月刊 経団連2015年8月号
特集 誰もが活き活き働ける環境づくり
巻頭言
食のグローバリゼーション
今年、5月から10月末まで、「地球に食料を、生命にエネルギーを」をテーマに、ミラノ国際博覧会が開催されている。これを機会に、日常あまり気にかけることのない「食の意味」、そして「日本の食の良さ」について考えたい。
特集
誰もが活き活き働ける環境づくり
労働力人口の急激な減少が見込まれるなかで、女性、高齢者、若者、外国人、高度専門職など、誰もが活き活きと働き、持てる能力等を最大限発揮できる環境を整備することにより、労働生産性を高めていくことが求められている。また、働く側の意識も多様化し、固定的な就労形態や、画一的なマネジメントでは対応することが難しくなってきている。働き方の選択肢の拡大、メリハリのある働き方の推進、社員の意識改革を図っていくことなど、「働き方のイノベーション」について議論する。
座談会:誰もが活き活き働ける環境づくり
- 鵜浦博夫 (経団連副会長・労働法規委員長/日本電信電話社長)
- 矢島洋子 (三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員)
- 遠藤信博 (日本電気社長)
- 鶴光太郎 (慶應義塾大学大学院商学研究科教授)
鵜浦博夫 (経団連副会長・労働法規委員長/日本電信電話社長)
産業構造、社会構造が変化するなか、働き方の変容が求められている。日本社会、日本経済が持続的に発展していくためには、「グローバル化に対応できる人材が育ち、活躍できる環境づくり」と「日本社会の維持のために、老若男女問わず多様な人材が多様な働き方ができる環境づくり」の2つの観点を踏まえて、雇用のあり方や働き方を考えていく必要がある。柔軟でメリハリのある働き方を実現するためには、職場の意識改革や休みやすい企業風土・職場環境をつくっていくことが大切である。今般の労働基準法改正案は、働き方の多様化に対応した選択肢を増やす方向になっており、日本経済の発展につながる。
矢島洋子 (三菱UFJリサーチ&コンサルティング主席研究員)
労働力人口が減少するなか、元来働き方の厳しいIT系、商社、マスコミといった業界も、人材確保のためにワーク・ライフ・バランスの推進に取り組んでいる。女性の活躍推進に関しては、新法等の関連で女性管理職比率に注目が集まっているが、短時間勤務などの制度を利用して、育休から復帰した女性の能力発揮とキャリア形成支援に取り組むことが重要である。長時間労働の問題は、業種や職種による違いに目が行きがちだが、作業的業務を効率化するアプローチはすべての業界に共通して可能である。
遠藤信博 (日本電気社長)
人口オーナス期においては、女性、高齢者、外国人、障がい者など、多様な人材が働きやすい環境を整備するとともに、ICTを活用して業務改革を進めることで、新たな価値を生み出す部門に人材を集中させることが必要である。グローバル競争が激化するなか、競争力維持の観点からは、外国人人材を積極的に登用するべきである。彼らが能力を発揮できる仕組みや環境を整えるとともに、政府や自治体のサポートが求められる。
鶴光太郎 (慶應義塾大学大学院商学研究科教授)
同質性を強みとしてきた日本企業が多様化することにはさまざまな困難が伴うが、多様化はイノベーションの源泉であり、ポジティブに考えて取り組むべきである。改革のポイントとしては、多様な働き方を選択できること、働き方の選択によって不当な待遇や環境にならないこと、転職・就業への幅広い支援が得られることの3点が挙げられる。労働者をエンパワーメントし、長時間労働の問題を解決する観点から、労働市場の活性化に取り組むべきである。
椋田哲史 (司会:経団連専務理事)
- ●くろまる誰もが活き活き働ける環境の整備
- 産業構造・社会構造の変化に伴う働き方の変容
- 人口オーナス期に適した働き方
- 今や人気業種であっても人材確保は困難
- 多様な働き手・働き方がイノベーションを促進
- ●くろまる多様な人材の職場実態と企業の取り組み、今後の課題
- リケジョ・高齢者・外国人が活躍できる仕組みづくり
- 企業横断的な人材の育成・雇用
- 働き方の選択によって不当な待遇や環境になってはいけない
- 育休から復帰した女性たちが抱える問題
- ●くろまる働き方・休み方改革の取り組み、今後の課題
- 不可欠な作業的業務の効率化
- 「働いたら必ず休む」という文化
