月刊 経団連2021年5月号
特集 地方の経済・社会の活性化
巻頭言
サステイナビリティと「分散」
第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が11月に開催されるが、議論のベースとなるパリ協定は産業革命前と比較した気温上昇を一定レベルに抑えることを目標としている。
18世紀半ばからの産業革命以降の潮流の1つは「都市化」という言葉に代表される「集中」だったと思う。この集中という潮流は新型コロナウイルスで転換点を迎えた。
特集
地方の経済・社会の活性化
新型コロナウイルスの感染拡大は、オールハザード型のリスクを想起させるとともに、働き手の地方への関心を高める契機となり、東京圏からの人の分散や東京一極集中是正の必要性について、改めて社会的な課題としての認識を高めることとなった。こうした変化を捉え、地方への人の流れを進展させるには、人を惹き付ける魅力的な地域づくりが不可欠である。
そこで、経団連では、提言「ウィズ・ポストコロナの地方活性化─東京圏から地方への人の流れの創出に向けて─」(2020年11月)を取りまとめ、地域活性化の課題や取り組みの方向性を提示した。
座談会:地方の経済・社会の活性化
- 古賀 信行 (経団連審議員会議長・地域経済活性化委員長/野村ホールディングス特別顧問)
- 麻生 泰 (九州経済連合会会長)
- 武内 紀子 (経団連審議員会副議長・観光委員長/コングレ社長)
- 吉村 猛 (山口フィナンシャルグループ会長・グループCEO)
- ■しかく 地方の活性化に向けたこれまでの取り組み
- 地域の経済団体との連携協定やビジネスマッチングを推進
- ワーケーション、ブレジャー、MICE、ユニークベニュー
- 「Move Japan forward from 九州」がミッション
- 地方はまだまだ人材不足、人材紹介のニーズが高い
- ■しかく 新型コロナを契機とした状況の変化
- 今こそローカルのアドバンテージを活用すべき
- 副業人材のニーズは加速しているが、地方の事業承継問題は危機的な課題
- MICEのオンライン開催が進む中、交流人口をいかに増やすか
- 定住人口にこだわらず、関係・交流人口を増やす
- ■しかく 地方の魅力づくりに向けた課題
- 我々が生涯現役の道を示し、次世代を惹き付けることが必要
- 魅力ある地域資源を再発見する必要がある
- ■しかく 地方の活性化に向けた今後の官民の取り組み
- MICEビジネスで地域を活性化する
- 産学官金でエコシステムを作り地域循環させていく
- 「ツール・ド・九州・山口」を官民一体で取り組む
- 地方自治体のデジタルガバメントの実現を
- 地域の中で熱意を持って行動する人が必要
一極集中から地方分散へ、人と知の流れを創出
坂本 哲志(内閣府特命担当大臣(地方創生))
- 地方の脆弱さとは何か
- 人の参入、知の移転で地方を変える
- テレワークで副業・兼業
民間団体にも協力要請 - 地方から世界へ発信する
企業による内発型の地域づくりの推進
〜経団連会員企業による取り組み事例〜
経団連は提言「ウィズ・ポストコロナの地方活性化─東京圏から地方への人の流れの創出に向けて─」(2020年11月公表)において、 人を惹き付ける地域づくりにあたっては、地域を担う多様な主体の連携による内発型の取り組みを進めることが重要として、経団連会員企業・団体等による具体的な活動事例を紹介した。
本特集では、その後のフォローアップとして、内発型の地域づくりに取り組む4社の事例を紹介する。
【住む】出光興産
地域課題の解決パートナー
―移動と資源循環
【働く】野村證券
内発型の地域活性化へのチャレンジ
―"地産地消型の事業承継"と"後継者(アトツギ)によるイノベーション支援"
【育む】トヨタ自動車東日本
ものづくりを通じた人づくり
【交わる】ANAホールディングス
魅力あふれる「第二のふるさと」をつなぐ心の翼に
広域連携による持続可能な東北観光の実現に向けて
紺野 純一(東北観光推進機構専務理事/東北デスティネーションキャンペーン推進協議会事務局長)
- 東北観光の復興は道半ば
- 新型コロナウイルス感染症の影響
- 新しい旅のスタイルの創出と東北観光のブランド化
