月刊 経団連2025年2月号
特集 国民生活と経済成長を支えるエネルギー政策の確立
巻頭言
官民連携のもと、成長志向の財政健全化を
「おめでとう! 日本もいよいよ欧米に近づいてきたね」
2024年秋、中東で開かれた国際会議に出た際、旧知の欧州系金融機関トップから皮肉まじりにかけられた言葉だ。その前日、日本の衆議院議員総選挙で与党が大きく議席を減らした様子をみて、極右政党が勢力を伸ばすフランス、連立政権の瓦解が危ぶまれていたドイツ、政治的分断が深まる米国など、欧米の混沌とした政治情勢と重なったらしい。
特集
国民生活と経済成長を支えるエネルギー政策の確立
気候変動問題が厳しさを増す中、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを世界的に加速することが求められている。同時に、国際情勢の不安定化を背景に、エネルギー安全保障・安定供給の確保と現実的なトランジションの重要性が着目されつつある。DX・GXの進展を背景に、今後のわが国の電力需要の見通しが増加に転じる中、国内投資を維持・拡大していくためには、脱炭素電源の導入拡大に向けた道筋の明確化が喫緊の課題である。
こうしたもとで、政府はGX2040ビジョン、第7次エネルギー基本計画、次期NDC(温室効果ガスの排出削減目標)・地球温暖化対策計画を年度内に策定する。
座談会:国民生活と経済成長を支えるエネルギー政策の確立
- 橋本 英二 (経団連副会長/日本製鉄会長)
- 澤田 純 (経団連副会長/日本電信電話会長)
- 泉澤 清次 (経団連副会長/三菱重工業社長)
- 寺澤 達也 (日本エネルギー経済研究所理事長)
- ■しかく エネルギーをめぐる情勢変化と課題
- 国際情勢の不安定化と対処すべき課題
- カーボンニュートラルに向けた産業政策の動向
- DXに伴う電力需要の増加
- GXによる電力需要増に伴う課題
- ■しかく 原子力の持続的活用
- エネルギー多消費型産業にとっての原子力の必要性
- デジタル産業から見た原子力への期待
- 原子力を活用するための事業環境整備
- 次世代革新炉の開発・設置に向けた課題
- 原子力が直面する諸課題
- ■しかく 多様なエネルギー源のベストミックスを追求する
- 再エネの主力電源化に向けた課題
- デジタル産業のエネルギー課題の解決
- 化石燃料の安定調達と火力発電所の活用
- 産業部門でのGXへの取り組みと必要な政策
- ■しかく 今後のエネルギー政策への期待
【提言】
エネルギー基本計画の見直しに向けた提言
―国民生活・経済成長を支えるエネルギー政策の確立を求める
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/071.html
内田 高史(経団連審議員会副議長、資源・エネルギー対策委員長/東京ガス会長)
- 現状認識と基本的な考え方
- 脱炭素電源の確保と火力の意義
- 次世代電力ネットワークの確立
- 次の10年に向けた電力市場のデザイン
- 燃料の安定的確保と熱源のトランジション
- エネルギーシステムを支えるファイナンスの確保
- 3Eに資するエネルギーミックス・NDCの設定
次期エネルギー基本計画(案)の要点
村瀬 佳史(資源エネルギー庁長官)
- わが国を取り巻くエネルギー情勢
- バランスのとれたエネルギー供給が重要
- 需要サイドの取り組みを支援
- 国際連携、国際協調により世界全体の脱炭素化を推進
2040年エネルギーミックスとその経済影響の分析
秋元 圭吾(地球環境産業技術研究機構(RITE)システム研究グループグループリーダー)
- 深刻さを増す地球温暖化
- 電力需要量のシナリオ分析が不可欠
- 六つのシナリオによるモデル分析
ITER計画と核融合エネルギー実現への道のり
ピエトロ・バラバスキ(ITER機構長)
- 持続可能な夢のエネルギー実現に向けて
- 核融合研究プロジェクトITERの推進
- 立ちはだかる課題への挑戦
- 参加企業の貢献と日本への期待
2050年カーボンニュートラル実現のための再エネの大量導入と長期安定稼働に向けて
―第7次エネルギー基本計画策定に向けたREASPの提言
池内 敬(再生可能エネルギー長期安定電源推進協会(REASP)代表理事)
- 再エネを増やすために
- 再エネを減らさないために
- 再エネの市場統合と高付加価値化のために
脱炭素社会の実現と電力の安定供給の両立に貢献
