月刊 経団連2019年12月号
特集 都市のデジタルトランスフォーメーション 〜スマートシティの現状と展望
巻頭言
観光の力で地方を元気に!
厚生労働省の人口動態統計によると、2019年の出生数は90万人を割り込む公算が大きいという。団塊の世代の出生数は270万人弱であり、実に3分の1の水準となった。人口減少は避けられない現実であり、特に地方においては喫緊の課題である。GDPの7割を占める地域経済を活性化することは、日本全体の持続的成長に絶対に必要な条件である。
特集
都市のデジタルトランスフォーメーション 〜スマートシティの現状と展望
近年、IoTやAIをはじめとするデジタル技術の発達を背景に、分野横断的に都市活動全体の最適化を図る「スマートシティ」の構築に向けた取り組みが進展している。こうした都市はまさしくSociety 5.0のモデルとして、人々が新技術・データの利活用によるQOLの向上を体感できる場になると期待される。スマートシティの実現に向けては、住民、行政、企業など多様なステークホルダーが密に連携を取りながら、都市におけるデータ利活用の拡大や新技術の社会実装を進めていかなければならない。各地で進む最先端の取り組みを紹介するとともに、Society 5.0時代にふさわしい都市の実現に向けて、政府や企業が取り組むべき課題や今後の展望について議論する。
座談会:都市のデジタルトランスフォーメーション
- 菰田正信 (経団連審議員会副議長、都市・住宅政策委員長/三井不動産社長)
- 本間 洋 (NTTデータ社長)
- 栗田卓也 (国土交通審議官)
- 出口 敦 (東京大学大学院新領域創成科学研究科教授)
- ■しかく Society 5.0時代の都市の姿
- 第2世代スマートシティの潮流
〜スマートグリッドから社会課題解決型へ - デジタル革新とデータ活用で社会課題を解決し価値創造を実現する
- スマートシティ構想を通じたSociety 5.0の実現を目指す
- デジタルツインコンピューティングで潜在的課題を抽出し解決
- ■しかく スマートシティ推進に向けた取り組み
- その都市特有の課題をさまざまなデータ連携で解決
- 環境共生、健康長寿、新産業創造をテーマとした柏の葉スマートシティのまちづくり
- 居住からの変革
「ハビタット・イノベーション」によるSociety 5.0 - 「国土交通データプラットフォーム」の構築
- ■しかく スマートシティの推進に向けた課題と今後の展望
- スマートシティのビジョンを描くこと
- 2030年にはデジタル人材が55万人不足する
- スマートシティは手段でその先に社会的目的がある
- 今の成果を着実に社会実装に結び付けていかなければならない
スマートシティの潮流
―第4次産業革命期のまちづくり
東 博暢(日本総合研究所プリンシパル)
- 必然だった各国のスマートシティ政策の推進
- イノベーションエコシステムとしての「スマートシティ」
- バイ・デザインの発想を
産業競争力懇談会(COCN)による「デジタルスマートシティの構築」活動
望月康則(産業競争力懇談会(COCN)「デジタルスマートシティの構築」サブリーダー/NECフェロー)
- 7つの目標例、7つの課題領域を提示
- スマートシティの実装の加速化に向けて
- スマートシティ実現の環境整備 〜5つの検討課題
スマートシティ推進に向けた取り組み
吉川和身(内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)付参事官(統合戦略担当)付企画官)
- 産学官民の連携の場の整備
- データ連携の円滑化に向けたアーキテクチャの構築
デンマークで進展するスマートシティ
中島健祐(デンマーク大使館投資部部門長)
- デンマークのスマートシティ
- ビジョンの策定と課題認識
- デジタル化とデータの利活用
- PoCと社会実装
- スマートシティと社会システムに含まれた思想
スマートシティ会津若松の実現
中村彰二朗(アクセンチュア・イノベーションセンター福島センター長)
- 8領域横断のデータ連携基盤を整備
- 地域の産学官が連携した「地域主導型」組織でプロジェクト推進
- 生活を便利にするデータ活用で市民参加率を向上させる「会津若松+」
- デジタルシフトによる社会課題の解決
大手町・丸の内・有楽町地区スマートシティ推進コンソーシアムの取り組み
重松眞理子(大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会ガイドライン部会長/
三菱地所開発推進部ユニットリーダー都市計画室長)
- 大手町・丸の内・有楽町地区のまちづくり
- 目指すべき将来像とそれを実現するスマートシティのあり方
- 具体的な取り組みについて
- 今後の取り組み
一般記事
連邦議員・行政府と通商政策を中心に意見交換
―ワシントンDCにミッション派遣
早川 茂(経団連副会長、アメリカ委員長/トヨタ自動車副会長)
永野 毅(経団連アメリカ委員長/東京海上ホールディングス会長)
- 通商拡大法232条に基づく自動車等の輸入制限の回避を要請
- 中国の構造的問題には多国間の取り組みが必要
- 米国における機微技術管理強化に関する懸念を表明
【提言】
海外直接投資の推進に向け、質量両面で投資関連協定の充実を
―投資関連協定に関する提言
http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/082.html
早川 茂(経団連副会長、通商政策委員長/トヨタ自動車副会長)
中村邦晴(経団連副会長、通商政策委員長/住友商事会長)
- わが国にとっての投資関連協定の重要性
- 投資関連協定に盛り込むべき内容
- 投資関連協定を締結すべき相手国・地域
【提言】
Society 5.0の実現に向けた個人データ保護と活用のあり方
http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/083.html
篠原弘道(経団連副会長、デジタルエコノミー推進委員長/日本電信電話会長)
井阪隆一(経団連審議員会副議長、デジタルエコノミー推進委員長/セブン&アイ・ホールディングス社長)
- 個人データの保護・活用をめぐる状況
- データ流通・活用基盤の構築
- 個人情報保護法制のあり方
- デジタル・プラットフォーム事業者等に対する規律のあり方
- バランスの取れた国際制度の構築
- 産業界の取り組み
〜「個人データ適正利用経営宣言」の策定
Society 5.0実現に向けて廃棄物をエネルギーに
―地産地消型(自立分散型)エネルギーセンター構想によるSDGsへの貢献
加藤幸男(産業廃棄物処理事業振興財団理事長)
- 財団の歩み
- 具体化の検討が4地点でスタート
- 循環型社会の実現に向けて
骨髄移植の円滑な橋渡し
―ドナーが提供しやすい環境整備に関するご協力のお願い
小寺良尚(日本骨髄バンク理事長)
- 骨髄・末梢血幹細胞移植
- 約55%の患者しか移植できない現状
- ドナーが提供しやすい環境整備に向け職場でも協力を
連載
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多様性が輝くユニバーサル社会へ (5)
―共創・連携・価値創造への経済界の取り組み
Society 5.0が実現するユニバーサルデザイン・シティ
〜日立がめざす、データ活用による市民参加型まちづくり
(日立製作所) -
経営者のひととき
兎追ひし彼の山
宮本昌志(協和キリン社長) -
Essay「時の調べ」
最晩年の足利尊氏
亀田俊和(国立台湾大学日本語文学系助理教授)