月刊 経団連2013年8月号
特集 日本経済の再生を担う人づくりのために
巻頭言
民主導の経済成長の実現を
わが国経済はここにきて、ようやく、好転の兆しを見せ始めている。この足元の変化を、持続的で力強い経済成長につなげていくためには、何よりも民間企業がけん引車となって、世界に誇る技術力と人材の力を梃子に、新たな成長の機会をつくり出していかなければならない。
特集
日本経済の再生を担う人づくりのために
日本経済を取り巻く内外の環境は激変している。こうした変化に対応し、日本企業の競争力を高めるには、イノベーションの創出を担う高度理工系人材や、世界を舞台に戦えるグローバル人材の育成が急務である。経団連は、これまでも、グローバル人材やイノベーション人材育成について提言を行ってきた。このような現状を踏まえ、産業界が求める人材像、それを育成するために必要な大学改革や産学連携、企業の取り組みの強化が求められる分野について議論する。
座談会:日本経済の再生を担う人づくりのために
- 川村 隆 (経団連副会長・教育問題委員長/日立製作所会長)
- 三島良直 (東京工業大学学長)
- 奥 正之 (経団連副会長/三井住友フィナンシャルグループ会長)
- 川口清史 (立命館総長・立命館大学学長)
- 久保田政一 (司会:経団連専務理事)
川村 隆 (経団連副会長・教育問題委員長/日立製作所会長)
日本経済が活力を取り戻すために、イノベーションを創出できる人材が、さまざまな分野で求められている。あわせて、企業のグローバルな事業活動が拡大するなかで、海外で活躍できるグローバル人材の育成も急務である。経団連としては、イノベーション人材、グローバル人材育成のために、奨学金やカリキュラムづくりなど、産学連携を進めている。今後は、社会人の学び直し(リカレント教育)の面でも、産学の人的交流を推進する必要がある。
三島良直 (東京工業大学学長)
東工大では、大学改革、特に教育改革にスピード感を持って取り組んでいる。育てるべき人材像は、産業界とも一致している。しかし、教育改革とは、教育の質を高めることにより、学生たちが目標を明確に持ち、熱意を持って学問ができる雰囲気を醸成することである。その意味でも、カリキュラムづくりの段階から企業にかかわってもらい、また、事業の現場で何が求められているのかといった具体的な話を講義してもらうなど、産学が連携することが必要である。
奥 正之 (経団連副会長/三井住友フィナンシャルグループ会長)
グローバル人材は、世界語としての英語力のほかに、世界の事象を分析し、内外の歴史、文化・文明を語ることができる教養を備えていなければならない。大学でも教養教育が見直されるべきである。金融業の産学連携は、これまでもインターンの受け入れや寄付講座などを通じて行われてきた。しかし、その効果の測定は十分になされていない。評価方法の確立が必要である。あわせて、TOEICのスコア以外で学生の現在位置を継続的に測る指標も、産学で考えていくべきである。
川口清史 (立命館総長・立命館大学学長)
グローバル人材やイノベーティブな人材の育成は、社会からの要請であり、これに応えることが私学の使命である。そのためには、時代に合わせて大学の教育内容を改革していく必要がある。学内外でマルチカルチュラルな体験ができる環境を整えること、課題解決型のPBLの導入や、語学教育の発展的改善、社会人の学び直し機会の提供など、今、私たち高等教育機関が果たすべき役割は非常に重要になってきている。産学官が連携して、新しい取り組みを進めていきたい。
久保田政一 (司会:経団連専務理事)
- ●くろまる産業界が求める日本経済の再生を担う人材の具体像
- 求められるイノベーション人材とグローバル人材
- 海外でのビジネスには高い教養が必須
- ●くろまる求められる大学の取り組み
- 学生をやる気にさせることが大学改革の第一歩
- 社会のニーズに応えることが私立大学の使命
- 学生と教員双方の意識改革を
- ●くろまる産学連携の推進に向けて
- 企業はカリキュラムづくりの段階から協力を
- 産業界で活躍できる理工系の博士人材を送り出す
- 産学の人的交流の効果を測る仕組みを
- 社会人の学び直しがフレキシブルにできる仕組みを
- ●くろまる人材育成における今後の課題
- 受験偏重の教育システムを見直すべき
- 日本企業のダイバーシティー化が進むなかで
- 留学生にとって日本企業に就職できることが魅力
- 学生が「なりたい自分」になれるように
人材力強化のための教育戦略
下村博文 (文部科学大臣兼教育再生担当大臣)
- 「国家戦略」としての教育再生
- 「世界に勝つ」大学を目指す
- 人材育成と産学連携
イノベーション人材の育成に向けた取り組み
内山田竹志 (経団連副会長・産業技術委員長/トヨタ自動車会長)
小野寺 正 (経団連産業技術委員会共同委員長/KDDI会長)
- 高等教育に対する評価体制の体系的整備および予算の重点配分
- 大学・大学院の国際競争力の強化
- ICT利活用人材の育成強化
- 総合科学技術会議の果たすべき役割
大学の取り組みの最前線
