月刊 経団連2021年4月号
特集 米国新政権下における日米関係のさらなる強化に向けて
巻頭言
持続可能な国際社会実現に向け、一層の日米関係強化を
コロナの影響で国際秩序が混迷を深め、各国の保護主義傾斜に拍車がかかる中、アメリカではバイデン新政権が誕生した。新政権はコロナの克服と経済回復へ向け、分断から融和へと国家・国民の団結を促すとともに、外交政策面もパリ協定への復帰等、国際協調への方針を打ち出しており、今後、様々な変化が起こると考えられる。
特集
米国新政権下における日米関係のさらなる強化に向けて
2021年1月、米国でバイデン政権が発足した。深刻化する社会の分断を受け、国民に結束を呼び掛ける一方、政策面では、新型コロナウイルス感染症の収束、雇用の維持・回復や気候変動問題への対応に注力する姿勢を打ち出すとともに、外交・通商・安全保障では国際協調路線を掲げている。米国を最も重要なパートナーと位置付ける日本は、新政権下での米国の動向や変容する国際情勢を踏まえつつ、関係を一層強化すべく、積極的に働き掛けていくことが求められる。
座談会:米国新政権下における日米関係のさらなる強化に向けて
- 早川 茂 (経団連副会長、アメリカ委員長/トヨタ自動車副会長)
- 渡部 恒雄 (笹川平和財団上席研究員)
- 森 聡 (法政大学法学部教授/21世紀政策研究所研究委員)
- 茅野 みつる (伊藤忠インターナショナル会社 President & CEO)
- 植木 義晴 (司会:経団連アメリカ委員長/日本航空会長)
- ■しかく 大統領選総括/今後の米国の動向
- 世界秩序が流動的になっている
- 経済界として通商政策への対応に追われた4年間
- ダイバーシティに富んだ新閣僚に期待
- 様々な対外政策を争点にせざるを得なかった
- ■しかく バイデン政権の主要政策
- トランプ以前の米国には戻らない
- 対中政策の鍵は台湾にある
- ポジティブな外交政策もあり、インド太平洋戦略にも期待
- 気候変動対策、サプライチェーン政策で日米の協力を
- 米中の"規制の板挟み"に注意しなければならない
- ■しかく 日米関係のさらなる強化のあり方
- 日米連携による多国間外交の重要性が高まっている
- アジアの安定のための日米関係を築く
- FOIPの推進、日米欧による国際ルールの形成、米国TPP復帰に期待
- CFIUSのホワイト国にならないと日本は競争出来ない
- ■しかく 経済界の取り組み
- 中国市場のリスクをヘッジして、第三国の需要に応える
- 貧富格差問題でリーダーシップを
- 日米連携による気候変動への取り組みに期待
- 日米の経済関係のさらなる強化に努める
かつてないほど強固な日米関係
ジョセフ・ヤング(駐日米国臨時代理大使)
スタートアップ分野における日米協力
永野 毅(経団連アメリカ委員長、スタートアップ委員長/東京海上ホールディングス会長)
- スタートアップ委員会の活動状況
- 日本のスタートアップ育成支援を意図した日米交流
- 米国におけるスタートアップエコシステムの形成
- 訪米ミッションでスタートアップをめぐる日米協力を強化
バイデン大統領は「分断」を克服出来るか
渡辺 靖(慶應義塾大学環境情報学部教授)
- バイデン新大統領の就任演説からみえるもの
- ワシントン政治熟知という強みと大統領令の多発
- バイデン氏が目指す融和とは
─国民全体を広く利すること - これまで以上に重要となる議会対策
バイデン新政権の経済政策の行方
白井 さゆり(慶應義塾大学総合政策学部教授)
- コロナ禍で再認識される米国経済のファンダメンタルズの強さ
- K字型回復 ─米国社会の分断を加速する恐れ
- バイデン新政権の経済対策による景気回復期待
- コロナ対応後に焦点となる気候変動対策
バイデン政権の気候変動政策の分析
杉野 綾子(日本エネルギー経済研究所電力グループ研究主幹/21世紀政策研究所研究委員)
- バイデン政権のエネルギー・環境公約
- 迅速な公約実行と国内サプライチェーン確立に向けた取り組み
- 外交、安全保障、通商政策に組み込まれる気候変動問題
「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」と日米協力
前田 匡史(国際協力銀行(JBIC)総裁)
- 米国の戦略的フレームワーク文書
- 日米豪連携の進展
- ブルードットネットワーク(BDN)
バイデン政権はTPP復帰以外に何をアジアに提示出来るか
マシュー・P・グッドマン(CSIS(戦略国際問題研究所)経済担当上級副所長)
米欧関係をいかに見極めるか
―日本の課題
鶴岡 路人(慶應義塾大学総合政策学部准教授)
- バイデン政権の欧州重視で問われる日本の立ち位置
- バイデン政権が求める同盟国の覚悟
バイデン外交の基本方針と中国
佐橋 亮(東京大学東洋文化研究所准教授/21世紀政策研究所客員研究委員)
- 中間層のための外交と対中戦略の接点
- 経済安全保障政策の具現化に向けた動き
分断と激動の米国でスピード感ある対応が求められる日本企業
(経団連米国事務所)
- 経済回復のスピードと力強さ
- 注目される政策
―マルチラテラル外交政策、気候変動・環境政策 - 貢献活動の重要性
一般記事
【提言】
非常事態に対してレジリエントな経済社会の構築に向けて
―新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえて
http://www.keidanren.or.jp/policy/2021/016.html
山内 隆司(経団連副会長、社会基盤強化委員長/大成建設会長)
渡邉 健二(経団連社会基盤強化委員長/日本通運会長)
- 事業継続のための企業の取り組み
- 政府・地方自治体における非常事態への体制整備
- レジリエントな社会システムの構築に向けた社会の変革
連載
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経営者のひととき
古都散策
永嶋 元博(東リ社長) -
Essay「時の調べ」
1620年代小倉藩細川ワイン製造とそのゆくえ
後藤 典子(熊本大学永青文庫研究センター特別研究員)