多角化への傾斜
ロシア・ウクライナ戦争停戦の見通し
小泉 悠(東京大学先端科学技術研究センター准教授、DEEP DIVE理事)
- 「停戦」の中身
- トランプ政権の「停戦」戦略
- ロシアとウクライナの継戦能力
トランプ2.0の衝撃に対するインドの実利外交
伊藤 融(防衛大学校人文社会科学群国際関係学科・総合安全保障研究科教授)
- インドはトランプ2.0をどう受け止めているか
- 他国に先駆けるインドの協定交渉
- 実利外交のカギは戦略的自律性の向上
トランプ関税と国際経済秩序
阿部 克則(学習院大学法学部教授)
- WTO協定に違反するトランプ関税
- 各国の対抗措置とWTO協定・国際法
- 国際経済秩序の再構築に向けて
一般記事
【提言】
日・トルコEPAの速やかな締結を求める
https://www.keidanren.or.jp/policy/2025/016.html
満岡 次郎(経団連審議員会副議長、日本トルコ経済委員長/IHI会長)
漆間 啓(経団連審議員会副議長、日本トルコ経済委員長/三菱電機社長)
- 日本にとってのトルコの重要性
- トルコにとっての日本の重要性
- EPA締結によって期待される効果
【報告】
日本と台湾のさらなる関係強化に向けて
―第52回東亜経済人会議を開催
https://www.keidanren.or.jp/policy/2025/020.html
飯島 彰己(経団連東亜経済人会議日本委員長/三井物産顧問)
- 日本と台湾を取り巻く情勢
- 東亜経済人会議の概要
- 日台産業協力の推進
- (1) 半導体サプライチェーンの強靭化
- (2) グリーンエネルギーの活用
- (3) 人的交流の活性化に向けた取り組み
- (4) ウェルビーイングの実現に向けた連携
新会員紹介
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社長人見 伸也