月刊 経団連2012年5月号
特集 日中国民交流友好年〜日中交流の拡大に向けて(第二部)
巻頭言
新たなるパートナーシップに向けて
今年は日中国交正常化から40年の節目の年である。人間で40歳といえば不惑の年ではあるが、まだ惑うことの多い日中関係といえる。 3月に開催された全国人民代表大会(全人代)で、温家宝総理は今年の経済成長率の目標を7.5%にすると表明した。これからは成長の質を求め、安定を重視していく姿勢と受け止められている。
特集
日中国民交流友好年〜日中交流の拡大に向けて(第二部)
今年、日中国交正常化40周年を記念し、日中国民交流友好年事業が行われている。中国は、2010年に世界第2位の経済大国となり、それに伴って、日中関係も、かつての支援する、支援されるという関係から、対等なパートナーとしての関係となりつつある。先月に引き続き、40年にわたる友好関係を基盤として、さらに成熟した関係を構築するための道筋を探る。
座談会:さらなる交流促進に向けて
- 程 永華 (中華人民共和国駐日本国特命全権大使)
- 石川 好 (作家/2012「日中国民交流友好年」実行委員会企画委員会共同委員長)
- 山田啓二 (全国知事会会長/京都府知事)
- 中村芳夫 (経団連副会長・事務総長)
程 永華 (中華人民共和国駐日本国特命全権大使)
国交正常化からの40年間、中日両国の交流は、深く、幅広く行われてきた。経済的には、改革開放以降の30余年にわたる日本の貢献は大きいと認識している。これからは、「四つの政治文書」に基づき、世界第2位と第3位の経済大国として、戦略的互恵関係を深めていきたい。また、「国の交わりは民の相親しむに在り」という考えのもと、スポーツや文化を通じた国民レベルの交流も深めていくべきと考える。
石川 好 (作家/2012「日中国民交流友好年」実行委員会企画委員会共同委員長)
1972年は、日中国交正常化と沖縄復帰がなされた年であり、名実ともに日本の戦後がスタートした年だといえる。それから40年を経て、日中両国が経済力で肩を並べたということは、対等な立場で、新しい関係を模索する契機となるだろう。日中国民交流友好年では、若者を中心とした草の根の交流や、これまで交流がなかった地域でのイベントに力を入れたい。小さな交流であっても、成功体験を積み重ねていくことが大切である。
山田啓二 (全国知事会会長/京都府知事)
日中両国は、経済面で、もはやお互いに切り離すことのできない関係になっている。京都でも、中国人観光客は観光産業にとって大きな力になっている。また、日本では地方分権が進むなかで、それぞれの地域が中国と向かい合ってきたことの成果として、日中の地方政府間の交流が大きく変わりつつある。今後も、環境問題をはじめ生活に根ざした課題などを通じてともに向き合い、地方間の交流を深め、両国関係のもう一つの基盤を構築していきたい。
中村芳夫 (経団連副会長・事務総長)
日本と中国は、いまや両国のみならず、アジア地域、ひいては世界に影響を与える存在となっている。また、お互いにとって最も重要な二国間関係の一つであるとともに、長期にわたる平和および友好のための協力が唯一の選択肢であるとの認識で一致している。両国は、40年の長きにわたり積み上げてきた、さまざまな分野での交流を基礎として、引き続き、両国民間での全国的規模の交流を積み重ねていくことが重要である。
- ●くろまる日中国交正常化40年を迎えて
- 名実ともに日本の「戦後」が始まった1972年
- 重要な基盤となった「四つの政治文書」
- 地方でも本当の意味での相互交流が始まっている
- ●くろまる戦略的互恵関係への考え方
- 世界第2位と第3位の経済大国として
- 財政・金融面でのハイレベルな協力を
- 両国は切り離せない関係にある
- ●くろまる日中間における人と人との交流、つながりの重要性
- スポーツ、文化を通じた国民レベルの交流が大切
- 相手の心がわかるほど深く付き合う
- 国と国の垣根を越えた「草の根交流」を
- ●くろまる地方間交流促進の重要性
- 大きく変わりつつある地方政府間の交流
- 姉妹都市・友好都市提携30周年を迎えて
- 潜在力のある中国内陸部との交流強化を
- ●くろまるさらに交流を深め、成熟した日中関係を構築するために
- 国の交わりは民の相親しむに在り
- 小さな交流の成功体験を積み重ねていくことが大切
- 環日本海時代の到来を見据えて
特集寄稿
交流をもって友好を促し、協力をもって発展を求めよう
〜中日国民交流友好年へのメッセージ
唐 家セン (中国日本友好協会会長)
地方対地方の交流促進
加藤紘一 ((公社)日中友好協会会長)