国際社会で活躍できる博士人材の育成
〜京大思修館の取り組み
京都大学
- 既存学問の「知」を統合し、地球規模の課題に取り組む
- 知識を運用する力、実践力を養うカリキュラム
よりタフで、グローバルな人材の育成
〜FLYプログラムの導入
東京大学
- 濱田総長のリーダーシップのもとに進む教育改革
- シームレス社会に風穴を開ける「東大版ギャップイヤー」
- 「海外武者修行」を志望する東大生たち
フランスの高等教育における国際人材育成への取り組み
エセック経済商科大学院大学(ビジネススクール)
各社の取り組み
社員を活かし育てるダイバーシティ
冨田哲郎 (東日本旅客鉄道社長)
- JR東日本のダイバーシティ推進のあゆみ
- 社員の成長とダイバーシティ
グローバル人材の育成と継続的企業価値の創出
藤田 潔 (三菱商事人事部長)
- 計画的なキャリアパスプログラム 〜若手から中堅
- グローバル研修生制度 〜若手
- 研修プログラムの充実 〜マネージャークラス
- 幹部人材の育成
- 連結経営力の強化のために
次世代の無限の可能性
小川理子 (パナソニックCSR・社会文化グループグループマネージャー)
- 教育現場からのニーズは急速に拡大
- 企業の取り組みの一例
- キャリア教育の課題
- 次世代の無限の可能性と、熱意・使命感への期待
世界を舞台に活躍できる人づくりのために
〜グローバル人材の育成に向けたフォローアップ提言
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/059.html
岩波利光 (経団連教育問題委員会企画部会長/日本電気特別顧問)
- フォローアップ提言の経緯
- 初等中等教育から取り組むべきグローバル人材育成
- 企業に求められるさまざまな取り組み
- 経団連は、グローバル人材育成事業を強化・拡充
グローバル人材育成に向けた経団連の取り組み
大学生の海外留学促進に向けた経団連の取り組み
http://www.keidanren.or.jp/japanese/profile/ishizaka/
高尾剛正 (経団連国際教育交流財団理事長/住友化学副社長)
- 新たな奨学金「経団連グローバル人材育成スカラーシップ」の創設
- 「経団連グローバルキャリア・ミーティング」による就職支援
- 一層の海外留学促進に向けて
真のグローバル・リーダーを育成するUWCの教育
http://www.keidanren.or.jp/japanese/profile/UWC/
藤田 讓 (UWC日本協会会長/朝日生命保険最高顧問)
- グローバル人材への期待
- 国境、文化、価値観を超えてつながる生徒たち
- 世界・宇宙を舞台に活躍する卒業生
- UWC日本協会への入会のお願い
経団連総会
「定時総会」を開催
新副会長の抱負
現場重視で日本再生を
友野 宏 (新日鐵住金社長)
わが国産業の国際競争力強化に取り組む
内山田竹志 (トヨタ自動車会長)
新たなる成長の幕開けに向けて
佐々木則夫 (東芝副会長)
経団連の新体制
一般記事
【提言】 私的自治・契約自由の原則と実務を踏まえた検討を求める
〜「民法(債権関係)の改正に関する中間試案」に対する提言
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/058.html
奥 正之 (経団連副会長・経済法規委員長/三井住友フィナンシャルグループ会長)
大八木成男 (経団連経済法規委員会共同委員長/帝人社長)
- 民法の現代化について
- わかりやすい民法について
- 特定の政策目的を有する規定の導入について
- 今後の検討のあり方について
【提言】 国際会計基準の現状とわが国の対応
〜提言「今後のわが国の企業会計制度に関する基本的考え方」
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/056.html
釡 和明 (経団連企業会計委員長/IHI会長)
- IFRSをめぐる動向
- 今後の会計制度を考えるうえでの基本的視点
- 今後の対応
【報告書】 中小企業のアジア地域への海外展開をめぐる課題と求められる対応
http://www.keidanren.or.jp/policy/2013/045.html
澤部 肇 (経団連中小企業委員会共同委員長(当時)/TDK相談役)
高原豪久 (経団連中小企業委員会共同委員長(当時)/ユニ・チャーム社長)
- 中小企業が直面する三つの課題
- 海外展開における四つの留意点
- 政府・自治体・公的支援機関等への要望
連載
- 震災復興の現場から
企業連携推進室における被災地復興への取り組み
陸歎直志(復興庁宮城復興局) - Column 日本のインフラ輸出
南部ベトナム・ホーチミン市郊外ビンズン省における街づくり
中田泰行(ベカメックス東急社長) - 経営者のひととき
自然のなかで感じる仕事の原点
篠原欣子(テンプホールディングス会長) - エッセイ「時の調べ」
今見直される昆布の魅力〜だし文化を世界に広める
奥井 隆(奥井海生堂代表取締役)