月刊 経団連2014年2月号
特集 震災復興の加速に向けて
巻頭言
つながって豊かになる世界
2008年末からの経済危機以降、世界経済の先行きは一段と見通し難くなったように感じている。そうした状況のもとで仕事をしていくうえでは、これからの世界について、何らかのビジョンを持っていることが重要だろう。
特集
震災復興の加速に向けて
東日本大震災から、間もなく3年がたとうとしている。被災地では本格的な復興に向けたフェーズに移り、特にまちづくりに向けた取り組みが本格化しつつある。被災者の生活再建には、まちの復興の加速とともに、産業復興が極めて重要であることは言うまでもない。復興の現状や課題をあらためて把握し、復興の加速に向けて求められる企業の取り組みや、それを後押しするための環境整備について議論する。
対談:「新しい東北」の創造に向けて
- 根本 匠 (復興大臣)
- 米倉弘昌 (経団連会長)
- 中村芳夫 (司会:経団連副会長・事務総長)
2014年3月で東日本大震災から丸3年を迎える。被災地では、復興を単なる原状回復で終わらせないため、新たな取り組みに着手する動きが出始めているが、住宅再建、まちづくり、産業の再生など、本格的な復興はまさにこれからである。復興の加速にリーダーシップを発揮する根本復興大臣と、2013年12月に発足した「新しい東北」官民連携推進協議会の共同代表に就任した米倉会長が、復興の現状と「新しい東北」の実現に向けた課題について意見を交わした。
根本 匠 (復興大臣)
米倉弘昌 (経団連会長)
中村芳夫 (司会:経団連副会長・事務総長)
- ●くろまる復興の現状
- 新たなステージに入った被災地
- 被災地を訪れ、復旧が着実に進んでいると実感
- 現場主義徹底のため復興庁の司令塔機能を強化
- ●くろまる被災者支援・まちづくり
- 被災者の健康・生活支援に関する取り組み
- 被災地のニーズを踏まえ各企業の特徴を活かした支援を
- タスクフォースを活用、事業の隘路となる課題に対処
- 住民の思いをいかにしてまとめ上げるか
- ●くろまる産業・雇用
- 「結の場」で被災地企業と大手企業をマッチング
- わが国農業の競争力強化と成長産業化のために
- 経団連会員企業の被災地域における積極的な事業展開を期待
- 復興特区制度の活用により一層の産業復興を
- ●くろまる「新しい東北」の創造
- 東北を世界の課題解決のモデルに
- 日本の新しい未来の創造につながる復興を
座談会:本格的復興に向けた産業の再生とまちづくり
- 坂根正弘 (経団連副会長・震災復興特別委員会共同委員長/小松製作所相談役)
- 亀山 紘 (石巻市長)
- 白根武史 (トヨタ自動車東日本社長/復興庁復興推進委員会委員)
- 椋田哲史 (司会:経団連常務理事)
坂根正弘 (経団連副会長・震災復興特別委員会共同委員長/小松製作所相談役)
コマツは、震災の翌月に東北オペレーション室を設置し、現地の要望を拾い上げつつ、本業を通じた独自の支援活動を行ってきた。建設機械は震災前と比べて急増したが、建設人材は不足している。そうしたなかで復旧・復興を加速させるためには、成功事例を積み上げ、共有していくことが必要である。また、忘れてはいけないのは、福島の問題である。「福島の復興なくして日本の復興はない」という思いで、特に現場に携わっている人のモチべーションを高めるとともに、世界の英知を集めなければならない。
亀山 紘 (石巻市長)
石巻市は、震災により未曾有の被害を受けたが、この3年間、防災集団移転やインフラ整備、既存産業の再建などを着実に進めてきた。同時に、新たな産業創出や減災のまちづくりを推進し、快適で住みやすく、市民の夢や希望を実現する新しい石巻の創造を目指して各種事業を実施している。人口減少を食い止めるには、働く場の確保が重要である。企業には、国や自治体独自の特区制度等を活用し、被災地の産業復興に協力をお願いしたい。
白根武史 (トヨタ自動車東日本社長/復興庁復興推進委員会委員)
震災で大きなダメージを受けた東北地方には、産業を復興させ、確固たる経済基盤を築くことが大切である。2012年に創立したトヨタ自動車東日本は、本社および3工場を東北に置き、ものづくりを通じて、東北の経済基盤構築に役立ちたいという思いで企業活動を行っている。東北の人材不足は深刻だが、現場で要となる人材を育成するために、トヨタ東日本学園を開校した。「ものづくりは人づくり」という言葉を胸に、人材育成にも取り組みたい。
椋田哲史 (司会:経団連常務理事)
- ●くろまる被災地の現状・復興事業の進捗状況
- 石巻市における震災被害と復興の進捗状況
- ものづくりを通じて東北の経済基盤づくりを
- 本業を通じての被災地支援を継続
- ●くろまる復興事業の実施にあたり、現在直面している課題
- 人・モノの不足、販路開拓、雇用のミスマッチ
- 東北のものづくり産業が競争力をつけていくこと
- 建設業界の人材不足は深刻
