月刊 経団連2020年11月号
特集 ESG投資の進化と企業と投資家による建設的対話の促進
巻頭言
サステナブルな未来のために
withコロナが常態化して早くも半年が過ぎた。これだけ海外出張のない期間を過ごすことは、会社生活で初めての経験であり、回遊魚がいけすに閉じ込められたのごとき感も強い。この間にも、自国第一主義の拡大、米中覇権争いの深刻化、経済活動低迷の長期化への懸念など、グローバルに不確実性が増している。
特集
ESG投資の進化と企業と投資家による建設的対話の促進
企業のコロナ禍への対応、ウィズ・ポストコロナ時代の成長の両面から、投資家の間では、デジタルトランスフォーメーション(DX)やサステナビリティに取り組む企業への関心が高まっている。この機運を捉え、Society 5.0 for SDGs実現を金融面から促すべく、「ESG投資の進化(課題解決イノベーションを後押しするポジティブな投資手法に進化させる)」を図っていかなければならない。また、そのためには、企業と投資家による建設的対話の促進(エンゲージメント)も欠かせない。本座談会では、ウィズ・ポストコロナ時代のESG投資の進化の在り方、建設的な対話促進の課題、今後の企業と投資家、ステークホルダーとの連携・協働への期待などについて議論する。
座談会:ESG投資の進化と企業と投資家による建設的対話の促進
- 太田 純 (経団連副会長、金融・資本市場委員長/三井住友フィナンシャルグループ社長)
- 中川 順子 (経団連ダイバーシティ推進委員長/野村アセットマネジメント社長)
- 宮園 雅敬 (年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)理事長)
- 佐々木 啓吾 (経団連金融・資本市場委員会建設的対話促進WG座長/住友化学常務執行役員)
- ■しかく コロナ禍でのSociety5.0 実現の重要性
- DXが一気に加速、コロナ前と同じスピードでは対応が後手に
- 超長期投資家として、コロナ禍のトレンドをしっかりと見極めたい
- 変化への対応力で企業格差
- Society 5.0の実現に向けてデジタル革新のスピードが必要
- ■しかく ESG投資の進化と今後の課題
- ESG投資の進化に向け、学術界、投資家、経済界が集結
- ESG投資とSociety 5.0で課題解決イノベーション・エコシステムの形成へ
- インパクト投資が2017年から5倍に急成長
- ESG説明会も増え、情報開示の在り方も多様に
- Society 5.0に対する理解浸透が課題
- ■しかく 企業と投資家との建設的対話
- 非財務情報の開示・評価手法の基準作りや、議決権行使助言会社の在り方に課題
- Society 5.0推進企業が評価される情報開示基準の国際ルール形成を
- 財務にインパクトが大きいマテリアルなESG情報が重要
- 企業活動で生じる社会へのインパクトを提示する
- ■しかく 今後の企業・投資家への期待、ステークホルダーとの連携・協働
- ESG投資の金融エコシステムをどう動かすか
- ステークホルダー・キャピタリズムの流れを止めてはいけない
- 「地球は子孫から借りているもの」
Society 5.0に向けた課題解決イノベーションへの投資促進
―経団連・東京大学・GPIF共同研究のフォローアップ
日比野 隆司(経団連審議員会副議長、金融・資本市場委員長/大和証券グループ本社会長)
- 共同研究報告書の背景・意義
- Society 5.0の経済効果
- Society 5.0の情報開示の方向性
- アクションプランとステークホルダー連携による影響
- Society 5.0が未来でなくなる日
企業と投資家による建設的対話の促進に向けて
─真に実効ある対話に向けて企業・投資家・政府に求められる取り組み
http://www.keidanren.or.jp/policy/2020/075.html
太田 純(経団連副会長、金融・資本市場委員長/三井住友フィナンシャルグループ社長)
日比野 隆司(経団連審議員会副議長、金融・資本市場委員長/大和証券グループ本社会長)
林田 英治(経団連金融・資本市場委員長/JFEホールディングス特別顧問)
