月刊 経団連2020年2月号
特集 経済構造改革に向けて
巻頭言
今年は「決めて、動く」年に
「令和」改元という時代の節目となった昨年、日本では国際的なイベントが数多く催された。 6月の大阪におけるG20首脳会議のほか、北海道倶知安町(ニセコ)にて開催されたG20観光大臣会合を含む各大臣会合、TICAD7(第7回アフリカ開発会議)など、外交イベントがめじろ押しであった。
特集
経済構造改革に向けて
若者や将来世代も含めたすべての世代が安心できる明るい未来をつくるためには、成長戦略・財政健全化・全世代型社会保障の構築を一体的に図らなければならない。こうした観点から、経団連は、2019年度、新たに「経済構造改革会議」を設置し、関係委員会の連携のもと、検討を進めてきた。2019年11月には、「経済成長・財政・社会保障の一体改革による安心の確保に向けて─経済構造改革に関する提言」を取りまとめ、政府・与党をはじめとする関係方面にその実現を働きかけている。
政府の経済財政諮問会議や全世代型社会保障検討会議は、夏の「骨太の方針2020」の取りまとめに向け、経済構造改革に関する検討を行っている。本座談会では、こうした状況を踏まえつつ、経済構造改革に向けた今後の課題について、国民的な理解の醸成を図る観点も念頭に置いて議論を行った。
座談会:経済構造改革に向けて
- 永井浩二 (経団連経済財政委員長/野村ホールディングス社長)
- 西澤敬二 (経団連社会保障委員長/損害保険ジャパン日本興亜社長)
- 翁 百合 (日本総合研究所理事長)
- 宮島香澄 (日本テレビ放送網報道局解説委員)
- ■しかく 日本経済の現状ならびに財政・社会保障を取り巻く状況
- さまざまな環境変化への対応が必要
- 金融政策の副作用でリスクマネーが市場に流れにくい
- 社会保障給付費の増大が大きな課題
- 社会保障の持続可能性に不安を持っている
- ■しかく 経済構造改革の方向性
- Society 5.0の社会実装を通じた生産性の向上を
- 社会保障制度の持続可能性を確保し次世代に引き継ぐ
- 予防や健康寿命の延伸に関する取り組みが重要
- 多様な人材の活躍がポイント
- ■しかく 国民の理解醸成に向けた方策
- 国民に自分ごととして実感が伝わるように報道する
- 受益と負担の明確化が国民理解には重要
- ■しかく 経済構造改革を進めるにあたって企業・国民が自ら取り組むべきこと
- 蓄積したデータをオープンにし介護産業全体の生産性向上に貢献したい
- 若い世代の資産形成を促す仕組みが必要
- 財政や社会保障の現状を国民一人ひとりが理解し認識を共有する必要がある
- 企業経営者は社会の変化を認識すべき、個人は自助の大切さを認識すべき
経済成長・財政・社会保障の一体改革による安心の確保に向けて
―経済構造改革に関する提言
http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/098.html
(経済政策本部)
- Society 5.0を柱とする成長戦略の推進
- 財政健全化の実現
- 社会保障制度(医療・介護)の持続可能性の確保
- 多様な人材が活躍できる社会づくり
日本経済の現状と今後の課題
熊谷亮丸(大和総研常務取締役チーフエコノミスト)
- 日本経済の現状
- 日本経済の今後の課題
米国経済の見通し
―米中対立の今後の展開
今村 卓(丸紅執行役員経済研究所長)
- 限定的な米中合意
- 強まる米中対立
- 米景気の拡大は続くが長期停滞の様相へ
わが国財政の現状と今後の改革方向
井堀利宏(政策研究大学院大学特別教授)
- 消費税増税意図の不透明化と厳しい財政再建の道筋
- 今後の消費税増税時の改善点
- 社会保障制度改革の2つの重要な視点
次世代ヘルスケア・システムの構築
―データ利活用に向けた基盤整備の展開状況
