月刊 経団連2021年9月号
特集 ポストコロナの社会における科学技術イノベーションの役割
巻頭言
サステイナブルな資本主義を実現する、若者・ミレニアル世代
スイスのビジネススクール・IMD「世界競争力ランキング」で、日本は世界一となった。1989年、平成元年のことだ。平成の30年間が過ぎ、日本の国際競争力は過去最低の30位台まで落ち込んだ。日本の労働生産性は30年間ずっとG7最下位。今ではOECD平均にも届かない。
特集
ポストコロナの社会における科学技術イノベーションの役割
Society 5.0は政府の成長戦略であり、経団連としてもSDGsと関連付け、デジタルトランスフォーメーション(DX)を通じた新しい経済社会の実現を目指してきた。他方、新型コロナウイルスの感染拡大が世界の本質的な課題を浮き彫りにしている。そうした中、SDGsやESG投資に代表されるサステイナビリティの議論に注目が集まるなど、経済社会の在り方があらためて問われている。本対談では、未来の日本の経済社会を創造するために、産学が果たすべき役割などについて、五神真東京大学教授と十倉雅和会長が語り合った。
対談:サステイナブルな未来創造に向けて
- 五神 真 (東京大学大学院理学系研究科教授)
- 十倉 雅和 (経団連会長)
- ■しかく 日本には、まだ世界の新しい秩序の形成を先導できるチャンスがある
- 今すぐ産学官の持てる力を総動員してDXに取り組むべき
- コロナ禍で浮き彫りになった日本固有の課題
- 大学が経済や社会を動かすプレーヤーになる
- ■しかく 「DXの遅れ」と「緊急事態への備え」という課題にしっかりと対応を
- 破壊的な技術をコントロールしなければならない
- 産学は不可分な連携体である
- グローバル・コモンズを持続可能にするグローバル・エコシステムの構築を
- ■しかく サステイナブルな資本主義の鍵
マルチステークホルダーが重視する多様な価値の包摂と協創 - 資本主義をアップデートし、「サステイナブルな資本主義」の確立を
- 我々は強い意志を持って良い社会を選び取らねばならない
座談会:イノベーションの社会実装を加速する
- 南場 智子 (経団連副会長/ディー・エヌ・エー会長)
- 畑中 好彦 (経団連審議員会副議長、イノベーション委員長/アステラス製薬会長)
- 片岡 一則 (東京大学名誉教授/川崎市産業振興財団副理事長/ナノ医療イノベーションセンター長)
- ■しかく 基礎研究から社会実装までの間に直面する障壁
- イノベーションを創出するスタートアップを含めたエコシステムが必要
- 知財の活かし方、マインドセットが重要
- 自分の起業では人、金、知財、資本、全て失敗した
- 企業の利点は国境や業界の枠を自由に超えられること
- 経営トップではなく、マーケットメカニズムに審判を委ねる
- 大学のスタートアップでは経営面での支援がない
- スタートアップ・ビジネスの能力を見極める人材育成が必要
- 未知の新規事業領域であっても突き進むマインドを共有する
- ■しかく イノベーションの社会実装を加速するために必要なこと
- スタートアップにはコーディネーターが必要
- 各大学を束ねるコーディネート組織が必要
- ヒト・モノ・カネ・チエのネットワークがあるクラスター形成が必要
- 企業も現場に入り、様々な顔を持ってイノベーションに関わっていく
- 事業と人材の流動化を絶えず行うことが大切
- ■しかく イノベーションエコシステムの構築
- ナノ医療イノベーションセンターでオープンイノベーションを推進
- インキュベーション施設にスタートアップを呼び込み、次のステップへ
- スタートアップへの投資はリスクに対する投資
- 失敗した人こそ探し出して採用すべきだ
- 全てのステークホルダーから選ばれる魅力的な企業に
- 5年後にはシリコンバレーではなく、京都だ、東京だと言われる
スタートアップの中心地をつくりたい - 組織の多様性を確保し日本のポテンシャルを引き出す
激動期における科学技術・イノベーション政策について
井上 信治(内閣府特命担当大臣(科学技術政策))
科学技術政策と経済安全保障
角南 篤(笹川平和財団理事長/政策研究大学院大学客員教授)
- 先端技術開発を巡る米中の覇権争いの激化
- 米中の技術戦略の動向
- 安全保障政策・科学技術政策を新たな視点で立て直す
- 岐路に立つ日本
─求められる科学技術外交の積極展開
イノベーション創出の方法
梶川 裕矢(東京工業大学環境・社会理工学院教授/東京大学未来ビジョン研究センター教授)
- イノベーションを描く
- イノベーションを実現する
- 何が必要か?
経済理論を実践し社会経済制度をデザインするには
栗野 盛光(慶應義塾大学経済学部教授・マーケットデザイン研究センター長)
- マーケットデザインとは
- 調整が機能して初めてDXに至る
- 経済理論を実践して社会課題を解決する
科学技術コミュニケーションのさらなる確立に向けて
川本 思心(北海道大学大学院理学研究院准教授・ 高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門部門長)
- 大学教育から始まった日本の科学技術コミュニケーション
- 関連領域・分野と中心的概念「ポストノーマルサイエンス」
- 3.11で再認識された課題
- 科学技術コミュニケーションの確立に向けて
STEAM教育による新しい社会をデザインする次世代の人材育成
大島 まり(東京大学大学院情報学環・生産技術研究所教授)
- 探究力と学び続ける姿勢の強化
- STEAMを通した社会に開かれた教育と人材育成
数理活用産学連携イニシアティブ
―数理科学と社会の相互作用を起こすためには
小谷 元子(東北大学理事・副学長)
- デジタル社会の基盤となる数理科学を巡る各国の状況
- 経団連数理活用産学連携イニシアティブ
- 知を統合し未来を予測する科学
一般記事
【提言】
「全員参加によるサイバーセキュリティの実現に向けて」を公表
―Cybersecurity by Allの実現を目指す
http://www.keidanren.or.jp/policy/2021/062.html
遠藤 信博(経団連サイバーセキュリティ委員長/日本電気会長)
金子 眞吾(経団連サイバーセキュリティ委員長/凸版印刷会長)
- サイバーセキュリティを巡る状況
- Cybersecurity by Allに必要な3つの視点
- Society 5.0の実現に向けて
【提言】
「宇宙基本計画の実行に向けた提言」を公表
―宇宙政策の重点事項をまとめ、井上内閣府特命担当大臣に建議
http://www.keidanren.or.jp/policy/2021/063.html
(経団連産業技術本部)
- 宇宙開発利用の3つの重要性
- 宇宙政策の重要事項
- 宇宙関係予算の確保
小児希少難病セーフティネットの構築を目指していく
―ダイバーシティマネジメントの可能性を見据えて
南野 奈津子(健やか親子支援協会理事長/東洋大学ライフデザイン学部生活支援学科教授)
- 健やか親子支援協会の取り組み
- 今後の事業の方向性