月刊 経団連2024年6月号
特集 複雑さを増す世界におけるOECDへの期待
巻頭言
日本のソフト・パワー
トランプ前米国大統領の再選可能性が現実味を帯び、生成AIで作られた偽情報が飛び交い、戦争・紛争は終わりが見えない。分断と混迷を深める世界の中で、食料、エネルギー・資源、軍事のいずれにおいても自立できない日本は、どのような存在として世界に必要とされる国となれるのだろうか。
特集
複雑さを増す世界におけるOECDへの期待
OECDは、国際経済の広範な課題を取り扱うフォーラムとして、自由で開かれた国際秩序の形成に大きな役割を果たしてきた。しかし近年、米中両国の対立やロシアのウクライナ侵略などによる地政学的な緊張により世界は分断の危機に直面している。また先進国の世界経済に占める割合が低下しグローバルサウスが台頭する中、グローバルガバナンスのあり方が問われている。
座談会:複雑さを増す世界におけるOECDへの期待
- 新美 潤 (OECD日本政府代表部特命全権大使)
- エマ・マルチェガリア (B7イタリア2024議長、BIAC副会長、マルチェガリアホールディング会長兼CEO)
- 稲垣 精二 (経団連審議員会副議長、OECD諮問委員長/第一生命ホールディングス会長)
- ■しかく 国際情勢に対する現状認識
- 地政学的な混沌の中でのOECDの役割や意義の重要性
- 自由で開かれた国際秩序の再構築は、経済界にとって最優先事項
- グローバルサウスと共に新たなコモンズの再構築を
- ■しかく 自由で開かれた国際秩序の再構築に向けて
- 国際議論への積極的な参画が求められる日本
- 国際社会が抱える諸問題を多面的アプローチでリードすることが必要
- 経済活動と安全保障とが密接不可分となった時代の課題
- ■しかく 各国政府やOECD等の国際機関に求められる役割
- 議長国のローテーションでは継続性が重要
- OECDに期待する三つの役割
- 徹底した熟議による意思決定プロセス
- ■しかく 課題に対するそれぞれの立場からの貢献
- 企業にはOECDの意思決定に積極的に関与を
- 熟議を通したコンセンサスで一つにまとまっていく
- 官民連携での取り組みを通じた貢献
OECD閣僚理事会の議長国を務めて
―客観的で透明性の高い開かれた議論を可能とするOECD
上川 陽子(外務大臣)
- なぜ、今OECDなのか?
- OECD自らの変革と新興国への関与の強化
- 先進的課題に関する議論の主導、信頼される国際機関として
- 変化の流れの共創
インドネシアのOECD加盟
―先進国入りに向けた包摂的かつ戦略的な道程
アルシャド・ラシッド(インドネシア商工会議所(KADIN)会頭)
- インドネシアが今、OECDへの加盟を求める戦略的理由
- インドネシアはOECDに新たな活力をもたらせるか
2024年OECD閣僚理事会でのBIAC(Business at OECD)の優先課題と関与
チャールズ・リック・ジョンストン(BIAC会長)
BEPS事例から見るOECD非加盟国・地域との連携が実現した要因
岡田 至康(BIAC税制・財政委員会副委員長、PwC税理士法人顧問・税理士)
- BEPSプロジェクト最終報告書
新・OECD多国籍企業行動指針(RBCに関する行動指針)
―その実践により「責任ある企業行動」の促進、実現へ
佐久間 総一郎(経団連OECD諮問委員会多国籍企業行動指針改訂検討タスクフォース座長、
BIAC責任ある企業行動委員会副委員長/日鉄ソリューションズ顧問)
- OECD多国籍企業行動指針とは
- RBC行動指針へ
─ ビジネスへの期待の高まりの中で - 2023年改訂のポイント
─ デュー・ディリジェンスの適用拡大 - RBC行動指針の意義
─ 自由な国際投資環境を構築するために - 自分ごととして
─ OECDでのルール形成に参加を
チョークポイントはどこにあるか
―「量」と「頻度」の視点から
猪俣 哲史(日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所
開発研究センター上席主任調査研究員)
- OECDの付加価値貿易指標、TiVA(ティーバ)
- 「頻度」によるサプライチェーン集中度とは
- 「量」と「頻度」による集中リスク分析
民間企業と友好国主義が作るOECDのデジタル政策
―AIとデータをめぐるデジタル政策の総本山
横澤 誠(BIACデジタル経済政策委員会共同委員長、
日本情報経済社会推進協会主席研究員)
- OECDのデジタル経済政策委員会
- デジタル政策議論の新たな展開
- デジタル変革議論の浸透・一般化と議論再編の必要
- AIとDFFTが今後のデジタル社会を左右する
