月刊 経団連2016年1月号
特集 正念場にある日本経済と今後の成長戦略のあり方
巻頭言
経済再生を確実に実現する
経団連は、昨年1月に、2030年までに目指すべき国家像を描いた将来ビジョンを公表した。アベノミクスの「新三本の矢」が目指す目標は、このビジョンで掲げた目標と軌を一にするものであり、その実現に向け、経団連としても最大限協力をしていく所存である。
特集
正念場にある日本経済と今後の成長戦略のあり方
デフレ脱却と経済再生に向け正念場を迎えるなか、安倍政権は、アベノミクスの第二ステージとして「一億総活躍社会」の実現を目指し「新しい三本の矢」を打ち出した。経済最優先のもと「第一の矢」では「強い経済」の構築によるGDP600兆円を達成するという目標が掲げられている。2016年を展望し、日本経済の先行きを見通しつつ、持続的成長の実現に向け、企業、政府に求められる役割など、今後の成長戦略のあり方について議論する。
座談会:正念場にある日本経済と今後の成長戦略のあり方
- 石原邦夫 (経団連副会長・経済財政委員長/東京海上日動火災保険相談役)
- 高橋恭平 (経団連審議員会副議長・資源エネルギー対策委員長/昭和電工会長)
- 中村邦晴 (経団連通商政策委員長/住友商事社長)
- 中空麻奈 (BNPパリバ証券投資調査本部長)
石原邦夫 (経団連副会長・経済財政委員長/東京海上日動火災保険相談役)
2015年は、アベノミクス第2ステージがスタートするとともに、財政健全化の第1ステージである赤字半減目標が達成見込みとなるなど、経済・財政の好循環の定着・拡大に向かう日本が転換点を迎えた年であった。経済界としては引き続き、賃上げや積極的な投資拡大を通じて、経済の好循環に貢献していきたい。2016年は、GDP600兆円の達成に向けた足固めの重要な年となる。「新3本の矢」のなかでも、子育て支援(第2の矢)と社会保障(第3の矢)は、中長期的な成長期待を社会に根付かせるとともに健全な財政基盤を築くうえで極めて重要である。
高橋恭平 (経団連審議員会副議長・資源エネルギー対策委員長/昭和電工会長)
2014年から2015年にかけての企業業績は好調であったが、これはリーマンショック以降各社が行ってきた徹底したコストダウンやスリム化に、アベノミクスによる経済環境の好転が加わった結果である。需要そのものが大きく好転したとはいえない。今が日本経済再生に向けた正念場である。日本は「環境先進国」であり、素材産業としては、地球規模の課題への解決策を提供する「ソリューションプロバイダー」を目指していく。政府には規制緩和や税制・財政支援など事業環境の整備を期待する。
中村邦晴 (経団連通商政策委員長/住友商事社長)
2015年は、世界経済の変調を強く感じた年であった。一つは中国の景気減速であり、日本をはじめ世界各国の貿易量が伸び悩んだ。エネルギー面では、国際原油市場で米国のプレゼンスが大きくなり、中東の地政学的リスクがあっても、原油価格が安定するようになった。こうした激しい変化にどう対応していくか、企業の力量が問われている。TPP交渉が大筋合意に至ったことは、日本企業にとって追い風であり、大きなチャンスである。貿易・投資の自由化が進むなか、政府には、企業の「攻めの経営」を引き出す規制改革や税制改革が求められる。
中空麻奈 (BNPパリバ証券投資調査本部長)
日本国内の景気は、良い点と悪い点が混在し、まだら模様である。一方、海外の景気は、日本以上に弱い。とりわけ世界経済をけん引してきた中国の景気低迷が懸念される。こうした状況から、2016年の日本経済は足踏み状態が続くとみている。日本企業の技術やサービスに対する海外投資家の信頼は厚いものの、ガバナンスが不得手であるというイメージを払拭するため、説明性・透明性を高める努力が必要だ。日本政府には、規制緩和と財政再建への強いコミットメントが求められる。
阿部泰久 (司会:経団連常務理事)
- ●くろまる内外経済を展望する
- 日本経済は足踏み状態が続く
- アベノミクスの第2ステージが本格化
- これからが日本経済再生に向けた正念場
- TPP、東京オリ・パラ、アベノミクス第2ステージに期待
- ●くろまる成長の主役である企業・経営者に求められる役割
- ソリューションプロバイダーとしての素材産業を目指す
- 激しい変化に対応し、新たな価値・機能を提供する
