月刊 経団連2023年10月号
特集 両立支援から考える働きがいの向上 企業価値を高めるサステナビリティ・コミュニケーション
巻頭言
素直に見て感じて素早く反応せよ
私は「ものづくり」の業界に身をおいている。変化への対応が「まだまだこれから」の企業が多いといわれる業界だが、私の周りでも様々な変革あるいは新しい事業化への取り組みが進められている。そうした中、取り組みの成果の確からしさを向上させるには、「現場・現物・現実」の「三現主義」のマインドセットが有効と考えている。
特集
両立支援から考える働きがいの向上
少子高齢化・人口減少の急速な進行によって、人手不足感が強まり、社員一人ひとりの生産性向上が求められる中、企業は、付加価値の創出を最大化すべく、働きがい・働きやすさを高める施策を推進している。
とりわけ、今後は、男女がイコールパートナーとして仕事と育児等を両立できる環境を整備することが課題となっている。そのために企業は、働き方改革のさらなる推進とともに、各種両立支援の拡充、DE&Iの浸透やアンコンシャス・バイアスの解消など意識改革に注力していく必要がある。
対談:両立支援から考える働きがいの向上
- 冨田 哲郎 (経団連審議員会議長、労働法規委員長/東日本旅客鉄道会長)
- 松浦 民恵 (法政大学キャリアデザイン学部教授)
- 少子高齢化・人口減少が経済・企業経営に及ぼす影響
- 働き手のエンゲージメント向上の重要性
- 男女の役割分業は、社会全体で考えるべき課題
- エンゲージメントと労働生産性を高める働き方改革
- 仕事と育児の両立支援の取り組み
- 女性のキャリア形成と両立支援のバランス
- 介護、病気治療、不妊治療との両立支援
- 何でも相談できる職場環境の重要性
- 意識改革の推進には、従業員の納得が不可欠
- 中小企業の両立支援と、外に開かれた組織づくり
男性社員の育休取得率100%達成に向けた取り組みと課題
田中 幸広(大王製紙取締役常務執行役員・コーポレート部門総務人事本部長)
- 当社グループのダイバーシティ推進の歩み
- 男性育休取得推進策を通じた効用
- 今後の課題について
三菱UFJ銀行が取り組む不妊治療と仕事の両立支援
上場 庸江(三菱UFJ銀行人事部部長兼ダイバーシティ推進室長)
- 持続可能な環境・社会を目指して
─不妊治療と仕事の両立を支援 - 安心して治療に取り組める職場風土を醸成するために
病気治療と仕事の両立支援のあり方
武田 雅子(メンバーズ専務執行役員CHRO)
- 両立支援にあたり組織に必要なこと
- 大切なのは制度・運用・配慮
「アンコンシャスバイアス」を意識することの大切さ
─ 一人ひとりがイキイキと活躍する組織づくりを目指して
守屋 智敬(アンコンシャスバイアス研究所代表理事)
- アンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)とは
- ネガティブな影響を防ぐための対処法
介護離職の防止に関する誤解と企業だからこそできる支援
川内 潤(NPO法人となりのかいご代表理事)
- 介護離職を減らすには
- 介護休暇・休業や介護保険の周知をしても離職が止まらない理由
- 従業者が持つ介護意識のマインドセットに取り組むべき
特集
企業価値を高めるサステナビリティ・コミュニケーション
サステナビリティが企業経営の重要課題となっている。企業の存在意義は利益創出のみならず社会課題解決への貢献にも重きを置くべきとの機運が高まり、企業経営へのSDGsの統合、ESGやインパクト等を踏まえた投資家との対話の促進など、様々な進展がみられる。
こうした中、広報部門には、サステナブルな社会の実現に向け、企業がどのように課題と向き合い、各ステークホルダーにどのような情報を発信し、共感を得ていくか(=サステナビリティ・コミュニケーション)が求められるなど、その役割が深化している。
座談会:企業価値を高めるサステナビリティ・コミュニケーション
- 井垣 勉 (オムロン執行役員常務グローバルインベスター&ブランドコミュニケーション本部長兼サステナビリティ推進担当)