- 民間企業とOECD
複雑さを増す世界におけるOECDへの期待
―わが国のOECD加盟60周年にあたって
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/022.html
稲垣 精二(経団連審議員会副議長、OECD諮問委員長/第一生命ホールディングス会長)
- 現状認識
- OECDに期待する役割
- OECDの組織・運営のあり方
- 日本政府への期待
- 経団連としての取り組み
- 日本政府・OECDへの働きかけ
BIAC職員の1日
角田 みなみ(第一生命保険(BIACに出向))
一般記事
【提言】
日本産業の再飛躍へ
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/031.html
橋本 英二(経団連副会長、産業競争力強化委員長/日本製鉄会長)
澤田 純(経団連副会長、産業競争力強化委員長/日本電信電話会長)
岡藤 正広(経団連産業競争力強化委員長(当時)/伊藤忠商事会長)
- 官民連携による長期産業戦略の確立
- 産業基盤強化に向けた具体的施策
- 政府への働きかけと今後の取り組み
【提言】
バイオトランスフォーメーション(BX)実現のための重要施策
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/034.html
小坂 達朗(経団連審議員会副議長、バイオエコノミー委員長/中外製薬特別顧問)
岩田 圭一(経団連バイオエコノミー委員長/住友化学社長)
- バイオをめぐる国内外の動向
- 分野横断的な重要施策
- 課題オリエンテッドなロードマップの策定
- サプライチェーンの可視化・強靭化
- 基礎研究から実用化・普及に至る経路(パス)の強化
- バイオ戦略推進体制の強化
- 適用分野別の重要施策
【報告】
経団連訪アフリカミッションを派遣
―南アフリカ、アンゴラ、エチオピアを訪問し、日アフリカ経済交流のさらなる活性化をめぐり議論
大橋 徹二(経団連審議員会副議長、サブサハラ地域委員長(当時)/コマツ会長)
加留部 淳(経団連サブサハラ地域委員長(当時)/
豊田通商シニアエグゼクティブアドバイザー)
- 日本にとってアフリカ屈指のビジネスパートナーである南アフリカ
- 石油・資源以外の経済多角化を目指すアンゴラ
- 豊富な労働力を背景に今後の経済発展への期待が高まるエチオピア
- 2025年に横浜で開催されるTICAD9を通じてアフリカとの交流拡大を図る
【報告】
高齢社員のさらなる活躍推進に向けて
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/033.html
淡輪 敏(経団連雇用政策委員長/三井化学会長)
内田 高史(経団連審議員会副議長、雇用政策委員長/東京ガス会長)
- 高齢者雇用の現状と課題
- 課題解決に向けた対応の方向性
- 今後の方向性
【報告】
日台産業協力の一層の促進、多角化に向けて議論を深める
―第51回東亜経済人会議を開催
https://www.keidanren.or.jp/policy/2024/019.html
飯島 彰己(経団連東亜経済人会議日本委員長/三井物産顧問)
- 日台経済交流に大きな役割を果たす東亜経済人会議
- 重要性を増す日台の半導体協力
- 日台協力により、多様な社会課題の解決に貢献
─ カーボンニュートラルの達成 - 人的交流の推進
─ 観光分野を中心に - 高齢化社会への対応
【報告】
資本主義の未来をめぐり意見交換
―マルクス・ガブリエル教授との懇談会を開催
(経団連21世紀政策研究所)
連載
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あの時、あの言葉
先人のことばは人生の節々でよみがえる
片野坂 真哉(経団連政治特別委員長、外交委員長/ANAホールディングス会長) -
Essay「時の調べ」
源流をたどる、流域を俯瞰する
村松 昭(鳥瞰絵図作家)
新会員紹介
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社長玉井 信光
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社長比良 竜虎
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社長青木 淳一
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社長山田 晃久