森田 朗(津田塾大学総合政策学部教授/21世紀政策研究所研究主幹)
- 次世代のデータヘルスが目指すもの
- データヘルス改革に向けた基盤整備の状況
- データヘルス改革の3つの課題
健康保険組合の現状と制度改革への期待
大塚陸毅(健康保険組合連合会会長)
- 「保険料率30%超」時代の到来
〜「2022年危機」回避に向けた重点政策 - 給付と負担の世代間のアンバランス是正が急務
- 現役世代の負担軽減のため公費拡大を
- 避けて通れない保険給付範囲の議論
IoT/AIを活用した「スマートエイジングケアプロジェクト」
山岡 勝(パナソニック スマートエイジングケアプロジェクト総括担当・プロジェクトリーダー)
- 介護業務支援のためのデータプラットフォーム構築
- テクノロジー活用を前提とした業務標準
- 自立支援アウトカムへのデータ活用
- 在宅介護におけるQOL向上を目指して
介護現場に真のデジタルトランスフォーメーションを実現するために
―現場での「気づき」を促し、オペレーション改革を図るプラットフォームの開発と全社導入
祝田 健(ベネッセスタイルケア執行役員サービス推進本部長)
- 介護現場におけるデジタル化の現状
- ベネッセスタイルケアの理念とデジタル化
- サーナビの開発と全社導入
- 到来するDX時代に向けて
一般記事
【提言】
主体的・戦略的な宇宙の活用推進のために
http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/112.html
下村節宏(経団連宇宙開発利用推進委員長/三菱電機特別顧問)
- 宇宙の重要性の飛躍的高まり
- 新しい「時代」の政府の役割
- 官民のシナジー
イスラエルにスタートアップ・デジタルヘルスの調査ミッションを派遣
―エコシステムや最新技術の動向を視察
篠原弘道(経団連副会長、デジタルエコノミー推進委員長/日本電信電話会長)
- スタートアップ・エコシステム
〜民間インキュベーターも大きな役割 - 日本との連携への期待
ベトナムミッションを派遣
―ベトナムとの経済関係のさらなる拡大・深化に向けて
市川秀夫(経団連日本ベトナム経済委員長/昭和電工会長)
藤本昌義(経団連日本ベトナム経済委員長/双日社長)
兵頭誠之(経団連日本ベトナム経済委員長/住友商事社長)
- 日越共同イニシアティブ第7フェーズの成果を確認
- フック首相はじめベトナム政府首脳と懇談
ウクライナとの貿易・投資の拡大とビジネス環境の改善に向けて
―第8回日本ウクライナ経済合同会議を開催
朝田照男(経団連日本NIS経済委員長/丸紅常任顧問)
- 構造改革やビジネス環境改善に向けた取り組みは着実に進展
- 有望な産業分野における二国間協力のあり方を模索
- PDCAサイクルを通じて二国間貿易・投資の拡大とビジネス環境の改善を
日本・西側諸国・中国:日本の未来と世界における役割
―ディッチリー財団主催国際会議報告
清水 章(経団連ヨーロッパ地域委員会企画部会長/日立製作所業務役員常務)
- 日本の役目を真剣に探っていくと...
- 日本の未来の全体像とは
地域活性化の本質
―天草の取り組みから
中村五木(天草市長)
- 天草市〜美しい海に囲まれた島々
- 多くの魅力を活かし均衡ある発展が課題
- 経済活動の活性化と豊かな生活の実現に向けて
- 活力湧き出るまちづくりに向けて
連載
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多様性が輝くユニバーサル社会へ (7)最終回
―共創・連携・価値創造への経済界の取り組み
障がいを価値へと変える「バリアバリュー」
(ミライロ) -
あの時、あの言葉
本質的思考
澤田道隆(花王社長) -
Essay「時の調べ」
「不寛容社会」に思う
浅野妙子(脚本家)