- 企業と投資家による「対話」の着実な進展
- 建設的対話の促進に求められる五つの取り組み
持続可能な社会へ変革を図る投融資
竹ケ原 啓介(日本政策投資銀行執行役員産業調査本部副本部長)
- ESG投資の主流化と対話の深化
- コロナ禍の影響と展望
- DBJの取り組み
第一生命におけるESG投資の進化
稲垣 精二(第一生命保険社長)
- 生命保険は現世代と将来世代の橋渡し
- 全資産36兆円でのESG投資を目指す
- 誰ひとりとして取り残さないためのエンゲージメント
- Society 5.0実現に向けたリスクマネー供給によるイノベーション創出
サステナブルファイナンスを巡る欧州の動向
木下 由香子(在欧日系ビジネス協議会(JBCE)CSR委員会委員長/日立製作所・欧州コーポレート事務所シニアマネージャー)
- サステナブルファイナンス戦略とEUタクソノミー議論が活発化
- EUタクソノミーの日本企業への影響は何か
- 日本でも積極的な議論を
気候変動関連情報開示の動向
藤村 武宏(気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)メンバー)/三菱商事サステナビリティ・CSR部長
- 経営課題としての気候変動問題
- 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言
- 気候変動関連情報開示の法制化
ビジネスと人権がESG投資に与える影響と機会
名越 正貴(EY新日本気候変動・サステナビリティサービス シニアマネージャー)
- ESG投資において人権が注目される背景
- 国際的な人権ルールから見た日本の課題
- 人権への対応を価値創造の源泉に
新型コロナ後の企業と投資家のエンゲージメントのあり方
三瓶 裕喜(フィデリティ投信ヘッドオブエンゲージメント)
- コロナ前後で変わらないこと
- エンゲージメントの重要要素
- ESG協働エンゲージメント
- ESG格付け
- マテリアリティの特定
- 「正解のない決断」の克服
ESG投資の課題とその解決策としての国際機関活用
本田 桂子(コロンビア大学国際関係公共政策大学院客員教授)
- 日本は世界有数のESG投資高成長国
- ESG投資で目指すのは社会貢献だけでなく長期的なリターン向上
- ESGの課題とその解決策としての国際機関の活用
Society 5.0 for SDGs
―創造する未来の経済像と課題
野村 浩二(経団連21世紀政策研究所研究主幹/慶應義塾大学産業研究所教授)
- 技術・企業・経済の交差
- 創造する未来の経済像
- 低収益からの脱却
スチュワードシップ・コード再改訂の概要
―サステナビリティに関する改訂を中心に
古澤 知之(金融庁企画市場局長)
- 本再改訂の概要
─サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)に関する改訂 - その他の主な改訂点
一般記事
9月24日、東京・大手町の経団連会館で、小泉進次郎環境大臣、経団連の杉森務副会長をはじめ環 境省・経団連の幹部が会談し、脱炭素社会実現に向けて連携強化を図ることで合意、その内容を公表した。
両者は「チャレンジ・ゼロ」の推進や、わが国企業の脱炭素経営の推進、2030年温暖化対策目標の着実な達成、サステナブル・ファイナンス/ ESG金融の推進等に取り組んでいく。そのために、まずは定期的な意見交換等を行うこととしている。
【提言】
Society 5.0時代のサプライチェーン
―商流・金流のデジタル化推進に向けて
http://www.keidanren.or.jp/policy/2020/079.html
立石 文雄(経団連サプライチェーン委員長/オムロン会長)
山内 雅喜(経団連サプライチェーン委員長/ヤマトホールディングス会長)
- サプライチェーンの現在と未来
- デジタル化による個社の業務プロセスの見直し
- 企業間取引の効率化・見える化
- 製造現場のデータ共有・活用
〜さらなる検討課題
芸術文化の灯を守る
―新国立劇場の公演継続への決意
尾﨑 元規(新国立劇場運営財団理事長)
- 我が国現代舞台芸術を世界へ発信
- 未曽有の危機に直面
- 公演活動継続への決意