月刊 経団連2022年12月号
特集 経済安全保障の確保に向けて
巻頭言
経済安全保障と経済による安全保障
1990年代初めの東西冷戦の終結を受け、世界の分断が消滅し、米国を中心とする自由主義経済のもと、企業がルールにのっとり自由にグローバルでビジネスを展開できる時代が始まった。
特集
経済安全保障の確保に向けて
サプライチェーンの脆弱性やサイバー攻撃の脅威の顕在化、技術覇権競争の激化など、経済と安全保障を切り離して考えることがもはや不可能となる中、我が国では2022年5月11日に経済安全保障推進法が成立した。そこで、経済安全保障を巡る論点を俯瞰し、我が国として取り組むべき方針について議論する。
座談会:経済安全保障の確保に向けて
- 遠藤 信博 (経団連副会長/日本電気特別顧問)
- 片野坂 真哉 (経団連外交委員長/ANAホールディングス会長)
- 小林 鷹之 (前経済安全保障担当大臣・衆議院議員)
- 佐橋 亮 (東京大学東洋文化研究所准教授/21世紀政策研究所客員研究委員)
- ■しかく 経済安全保障が注目される背景と現状認識
- 背景にある米中対立
─先端技術の優越性の獲得競争 - フレキシブルなバリューチェーンが価値創造につながる
- 経済と安全保障を切り離して考えるのは不可能
- 他国の動向に左右されない国造りを
- ■しかく 経済安全保障の確保に向けたこれまでの取り組み
- 経済安全保障の要となる「戦略的自律性」と「戦略的不可欠性」
- 自由な経済活動を維持しながら安全保障を確保する
- 官民一体となった方向感の構築
- 規制にとどまらない総合的な施策を
- ■しかく 残された課題と今後の取り組み
- 継続的な価値創造力とサステイナブルな仕組みづくり
- 国力の強化こそ経済安全保障の要
- 各国と包括的な外交展開を
- 開かれた国を維持しながら経済安全保障を確保
経済安全保障に関する経団連の取り組み
大林 剛郎(経団連外交委員長/大林組会長)
- 経済安全保障推進法案への働き掛け
- 経済安全保障推進法の施行に向けて
- 企業の取り組み促進
【特別寄稿】
経済安全保障の課題と展望
高市 早苗(経済安全保障担当大臣)
- 安全保障と経済を一体のものとして捉える
- サイバー攻撃の脅威は高度化・複雑化している
- 経済安全保障に対する意識の醸成が重要である
経済安全保障政策の現段階
北村 滋(北村エコノミックセキュリティ代表/前国家安全保障局長)
- 経済安全保障推進法が定める4つの分野
- 事業法体系に安全保障の視点がないという課題を解決する
経済安全保障における重要技術の課題
鈴木 一人(東京大学公共政策大学院教授/地経学研究所長)
- 「戦略的不可欠性」が鍵
- 新法における課題
─20技術分野の位置付けの明確化と絞り込み - 半導体関連技術の輸出規制強化にみる影響と教訓
- 日本の選択肢
経済安全保障の課題
─データのセキュリティー
土屋 大洋(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)
- データは競争力の源泉になる
- 特定重要物資の対象としてデータも視野に入れるべき
50年ぶりの転機に立つエネルギー安全保障政策
山本 隆三(常葉大学名誉教授/国際環境経済研究所副理事長兼所長)
- エネルギー危機の背景を考える
- 深化するエネルギー危機
- 安全保障強化のために
金融面から見た経済安全保障の論点
大矢 伸(欧州復興開発銀行東京事務所長)
- 経済安全保障推進法
- インフラ・ファイナンス
- 通貨
経済安全保障とインテリジェンス
和田 雅樹(公安調査庁長官)
- 技術、データ、製品等の流出防止
- 公安調査庁の取り組み
- 関係機関・企業等との協力
世界食料危機と我が国の食料安全保障を考える
柴田 明夫(資源・食糧問題研究所代表)
- シカゴ穀物市場は騰勢一服も先高観が拭えない
- 鋏状価格差(シェーレ)が現れた
- 「食料」に力点を置いた食料・農業・農村基本法の見直しを
経済安全保障問題に対処したサプライチェーンの構築のために
戸堂 康之(早稲田大学政治経済学術院政治経済学部・大学院経済学研究科教授)
- サプライチェーン途絶のリスクが上昇
- 複数の国に生産拠点を分散すべき
- 輸出管理に関する透明なルールが必要
一般記事
日中国交正常化50周年を迎えて
─次の50年に向けた新たな日中関係の構築を
十倉 雅和(日中国交正常化50周年交流促進実行委員長/経団連会長)
- オールジャパンの体制で日中国交正常化50周年交流促進実行委員会を設置
- 3年ぶりに李克強中国国務院総理との対話をオンラインで開催
- 対話を通じた意思疎通と相互理解の重要性
- 新たな半世紀に向けて
【提言】
「次期教育振興基本計画」策定に向けた提言
https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/088.html
渡邉 光一郎(経団連副会長、教育・大学改革推進委員長/第一生命ホールディングス会長)
小路 明善(経団連副会長、教育・大学改革推進委員長/アサヒグループホールディングス会長)
橋本 雅博(経団連教育・大学改革推進委員長/住友生命保険会長)
- 教育振興基本計画の実効性向上
- 次期計画に盛り込むべき理念・目標および基本的な方針
- 優先的に取り組むべき教育政策の9つの施策
【提言】
産業技術立国への再挑戦
―2030〜2040年における産業とキー・テクノロジー
https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/089.html
地下 誠二(経団連産業競争力強化委員会企画部会長/日本政策投資銀行社長)
- 未来社会起点での産業・技術の構築
- 2030〜2040年のキー・テクノロジー
- 課題と施策
【提言】
経団連サイバーセキュリティ経営宣言 2.0
https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/087.html
(経団連産業技術本部)
対面交流を通じてブラジル経済界との絆を深める
―第23回日本ブラジル経済合同委員会を開催
安永 竜夫(経団連副会長、日本ブラジル経済委員長/三井物産会長)
- 日伯の産業協力強化の重要性を改めて認識
- 日本メルコスールEPAの早期実現を要望
訪欧ミッションをチェコ、ギリシャに派遣
─不透明な国際情勢における日本との協力の可能性
東原 敏昭(経団連副会長、ヨーロッパ地域委員長/日立製作所会長)
佐藤 義雄(経団連ヨーロッパ地域委員長/住友生命保険特別顧問)
- チェコ
- ギリシャ
Business at OECD 60周年記念イベントに参加
─OECDとの官民連携の意義を改めて確認
稲垣 精二(経団連OECD諮問委員長/第一生命ホールディングス社長)
- これまでの成果と現在、そして将来
- ルールに基づく自由で開かれた国際経済秩序の再構築へ
次世代放射光施設 NanoTerasu(ナノテラス)における
コアリション構想とイノベーション・エコシステム
高田 昌樹(光科学イノベーションセンター理事長/東北大学総長特別補佐)
- ナノの可視化が、サイエンスとモノづくりをつなぐ
- 次世代放射光施設 NanoTerasu(ナノテラス)が形成するコアリション
- "見た(研究)"だけで終わらせない課題解決の場を目指して
連載
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あの時、あの言葉
合理主義と経験主義は、批判的態度を涵養し、
それによってあらゆるものが疑われ始める
─ダニエル・ベル
熊野 英介(アミタホールディングス会長兼CEO) -
Essay「時の調べ」
ゲルハルト・リヒター、芸術と歴史
鈴木 俊晴(豊田市美術館学芸員)