- ●くろまる課題解決に向け経済界・企業が取り組むべきこと
- 特区制度を活用して被災地の産業復興に協力を
- 現場の要となる人材を育成するトヨタ東日本学園
- 東北の農業復興に産業界の知恵を
- ●くろまる政府や自治体に求められる施策や取り組み
- 国は東北で新しい産業を興すための支援を
- 企業の進出を促進する中長期的なインセンティブが必要
- 福島の復興なくして日本の復興はない
石巻市におけるスマートシティプロジェクト
秋葉慎一郎 (東芝執行役上席常務/コミュニティ・ソリューション社社長)
- 「灯りと情報」の重要性とスマートコミュニティ
- 「石巻スマートコミュニティ導入促進事業」
- 石巻市の復興のまちづくりに向けて
被災地の農業分野における先進的取り組み
廣野充俊 (富士通執行役員)
- ICTを活用した食・農クラウドサービス
- 震災復興での取り組み
- ビッグデータの活用をビジネスの起点に
津波被災地での施設園芸による復興支援
〜地域と企業の連携で
佐野泰三 (経団連農政問題委員会企画部会長/カゴメ常勤顧問)
- 復興を支援する野菜園芸団地構想
- 陸前高田でのグランパファーム
- 動き始めた数々の農業支援
震災対応と三陸沿岸の復興支援活動について
赫 規矩夫 (高速会長兼社長)
- システム面の対応
- 物流面の対応
- 復興支援活動〜岩手県「食品用加工機械貸出制度」
- 復興支援活動〜機械資材展「東北復興応援フェア」への参画
風評被害対策の取り組みについて
加藤洋一 (経済産業省大臣官房地域経済産業審議官)
- 経済産業省による風評払しょくに向けた取り組み
- 福島県産品の消費促進に向けた取り組み
被災地発、地域経済の活性化モデル「結の場」
山本啓一朗 (日本電気(復興庁宮城復興局へ出向中))
- 被災地は日本における課題先進地
- 被災地域の企業の経営力向上に向けて
創造的な復興に向けて
村井嘉浩 (宮城県知事)
- 創造的な復興の考え方
- ものづくり産業の集積・雇用対策
- 農林水産業・中小企業の活性化
- 観光の振興
震災復興と新しい「まちづくり」
井口経明 (岩沼市長)
- 住民が互いに励まし合った被災直後
- 住民を尊重しコンパクトで機能的なまちづくりを構想
- 復旧から復興へ〜千年先の岩沼の子どもたちのために
若者のチカラで東北を元気に
〜いわて GINGA‐NETプロジェクトの活動
八重樫綾子 (いわてGINGA‐NET代表)
- 県外NPOと連携する全国ネットワークによる支援
- NPO法人の設立により長期的に支援
- 柔軟な発想とアイデアで活動を継続
一般記事
【提言】
より長く、自立して、健康に暮らす住まい・まちの実現に向けて
〜提言「高齢社会に対応した住まい・まちのあり方」
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/111.html
渡邊大樹 (経団連高齢社会対応部会長/日本電信電話副社長)
- より長く自立して住む
- 快適かつ健康に過ごす
日本コロンビア経済連携協定の早期締結に向けて
〜第8回日本コロンビア経済合同委員会を開催
小島順彦 (経団連副会長・日本コロンビア経済委員長/三菱商事会長)
- 両国の経済情勢の展望
- 多国間および二国間の経済協力フレームワーク
- ビジネス機会と課題
- サントス・コロンビア大統領を表敬
日本ミャンマー合同経済会議をヤンゴンで開催
〜ミャンマー政府が日本案件成功への支援を約束
勝俣宣夫 (経団連副会長・日本ミャンマー経済委員長/丸紅相談役)
小林 健 (経団連日本ミャンマー経済委員会共同委員長/三菱商事社長)
- ビジネス環境改善での協力でミャンマー経済界と合意
- テイン・セイン大統領らがインフラ整備・投資促進への支援を表明
第49回経団連洋上研修に参加して
川村 隆 (経団連副会長・第49回経団連洋上研修名誉団長/日立製作所会長)
- カメラの目を大切に
- 部下を育てるということ
- ひたむきであること
- 功遂身退であれ
消費者市民社会の実現に向けた企業の役割・責任を考える
〜経団連等3団体により「2013消費者志向経営トップセミナー」を開催
大宮英明 (経団連副会長・企業行動委員長/三菱重工業会長)
- 消費者志向経営の原点
- 消費者市民社会の実現に向けて
連載
- 輝く日本の女性たち (4)
女性の活躍により日本の国際的イメージの向上を
クリスティーナ・アメージャン(一橋大学大学院商学研究科教授)- 米国における家庭と仕事の両立
- 米国から見た日本の女性の活躍の現状
- 女性の活躍に向けた今後の課題
- あの時、あの言葉
逃げろ!
浅沼 新(東北銀行頭取) - エッセイ「時の調べ」
「日本らしさ」を守り抜くために
佐藤 潤(ホテル佐勘会長) - 翔べ!世界へ―奨学生体験記
ハワイで学んだ人類学を看護に活かす
大河内彩子(横浜市立大学大学院医学研究科地域看護領域学准教授)