月刊 経団連2022年8月号
特集 グリーントランスフォーメーション ―2050年カーボンニュートラルに向けた経済社会の変革
巻頭言
国のレジリエンスを高めよ
企業がグローバルな経済活動を行えるのも、自由で開かれた国際秩序があってこそだ。戦後世界が尊重してきた普遍的価値への挑戦に対しては、国際社会が結束を固めて、守っていかなくてはならない。
特集
グリーントランスフォーメーション ―2050年カーボンニュートラルに向けた経済社会の変革
昨今の行き過ぎた資本主義により、生態系の崩壊や気候変動問題が顕在化している。こうした中、我が国は、2050年カーボンニュートラル(CN)、2030年度温室効果ガス46%削減という極めて野心的な目標にコミットしている。
その実現に向けては、国を挙げて、グリーントランスフォーメーション(GX)を進めていく必要がある。GXは、投資主導による成長戦略の柱であると同時に、産業革命以来の人類史を画する、経済社会の大規模な変革である。不透明な国際情勢のもと、エネルギーの安定供給を確保しながら、需給両面において脱炭素化を進める必要があり、国民と企業の行動変容も不可欠である。そのため、幅広い政策の遂行が求められ、国民理解の醸成も必須となる。
座談会:グリーントランスフォーメーション
- 平野 信行 (経団連副会長/三菱UFJ銀行特別顧問)
- 杉森 務 (経団連審議員会副議長、環境委員長/ENEOSホールディングス会長)
- 隅 修三 (経団連資源・エネルギー対策委員長/東京海上日動火災保険相談役)
- 山下 ゆかり (日本エネルギー経済研究所常務理事)
- 大橋 弘 (東京大学副学長・同大学院経済学研究科教授)
- ■しかく 現下のエネルギー情勢とGXに向けた政府方針の評価
- 我が国を取り巻くエネルギー情勢やエネルギー政策
- エネルギー業界から見た現下の情勢
- 金融業界から見たGXを巡る世界の潮流
- ロシア・ウクライナ情勢を踏まえたGXへのアプローチ
- ■しかく GXに向けた今後の重要政策の在り方
- GX投資を呼び込むための施策・環境整備
- サステナブル・ファイナンスや国際的ルールメークの在り方
- 国民理解の醸成や産業構造転換への対応
- 成長に資するカーボンプライシング
- ■しかく GXに向けた経団連への期待・果たすべき役割
- 業界の垣根に風穴を開けるような取り組みへ
- 科学技術立国として日本の脱炭素技術で世界をリード
- 情報発信と民間外交の強化
- リーダーシップを発揮しイノベーション&トランジションを実現
グリーントランスフォーメーションの実行に向けて
萩生田 光一(経済産業大臣)
- クリーンエネルギー戦略の策定
- GXリーグでの切磋琢磨
- 初期需要の創出
- GXに即した貿易ルール
- 日本がGXで世界を主導していく
原子力積極利用への転換
山地 憲治(地球環境産業技術研究機構(RITE)理事長)
- 曖昧な原子力政策、再認識されるエネルギー安全保障の重要性
- エネルギー政策の基本バランスと技術革新
- CN実現には対策の総動員が必要
化学産業におけるカーボンニュートラルに向けた取り組み
―ソリューションプロバイダーとしてイノベーションを加速
(日本化学工業協会)
- イノベーション推進を支援
- 社会全体を巻き込んでカーボンニュートラル実現を目指す
2050年カーボンニュートラルに向けた鉄鋼業界の挑戦
(日本鉄鋼連盟)
- 素材としての鉄とCN
- カーボンニュートラル行動計画
- 革新的技術開発
- 今後に向けて
グリーンディール
―エネルギーの国内自給率をいかに高めるかが最優先の課題
永濱 利廣(第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)
- 背景にある世界の変化
- 成長戦略としてのグリーンディール
- 早急に求められるグリーンディールの加速
サステナブル・ファイナンスの動向について
林 礼子(BofA証券副社長)
- サステナブル・ファイナンスの重要性
- カーボンニュートラル
- トランジション・ファイナンス
- 今後の課題
脱炭素に向けた産業構造の変化
青木 大樹(UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント
日本地域最高投資責任者兼日本経済チーフエコノミスト)
- 環境や持続可能性に対する投資家・消費者の価値観の変化
- 脱炭素・持続可能性が新たな成長フロンティア
- 経済・産業の成長ドライバーが脱炭素関連技術にシフト
- 脱炭素に向けた目標が企業に自らの変革を迫る
攻めの気候変動外交
―ルール形成などで世界の脱炭素化と日本の繁栄に寄与
赤堀 毅(外務省地球規模課題審議官)
- 重要性を増す気候変動問題
- 世界のルール作りを主導する日本
- 官民共に攻めの姿勢で総力結集を
サーキュラーエコノミー構築に向けて
細田 衛士(東海大学政治経済学部経済学科教授)
- 世界をリードしてきた日本の資源循環政策
- 循環型社会とサーキュラーエコノミーの違い
- 産業構造の変革:生産・販売方式を資源循環型へ徹底
- モノからコト(サービス)へのグリーンな有効需要の創出が不可欠
- 産業構造の変革とライフスタイルの変化を同期させる工夫
生物多様性を巡る最近の国際動向
武内 和彦(地球環境戦略研究機関(IGES)理事長)
- 生物多様性分野での日本の国際貢献
- 気候変動と生物多様性の統合的アプローチ
- 未来を導く決定的な10年
成長に資するカーボンプライシングについて
―GXリーグにおける取り組みについて
梶川 文博(経済産業省産業技術環境局環境経済室長)
- 2050CN宣言以降のカーボンプライシングの議論経緯
- CNを前提とした際のGXリーグの位置付け
- GXリーグの今年度の活動と今後の展開
エネルギー・セキュリティーを確保し、
持続可能で、経済的でもあるシステムへの世界のエネルギー転換
ファティ・ビロル(国際エネルギー機関(IEA)事務局長)
一般記事
【報告書】
"インパクト指標"を活用し、パーパス起点の対話を促進する
―企業と投資家によるサステイナブルな資本主義の実践
https://www.keidanren.or.jp/policy/2022/060.html
太田 純(経団連副会長、金融・資本市場委員長/三井住友フィナンシャルグループ社長)
日比野 隆司(経団連審議員会副議長、金融・資本市場委員長/大和証券グループ本社会長)
林田 英治(経団連金融・資本市場委員長/JFEホールディングス特別顧問)
- 「サステイナブルな資本主義」を金融・資本市場で実践する
- 従来のESG投資のKPIは、長期経営戦略との関係性が説明し難い
- パーパスや長期経営戦略に関する対話のツールとなる「インパクト指標」
- ステークホルダーとの共通言語としての「インパクト指標」
- 実践上の課題や「レジリエンス」「ヘルスケア」指標例を提示
B7ベルリンサミット2022に参加
―志を同じくする国との結束を再確認
(経団連国際経済本部)
- サミットでの主な議論
- ショルツ首相にB7共同提言を手交
- G7サミット
- 来年のB7東京サミットに向けて
連載
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あの時、あの言葉
テレビが箱根を変えてはいけない
田中 晃(WOWOW社長) -
Essay「時の調べ」
街角のペンギン
高野 ひろし(路上ペンギン写真家兼物書き)