草の根活動を日中共同で展開
江田五月 (日中友好会館会長)
『環境立国日本』の国民意識を活かした環境協力を
渡 文明 (経団連審議員会議長/JXホールディングス相談役)
日中観光交流のさらなる拡大と今後の観光振興に向けて
大塚陸毅 (経団連副会長・観光委員長/東日本旅客鉄道相談役)
- 国交正常化40周年を機にさらなる交流の促進を
- 観光による交流拡大に向けた課題
- 観光を真の国家戦略に
自由貿易協定を通じた日中関係の交流促進
金 堅敏 (富士通総研主席研究員)
- 「雇用拡大」をEPA/FTAの政策目標に
- 雇用拡大効果の大きい日中FTA
- 工業製品と農産物の自由化が両立可能な日中FTA
環境・エネルギー分野での日中協力の深化を目指して
〜第二回日中グリーンエキスポの開催に向けて
桂 靖雄 (日中グリーンエキスポ推進会議企画部会長/パナソニック副社長)
- 環境に関する日中共通の価値観の構築
- 第一回グリーンエキスポの成果
- 第二回グリーンエキスポのコンセプト
映画交流が日中友好の新時代を築く
依田 巽 (2012「日中国民交流友好年」実行委員会副委員長/ギャガ会長兼社長)
- 中国での日本映画普及
- 良質の現代中国映画を紹介
- 日中共同製作の可能性
- 「日中国民交流友好年」に当たり
【インタビュー】 異郷有悟 出会いは人を変える
関口知宏 (2012「日中国民交流友好年」親善大使/俳優)
- 3万6000kmの旅で学んだこと
- 中国が持つ根源的なエネルギー
- 違いを認め合うために、ぶつかり合うことも必要
- より深く理解するための交流のひな型をつくりたい
日中国交正常化40年と経団連の活動
一般記事
2015年ASEAN経済統合後を見据えた域内協力を推進する
〜ベトナム、マレーシア、フィリピンの官民首脳と地域経済統合やインフラ整備をめぐり意見交換
米倉弘昌 (経団連会長)
- 地域経済統合に向けて認識を共有
- インフラ整備における日本企業との協力に期待
- 急がれるビジネス環境整備
【提言】 国際物流ネットワークにおけるわが国港湾の機能強化
〜提言「国際競争力強化に向けた港湾・輸出入制度の改革」
宮原耕治 (経団連副会長・運輸委員長/日本郵船会長)
- 競争環境のイコールフッティングに向け不断の制度改革を
- 港湾諸制度の改革〜政府の取り組みを現場に浸透させることが重要
- 輸出入制度の改革〜政府の積極的な姿勢の維持に期待
- 改革推進体制のあり方〜総合調整機能が省庁間連携を促進
適切なピーク電力需給対策の実現に向けて
〜昨夏の産業界の取り組みを振り返って
井手明彦 (経団連審議員会副議長・資源・エネルギー対策委員長/三菱マテリアル会長)
- 昨夏の電力需給対策に関するアンケート結果について
- 今夏の電力需給対策について
東日本大震災における経済界による被災者・被災地支援
古賀信行 (経団連社会貢献推進委員会共同委員長/野村證券会長)
佐藤正敏 (経団連社会貢献推進委員会共同委員長・1%クラブ会長/損害保険ジャパン会長)
- 経済界による支援活動の五つの特徴
- 平時からの社会貢献活動の積み重ね
- 現地のニーズに対応した支援を
循環型社会の形成に向けた産業界の取り組み
〜環境自主行動計画〔循環型社会形成編〕2011年度フォローアップ調査結果
天坊昭彦 (経団連環境安全委員会共同委員長/出光興産会長)
- 環境自主行動計画(循環型社会形成編)の取り組み経緯
- 2011年度フォローアップ調査結果の概要
- 環境と経済が両立し得る循環型社会の構築に向けて
連載
- 【ルポ】 農商工連携(シリーズ第8回)
- 農業生産に参入して地域農業の活性化に貢献
企業の技術やノウハウで農業経営を総合的に支える 〜 住友化学 - (経団連産業政策本部)
- 自社の商品、サービスを使って農業経営をサポート
- 農業への参入を通じて現場から学ぶ
- 農業の革新に向けて
- 豊かで安全な食生活に貢献する
- 【ルポ】 オンリーワンで市場を開く(シリーズ第4回)
- 不稼働資産を有効に活用し誰もが喜ぶビジネスを目指す
駐車場ビジネスのパイオニア 〜 日本駐車場開発 - (経団連産業政策本部)
- 駐車場ビジネスを通じて関係する皆の満足を得る
- 新しい発想で駐車場ビジネスを展開
- 駐車場以外にも新たなビジネスを開拓
- 不稼働資産の有効活用を目指す
- 経営者のひととき
私の早朝ウォーキングお気に入りコース
関口憲一(明治安田生命保険会長) - エッセイ「時の調べ」
仕事の道具
海田俊二(写真家) - 翔べ!世界へ―奨学生体験記
図書館と社会と私
中村百合子(立教大学文学部准教授・司書課程主任)