- 賃上げと投資拡大を通じて、経済の好循環の拡大に貢献し続ける
- 実体経済を金融マーケットに先行させなくてはいけない
- ●くろまる政府に求められる環境整備
- 子育て支援(第2の矢)と社会保障(第3の矢)が重要
- TPPの活用促進に向けて
- 「環境先進国」を目指すための政策支援を
2016年「端境期シナリオ」の雲間から見える回復の光
高田 創 (みずほ総合研究所常務執行役員チーフエコノミスト)
- 期待外れだった2015年の世界
- 「端境期」が続く2016年の世界
- 日本の2016年はアベノミクス第二局面、着実な回復に向けた第一歩
知識資本投資と雇用の多様化が日本経済の底力を引き上げる
鈴木 準 (大和総研主席研究員)
- 多様性は生産性向上のエンジン
- 健康産業市場の拡大を
デフレ脱却への道筋
渡辺 努 (東京大学大学院経済学研究科教授)
- アベノミクス第一の矢
- 東大指数が示す物価の姿
- 今なお残る価格据え置き企業
- デフレ脱却に向けノルムの転換を
日本版「フリー・キャッシュ・フロー問題」の解決を
櫻川昌哉 (慶應義塾大学経済学部教授)
- 存続を目的に保守化する日本企業
- 内部留保は誰に帰属するのか
民間設備投資の動向をどう読むか
古宮正章 (日本政策投資銀行設備投資研究所長)
- 基幹となる生産要素の国内での再整備
- ユーザーの変化に対応した新たなサービスの創出
- 成長に不可欠な投資
〜人材の育成も肝要に
一般記事
日韓国交正常化50周年を機に中長期的な日韓関係の発展めぐり議論
〜韓国全経連首脳との懇談会および日韓国交正常化50周年記念シンポジウム
榊原定征 (経団連会長)
- 持続的成長のカギはイノベーションとグローバリゼーション
〜全経連首脳と懇談 - 未来志向で重層的な交流を
〜日韓国交正常化50周年記念シンポジウム
【提言】
マイナンバーを社会基盤とするデジタル社会の推進に向けた提言
〜データ利活用政策の最大限の展開を
http://www.keidanren.or.jp/policy/2015/106.html
内山田竹志 (経団連副会長・情報通信委員長/トヨタ自動車会長)
中西宏明 (経団連副会長・情報通信委員長/日立製作所会長)
近藤史朗 (経団連情報通信委員長/リコー会長)
- マイナンバー制度の民間利活用
- 紙から電子へ
- パーソナルデータの利活用促進
- サイバーセキュリティ対策の強化
- 社会実装の高度化を促す施策
第23回日本トルコ合同経済委員会を開催
〜両国の絆を象徴する年に経済連携を促進する
釡 和明 (経団連日本トルコ経済委員長/IHI会長)
山西健一郎 (経団連日本トルコ経済委員長/三菱電機会長)
- 二国間経済関係のさらなる発展に向けた基盤整備
- 互恵的関係の構築や主要な産業分野におけるビジネス機会
B20サミットに参加して
〜議長国トルコが掲げた三つの「I」
山西健一郎 (経団連日本トルコ経済委員長/三菱電機会長)
- 包摂性:途上国、中小企業、若者、女性、そして...
- 投資が成長と雇用を生むためには
- G20サミットのコミュニケには反映。課題は実行
日欧経済交流のさらなる拡大に向けて
〜ヨーロッパ地域委員会ミッションがベネルクス三国、アイルランド、北アイルランドを訪問
佐藤義雄 (経団連ヨーロッパ地域委員会委員長/住友生命保険会長)
石塚博昭 (経団連ヨーロッパ地域委員会委員長/三菱ケミカルホールディングス副会長)
- ルクセンブルク
- ベルギー
- オランダ
- アイルランド
- 北アイルランド
女性の活躍で社会が変わる
女性エグゼクティブからのメッセージ
共感、協働、協力を重視し横のつながりを
テレシタ・シー・コソン (SMインベストメンツ副会長)
多様な人材を受け入れる職場がイノベーションの礎
インガ・ビール (ロイズCEO)
ブラジルの女性たち
青木智栄子 (ブルーツリー・ホテルズ&リゾーツ会長兼最高経営責任者(CEO))
2015夏のリコチャレ
アズビル、JFEスチール、大成建設、中電工、東光高岳、NTT情報ネットワーク総合研究所、ヒューリック、日立化成、前田建設工業、三井住友建設
連載
-
あの時、あの言葉
起承転結
清原 晃(JUKI社長) -
Essay「時の調べ」
世の中は、お金で買えないものばかり。
紫舟(書家/アーティスト) -
アラバマ州バーミングハムで考えた!
山越厚志(経団連米国事務所長)