- 東北デスティネーションキャンペーンの推進
「スモールメリット」で挑戦
―新型コロナと闘い未来を拓け
平井 伸治(鳥取県知事)
- 新型コロナと闘う
- 新型コロナがもたらすパラダイムシフト
- ワーケーションと「福業」
─人材活躍新時代へ
備後圏域連携中枢都市圏構想の推進
(広島県福山市企画財政局企画政策部企画政策課)
- 備後圏域とは
- 備後圏域の取り組み
多様で持続可能な日本型ワーケーションモデルの可能性
―ワ―ケーション自治体協議会の取り組み
桐明 祐治(和歌山県企画部企画政策局情報政策課長)
- ワーケーション自治体協議会の目的と意義
- 経団連、日本観光振興協会とのモデル事業の実施
- 日本型ワーケーションへの期待
デジタル・ガバメントの実現に向けて
本島 靖(福島県会津若松市企画政策部副参事兼企画調整課スマートシティ推進室長)
- 地方でのデジタル・ガバメントの取り組み
- 行政のデジタル化に求められる視点
2025年大阪・関西万博に向けて「いのち」について考え、「未来社会(Society 5.0)」を共創する
石毛 博行(2025年日本国際博覧会協会事務総長)
- 「いのち」をテーマに掲げた万博の意義
- 基本計画・マスタープランとは?
- 「多様でありながら、ひとつ」を象徴する会場デザイン
- Society 5.0を実現する未来社会の実験場
- バーチャルとリアルの融合を目指す初めての万博
- 万博のテーマ事業
- 「TEAM EXPO 2025」プログラム
一般記事
【提言】
Society 5.0 with Carbon Neutral 実現に向けた電力政策
―電力システムの再構築に関する第二次提言
http://www.keidanren.or.jp/policy/2021/025.html
中西 宏明(経団連会長)
- 電力システムの将来像
- 将来像の実現に向けた環境整備
【提言】
「自由で開かれた国際経済秩序の再構築に向けて緊密な協調を求める」を公表
―日米欧のリーダーシップに期待
http://www.keidanren.or.jp/policy/2021/026.html
片野坂 真哉(経団連副会長、外交委員長/ANAホールディングス社長)
大林 剛郎(経団連外交委員長/大林組会長)
- 多国間主義への転換点
- グローバルなガバナンスが求められる諸課題と協調の方向性
- 経団連の取り組み
【提言】
戦略的なインフラシステムの海外展開に向けて
―2020年度版を公表
http://www.keidanren.or.jp/policy/2021/028.html
安永 竜夫(経団連副会長、開発協力推進委員長/三井物産会長)
遠藤 信博(経団連審議員会副議長、開発協力推進委員長/日本電気会長)
- 世界が直面する課題への対応
- 案件獲得に向けた推進体制の強化
- 官民連携を通じた公的施策の推進
- ファイナンス等支援の強化
第39回日本・香港経済合同委員会を開催
―相互理解の深化と経済交流の促進に向けて意見交換
國部 毅(経団連日本・香港経済委員会委員長/三井住友フィナンシャルグループ会長)
- 香港情勢の実態を把握する重要性
- 新たな機会を創出するGBA構想
- ウィズ・ポストコロナ期の日本・香港関係
【提言】
Society 5.0時代の学びII 〜EdTechを通じた自律的な学びへ
―学びのDXに向けた連携を
http://www.keidanren.or.jp/policy/2021/027.html
小宮山 利恵子(経団連イノベーション委員会企画部会エドテック戦略検討会座長/リクルートスタディサプリ教育AI研究所所長/東京学芸大学大学院准教授)
- EdTech活用で自律的な学びを実現
- 教育現場の伴走者としての企業・産業界の役割
- 学習データの活用とインフラ整備
「あの日から10年、東北の未来を創る」
―オンラインイベントを開催
連載
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あの時、あの言葉
理想は、人の理想を引き出す
倉橋 健太(プレイド代表取締役CEO) -
Essay「時の調べ」
宝塚「ポーの一族」を巡って
小池 修一郎(宝塚歌劇団特別顧問・演出)