- 堀 伸彦 (キリンホールディングス執行役員コーポレートコミュニケーション部長)
- 飾森 亜樹子 (三菱UFJフィナンシャル・グループブランド戦略グループ部長チーフ・コーポレートブランディング・オフィサー)
- ■しかく サステナビリティ・コミュニケーションの現状
- サステナブル経営の実践
「世界のCSV先進企業」
「世界が進むチカラになる」 - ■しかく ステークホルダーへの情報発信
- 自社だけではなく、バリューチェーン全体の情報開示が必要
- 挑戦変革に向けた意思とMUFGの価値観と
サステナビリティの姿勢をわかりやすく情報発信 - ■しかく 従業員への自分ごと化、理解浸透への仕掛けづくり
- サステナビリティと企業理念の実践にチャレンジする「TOGA」
- インターナルブランディングウェブサイト「KIRIN Now」
- ■しかく ブランド構築、企業イメージへの影響
- 社会課題へのスタンスを明確にし、コアなファンを獲得する
- ■しかく サステナビリティ・コミュニケーションの課題
- サステナビリティへの法規制と情報開示が強化される
- 「スピード」「ノウハウ」「リーダーシップ」が必要
- サステナビリティ・コミュニケーションを繰り返し続けること
機関投資家が期待する企業のサステナビリティ・コミュニケーション
今村 敏之(野村アセットマネジメント責任投資調査部長)
- 無形資産への投資促進が企業価値向上のカギ
- 無形資産を資本と捉え投資につなげるには
- 投資家にどのように取り組みを伝えるか
サステナビリティ・コミュニケーションの企業動向
─サステナビリティは「認知・理解」から「行動」フェーズへ
押本 有里子(博報堂プロダクツ広報部マネジメントプランニングディレクター)
- 企業のサステナビリティ推進はなぜ機能しないのか
- 一貫性のある総合的なコミュニケーション計画の策定
- 共感を生み出すストーリーテリングで社員の行動を促進
- 顧客が参加したくなる仕掛けや体験を通じたコミュニケーションの実装
企業のサステナビリティ・コミュニケーションを支援する
渡辺 良(経済広報センター専務理事・事務局長)
- なぜサステナビリティ・コミュニケーションが必要か
- 企業はサステナビリティ・コミュニケーションにどのように取り組んでいるか
- 企業のサステナビリティ・コミュニケーションについて、ステークホルダーはどう受け止めているか
一般記事
【報告】
現下の国際情勢におけるアジア各国・地域の連携・協力をめぐり活発に議論
─第12回アジア・ビジネス・サミットを韓国・ソウルで開催
十倉 雅和(経団連会長)
- アジア各国・地域間の連携・協力が一層重要に
- 世界経済のエンジンとして、アジア経済が継続して発展するための方途
- 持続可能な社会の実現に必要なDXとGXの推進
- 自由で開かれた国際経済秩序の再構築に向けて
【報告】
日韓経済関係の強化に向けて、着実に歩を進める
十倉 雅和(経団連会長)
- 尹大統領を迎え、日韓ビジネスラウンドテーブルを開催
- 「日韓・韓日未来パートナーシップ基金」を創設
- 日韓産業協力フォーラムで二国間協力の可能性を議論
- 新たに「日本・韓国経済委員会」を設置
- 日韓は重要なパートナー。未来志向の関係構築に取り組む
【報告】
グリーンバイオ/スマート農業の最前線から食と農業の課題を探る
─北海道プライムバイオコミュニティ視察
(経団連産業技術本部)
- KUBOTA AGRI FRONT
- 竹中工務店北海道地区FMセンター
- 自立型ナノグリッド
- スマート農業教育研究センター
- 北海道ワイン教育研究センター
- 北海道大学、北海道庁、ノーステック財団との意見交換
連載
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あの時、あの言葉
ビジョンを掲げ、ネバーギブアップで挑戦する
磯崎 功典(経団連農業活性化委員長/キリンホールディングス社長) -
Essay「時の調べ」
〈弱いロボット〉にみる幸福感とテクノロジー
岡田 美智男(豊橋技術科学大学情報・知能工学系教授)