月刊 経団連2019年11月号
特集 新たな局面を迎えるSDGs達成と企業の取り組み
巻頭言
需要サイドからの地域経済活性化
地方が元気でない限り、日本は健全な国家たり得ない。各地を訪問しながら、地方の衰退は社会全体の健全さの喪失につながることを痛感してきた。 手が行き届いていない森林を見るたびに、国土の7割を占める森林資源の再生を地方創生の1つの柱にできないか考えてきた。
特集
新たな局面を迎えるSDGs達成と企業の取り組み
SDGsの推進にあたっては、2015年の採択以来、世界各地で普及・啓発が図られている。今年9月には各国の取り組みの進捗状況を政府首脳レベルでレビューするサミットが国連で初めて開催されたほか、わが国でも年末にSDGs実施指針の改定および「ビジネスと人権に関する国別行動計画」の策定を控えるなど、いよいよ具体的なアクションを本格化させる段階を迎えている。
一方、SDGsの達成にはイノベーションの拡大が不可欠であり、その担い手である企業の貢献がますます重要になってきている。また、ファイナンスの面でもSDGs達成には年間2兆5000億ドルもの資金不足が指摘されており、民間投資に高い期待が寄せられている。
こうしたなか、経団連では「Society 5.0 for SDGs」の実現を目指し、国連機関や民間のSDGs推進組織等との連携強化を通じて、日本企業によるSDGsへの貢献に関する発信に努めるとともに、より具体的なアクションを後押しするための環境整備に取り組んでいる。そこで、本座談会では、新たな段階を迎えつつあるSDGsの現状を踏まえ、あらためて日本企業によるSDGsへの取り組みの加速と実践の方途や経団連の役割について議論を深める。
座談会:実践段階を迎えたSDGsと企業の取り組み
- 渡邉光一郎 (経団連副会長/第一生命ホールディングス会長)
- 中山讓治 (経団連企業行動・SDGs委員長/第一三共会長)
- 大野 泉 (国際協力機構(JICA)研究所長)
- 加藤敬太 (司会:経団連企業行動・SDGs委員会企画部会長/積水化学工業代表取締役専務執行役員)
- ■しかく SDGs達成に向けた取り組みの現状
- SDGsを"自分ごと"として取り組む熱意
- 社会課題の解決への取り組みが企業の持続的成長につながる
- 先進事例の積極発信で産業界全体に波及を
- ■しかく SDGsの経営への統合
- QOL向上という総合的な付加価値を届けるために
- 医薬品産業の課題は研究開発の投資リスクと的確な価値評価
- ■しかく 規模拡大のための「資金」と「イノベーション」
- ESG投資を通じて産学連携や資金提供の課題解決に貢献
- 創薬をめぐるグローバルなエコシステムへの期待
- 発想の転換
〜企業連携のもとSDGsが目指す世界の実現への貢献 - ■しかく インパクト評価のあり方をめぐって
- 評価方法や指標の確立を目指す動き
- 環境貢献度と収益インパクトを明確に打ち出すことが重要
- 日本企業による非財務価値の加味が大きな価値創造を達成する
- 日本は世界全体の流れを変える先導役に
- 政府・企業のグローバルな連携がより総合的な貢献につながる
- 日本の「三方よし」精神から「地球よし」「未来よし」へ
日本型SDGsモデルの発信
―世界におけるSDGs達成をけん引する日本
塚田玉樹(外務省地球規模課題審議官)
- 日本国内における広がり
- 日本政府の取り組み
- 日本の「SDGsモデル」を世界へ
求められるSDGsへのアクション加速
―経団連SDGsミッションを派遣
二宮雅也(経団連企業行動・SDGs委員長/損害保険ジャパン日本興亜会長)
- HLPFでSociety 5.0 for SDGsを発信
- 関係機関と精力的に意見交換
- 関係機関との対話から得られた5つの示唆
SDGs達成を加速化するファイナンスとイノベーション
アヒム・シュタイナー(国連開発計画(UNDP)総裁)
- Society 5.0への期待
- SDGs達成に向けて必要なイノベーティブ・ファイナンス
- SDGファイナンスの加速化に向けたUNDPの挑戦
- SDGs達成を加速化するUNDP内の改革
企業との連携を通じたSDGsの達成
―日本企業への期待
マフムド・モヒルディン(世界銀行グループ上級副総裁
2030開発アジェンダ・国連関係・パートナーシップ担当)
- 民間セクターとの連携によるSDGsの達成を
- SDGs達成のためのデータイノベーション
- 「Society 5.0 for SDGs」の実現に向けてパートナーシップの強化を
SDGsで「いのち輝く神奈川」を実現
黒岩祐治(神奈川県知事)
- 求められるSDGsの「自分ごと化」
- 多様なステークホルダーとのパートナーシップの展開
- 「SDGs日本モデル宣言」を世界に向けて発信
×ばつKANTO 地域SDGsコンソーシアム」の取り組み
角野然生(経済産業省関東経済産業局長)
阿部守一(長野県知事)
- 地域中小企業の稼ぐ力の向上の「道しるべ」として
〜関東経済産業局の取り組み - 地域SDGsコンソーシアムと支援モデルの構築
- 長野県のSDGs推進の取り組み
- 長野県SDGs推進企業登録制度の創設
- 登録の状況
- ビジネスの側面からの支援
日本証券業協会のSDGs達成に向けた取り組み
鈴木茂晴(日本証券業協会会長)
- 証券業界としてSDGsに取り組む意義
- ファンディング
〜貧困、飢餓をなくし地球環境を守る取り組み - 働き方改革と女性活躍支援を図る取り組み
- 子ども支援
〜社会的弱者への教育支援に関する取り組み
一般記事
B20東京サミット等を通じて民間経済外交を積極的に展開
―B20議長団体の任期を終えるにあたって
隅 修三(経団連副会長/東京海上日動火災保険相談役)
- B20共同提言の取りまとめ
- 共同提言の実現に向けた働きかけ
- 議長団体としての経験を今後に活かすため
【提言】
雇用保険制度見直しに関する提言
―健全な財政運営の確保と構造改革の推進を求める
http://www.keidanren.or.jp/policy/2019/073.html
岡本 毅(経団連副会長、雇用政策委員長/東京ガス相談役)
淡輪 敏(経団連雇用政策委員長/三井化学社長)
- 健全な財政運営と構造改革への対応
- 保険料の急激な引き上げは避けよ
- さまざまなニーズに応じた見直しが必要
アフリカビジネス拡大に向け官民連携を推進
―第7回アフリカ開発会議(TICAD7)
小澤 哲(経団連サブサハラ地域委員長/豊田通商シニアエグゼクティブアドバイザー)
長坂勝雄(経団連サブサハラ地域委員長/千代田化工建設相談役)
- TICADのねらい
- アフリカの発展と民間の役割
- 次回TICADへ向けて
連載
-
多様性が輝くユニバーサル社会へ (4)
―共創・連携・価値創造への経済界の取り組み
旅のユニバーサルデザイン化
(SPIあ・える倶楽部) -
あの時、あの言葉
君のことを忘れたくないから名刺をくれないか
出雲 充(ユーグレナ社長) -
Essay「時の調べ」
1900年のオルゴールと2019年の草たち
鈴木 純(植物観察家)