―JERAゼロエミッション2050
奥田 久栄(JERA社長)
- 国内最大の発電事業者として、脱炭素社会の実現をリード
- ゼロエミッション燃料への転換を推進
- 電源別の価値・特性を考慮して最適化を図るべき
- エネルギーミックスをめぐる国民的議論の深化に期待
カーボンニュートラルに向けたエネルギー投資へのファイナンス
工藤 禎子(三井住友銀行副頭取)
- エネルギー業界を取り巻く動向
- さらなるファイナンスの拡大に向けた論点
- (1) コーポレートローン
- (2) プロジェクトファイナンス
- トランジションに向けた課題と当行の取り組み方針
S+3Eの追求に向けた電力システムの合理的な設備形成とその運用
平岩 芳朗(電力中央研究所理事長)
- 大量の再生可能エネルギーを電力システムに受け入れるために
- 系統安定化機能の価値やコストを適切に評価すべき
- 送配電設備の形成と運用において考慮すべき課題
- 脱炭素化に向けて社会システム変革の全体像や負担増への理解醸成を
高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定に向けて
畠山 陽二郎(資源エネルギー庁次長兼首席最終処分政策統括調整官)
- 原子力の活用とバックエンド対策の加速化
- 高レベル放射性廃棄物とは
- 最終処分地の選定に向けて
- 地域の声に耳を傾けながら全国で議論を深めていただけるように
一般記事
【提言】
宇宙活動法の見直しに関する提言
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/089.html
漆間 啓(経団連審議員会副議長、宇宙開発利用推進委員長/三菱電機社長)
- 宇宙活動法の見直しの背景
- 新たな宇宙ビジネスの創出に向けた対応
- 宇宙産業の国際競争力のさらなる強化に向けた施策の展開
- 事故に対する補償の拡充と公共の安全確保
- 国際競争力強化と宇宙空間のサステナビリティ確保への配慮
- 国を挙げた宇宙産業の発展に向けた取り組み
【報告】
生物多様性条約第16回締約国会議へのミッション派遣を振り返って
西澤 敬二(経団連審議員会副議長、自然保護協議会会長/損害保険ジャパン顧問)
- CBD・COP16に先立ってスタンス・ペーパーを公表
- CBD・COP16における国際協議の概要
- ミッションの主な活動と成果
- 今後の課題と活動の充実に向けて
【報告】
「金利のある世界」と企業行動のあり方
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/084.html
柄澤 康喜(経団連経済財政委員長/三井住友海上火災保険常任顧問)
鈴木 伸弥(経団連経済財政委員長/明治安田生命保険特別顧問)
- 企業の現状認識
- 「金利のある世界」の特徴
- 「金利のある世界」の絵姿
- 企業が取り組むこと
- 個人や政府への期待
【報告】
コートジボワール官民会合参加、モロッコにミッションを派遣
―現地を見て肌で感じるアフリカ
加留部 淳(経団連アフリカ地域委員長/豊田通商シニアエグゼクティブアドバイザー)
- アフリカの大きなビジネスポテンシャルと日本に寄せる高い期待
- 地理的優位性とビジネス環境の整備を通じて飛躍するモロッコ
- TICAD9の横浜8月開催はアフリカとの経済交流拡大の好機
【報告】
COP29における経団連の活動
船越 弘文(経団連環境委員会地球環境部会長/日本製鉄副社長)
- ジャパン・パビリオンでのセミナー開催
- 浅尾環境大臣、海外経済団体との意見交換
- COP29交渉における主な成果
【報告】
シンポジウム「公正・公平で強靭かつ持続可能な貿易投資環境の実現に向けて」を開催
―自由で開かれた国際経済秩序の再構築の方策について議論
(経団連国際経済本部)
- 基調講演
- パネル討議1
- 分断にいかに歯止めをかけ、公平な競争条件を確保するか
- パネル討議2
- 経済安全保障の要素をいかに秩序に取り込むか
- パネル討議3
- グローバルサウスといかに連携するか
連載
-
あの時、あの言葉
旅は寛容を教える"Travel teaches toleration"
立石 文雄(経団連サプライチェーン委員長/オムロン名誉顧問) -
Essay「時の調べ」
死者の日に出会う
管 啓次郎(詩人・明治大学大学院理工学研究科(総合芸術系)教授)