- ICT活用の未来と働く意味
- 制度ではなくカルチャーの問題
- ●くろまるわが国の外部労働市場および労働法制のあり方
- 外部労働市場を活性化させる取り組みが必要
- 女性活躍新法の先にあるもの
- 外国人人材が能力を発揮できる仕組みや風土を
- 労働基準法改正によって広がる働く側の選択肢
労働時間の削減
〜業務改革のなかで
篠田和久 (王子ホールディングス顧問)
- 経験豊かな経営者が率先して行動を
- 上司の業務分析力と指導で風土は大きく変わる
野村グループにおける多様化への取り組み
〜ダイバーシティ&インクルージョン ― 多様な人材が活躍できる組織づくりに向けて
永井浩二 (野村ホールディングスグループCEO)
- 活躍する世代の多様化への取り組み
- 性別の多様化への取り組み
- 多様性を受け入れる風土の醸成に向けて
女性活躍推進
〜三州製菓の取り組み
斉之平伸一 (三州製菓社長/埼玉県経営者協会副会長)
- 顧客の要望に素早く応える社内体制の整備
- 意欲ある社員にチャンスの道を
研究・技術開発者の働き方・処遇について
〜専門型裁量労働制の導入による働き方の改革
柳井克之 (東レ勤労部長)
- 裁量労働制導入のねらい
- 裁量労働制導入までの取り組み
- 制度導入の成果と、今後の課題
教え・教えられる風土の再構築を目指したトヨタ流OJT型研修の推進
トヨタ自動車トヨタインスティテュート
- 人材育成の基本的な考え方と研修の特徴
- 近年の取り組み1:人事管理・OJTにおける取り組み
- 近年の取り組み2:研修における取り組み
- 今後の課題
〜若手と基幹職をつなぐ中堅社員の育成
誤解の多いダイバーシティ経営
佐藤博樹 (中央大学大学院戦略経営研究科教授)
- 適材適所としてのダイバーシティ経営
- 誤解の多いダイバーシティ経営
- 求心力としての経営理念が重要に
長時間労働防止、健康経営のための労働時間管理
木下潮音 (第一芙蓉法律事務所弁護士)
- 過重労働となる労働時間
- 労働時間管理の徹底
- 三六協定の運用
- 職場環境への配慮
一般記事
メルケル首相はじめドイツ首脳、欧米経済界トップと意見を交換
〜G7ビジネス・サミットに出席
榊原定征 (経団連会長)
- 日本経済の現状と見通しを紹介
- B7コミュニケをメルケル首相に手交
- 来年は経団連がB7サミットを主催
第104回ILO総会に出席して
〜世界の政労使が一堂に集い、労働・雇用をめぐり熱い議論を交わす
得丸 洋 (経団連雇用政策委員会国際労働部会長/三井化学参与)
- 企業が安心して投資できる環境の整備を
- 各総会議題への対応
- 仕事の世界サミット「気候変動と仕事の世界」
創立15周年を迎えた新むつ小川原株式会社
〜日本の次世代エネルギー基地に向かって
薄井充裕 (新むつ小川原社長)
- エネルギー関連集積基地として
- 大規模太陽光発電所の立地
- 開発の展望
世界の女性専門家が会した国際原子力シンポジウムに参加して
〜女性が語る原子力 ― なぜ必要か、なぜ安全か、なぜ他にないのか
藤田玲子 (前日本原子力学会会長)
- 国民の支持は必ず回復できる
- 原子力に携わる人々自身が信頼される存在に
気候変動・エネルギー問題の克服に向けて
〜ディッチリー財団主催の国際会議に参加して
手塚宏之 (経団連環境安全委員会国際環境戦略ワーキンググループ座長/JFEスチール技術企画部理事)
- 地球規模での排出削減の重要性
- 環境と経済の両立には技術が重要であることで一致
連載
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未来を創る企業力 (12) 〜100年経営の真髄に迫る〜
エキスパートとしての矜持が、より快適な未来へ鉄道をつなぐ。
鉄道機器- 目覚ましい発展を遂げる日本の鉄道を足元で支える
- 現場で培われた個々の力をチームワークにより最大化
- 鉄道会社と固く手を携えて時代のニーズに応えていく
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あの時、あの言葉
きっと最高峰になれる。もしゼロからやり直す覚悟があれば。
辻本憲三(カプコン会長・ケンゾーエステイトオーナー兼CEO) -
Essay「時の調べ」
目の前のお客さんに喜んでいただくこと、それがすべて
石川秀樹(神楽坂 石かわ店主)