月刊 経団連2012年4月号
特集 日中国民交流友好年〜日中交流の拡大に向けて(第一部)
巻頭言
日中両国のさらなる「絆」を深める
本年2012年は、日中国交正常化40周年という節目を迎える年である。 日中両国は1972年の国交正常化以来、経済交流や人的往来の拡大などにより、あらゆる分野において相互理解、信頼関係を深化させてきた。
特集
日中国民交流友好年〜日中交流の拡大に向けて(第一部)
日本と中国は今年、国交正常化から40年を迎える。この間、中国は目覚ましい経済発展を遂げ、2010年には、ついにGDPで日本を抜き、世界第二位の経済大国となった。日中関係も、かつての支援する、支援されるという関係から、対等なパートナーとしての関係に変わりつつある。40年にわたる友好関係を基盤として、さらに成熟した関係を構築するための道筋を探る。
座談会:日中国民交流友好年 日中交流の拡大に向けて
- 宗岡正二 (経団連副会長・中国委員長/新日本製鐵社長)
- 張富士夫 (トヨタ自動車会長/日中経済協会会長)
- 国分良成 (慶應義塾大学法学部教授(現防衛大学校長))
- 中村芳夫 (経団連副会長・事務総長)
宗岡正二(経団連副会長・中国委員長/新日本製鐵社長)
上海宝山製鉄所建設プロジェクトは、今日、民間による対中技術協力、経済協力のシンボル的な事業として語られている。先輩たちが築き上げた日中間の信頼関係を、さらに成熟したパートナーシップとしていくために、企業は、これからも成功体験を一つひとつ積み上げていかなければならない。政治には、企業活動が円滑に行えるよう、知的財産権保護の問題などの解決を、中国政府に働きかけていくことを期待したい。
張富士夫(トヨタ自動車会長/日中経済協会会長)
トヨタ自動車は、1970年代後半から中国の自動車メーカーに対し、「トヨタ生産方式」の講義を行ったり、視察研修を受け入れたりしてきた。こうした交流が、今日の中国における事業の礎となっている。現在も、「環境保護」「交通安全」「人材育成」を柱に、中国でのCSR活動を展開している。成熟した日中関係の構築のために、政治には、指導者レベルでの信頼関係の構築と、日中韓FTAなど経済連携の一層の推進を期待したい。
国分良成(慶應義塾大学法学部教授(現防衛大学校長))
この40年間を振り返ると、トウ小平氏が「南巡講話」を行って、市場経済路線へとかじを切り、天皇陛下の訪中が実現した1992年を転換点として、日中関係は大きく変貌した。中国の経済力が日本と並んだいま、歴史上初めて水平な日中関係という状況が生まれている。成熟した日中関係の構築のためには、政治的なパイプをより強固なものにし、地域の課題に共同で対処するという「戦略的互恵関係」を、より具体的に推進していくことが求められる。
中村芳夫(経団連副会長・事務総長)
中国は、この40年の間に、日本からの無償資金協力を受け入れていた時代を経て、2001年にはWTOへの加盟を果たした。その後も内需の拡大と輸出をエンジンに成長を続け、2010年には日本を抜いて世界第二位の経済大国となった。日本はいま、大きく変わる中国と今後どのようなパートナーシップを築いていくのかが問われている。今年は「日中国民交流友好年」として、米倉会長を委員長とする実行委員会を日本側で立ち上げ、オール・ジャパンで交流事業を進めていく。
- ●くろまる国交正常化後の日中関係40年を振り返って〜その発展と意義
- 1992年の転換〜南北関係から水平関係に
- 宝鋼製鉄所建設プロジェクトに学ぶこと
- 民間ベースでの取り組み〜トヨタ自動車と日中経済協会
- ●くろまる理想的な日中のパートナーシップとは
- 互いに理解し、尊重し合える関係を築く
- 省エネ・環境分野での協力が鍵
- ●くろまる企業間交流の現状と課題
- 中国における日本企業のCSR活動
- 省エネ・環境分野における鉄鋼業界の貢献
- ●くろまる成熟した日中関係を構築するために
- 政治指導者レベルでの確固とした信頼関係の構築を
- 成功体験を一つひとつ積み重ねていくことが大切
- 戦略的互恵関係を具体的に進めるべき
特集寄稿
日中の絆をさらに強固なものとしていくために
米倉弘昌 (2012「日中国民交流友好年」実行委員長/経団連会長)
- 円熟期を迎える日中の協力関係
- 40周年記念事業を通じ日中関係の発展を支える大きな力を
日中国交正常化40周年を迎えて
玄葉光一郎 (外務大臣)
- 約900名の参加を得て華々しく開催された開幕式
- 戦略的互恵関係を一層充実したものに
転換期における日中関係
藤原帰一 (東京大学法学政治学研究科教授)
- 対中交易の正常化を背景とする日中国交正常化
- 経済を通じた関係を支えていくことが合理的な選択
草の根交流の拡大を
杉田亮毅 (日本経済新聞社会長)
- 明暗両色に彩られた日中の歴史
- 「収斂の時代」を乗り切る日中協力
- 交流拡大と深化への支援を
【特別インタビュー】 国民交流の深化が拓く新時代の日中関係
福田康夫 (2012「日中国民交流友好年」実行委員会最高顧問/衆議院議員・元内閣総理大臣(第91代))
- 日中国交正常化から40年を振り返って
- 経済発展する中国との新たな関係構築
- 国民レベルの交流を促進するために
- グローバル問題と日中協力の可能性
- 中国のリーダー交代と新しい日中関係
2012「日中国民交流友好年」北京開幕式を開催
北原巖男 (2012「日中国民交流友好年」実行委員会事務局長)
- 多くの来場者を得て日中国民交流友好年がスタート
- 米倉実行委員長から親善大使を委嘱
- より多層的、重層的な裾野の広い日中関係をつくっていくために
- 心の絆を一層強く太く紡いでいく一年に
一般記事
【提言】 震災を乗り越え、観光で日本の成長とブランド力強化を
〜新たな観光立国推進基本計画に向けた提言
大塚陸毅 (経団連副会長・観光委員長/東日本旅客鉄道相談役)
山口範雄 (経団連審議員会副議長・観光委員会共同委員長/味の素会長)
- 震災を経てみえた観光本来の価値
- 政治のリーダーシップと野心的な目標、革新的な施策を
- 観光立国実現に向けた推進体制のあり方
- 観光立国実現に向けた経済界の協力
【提言】 新型インフルエンザ対策の早期確立を求める
川合正矩 (経団連国民生活委員会共同委員長/日本通運会長)
木村惠司 (経団連国民生活委員会共同委員長/三菱地所会長)
- 鳥由来新型インフルエンザの出現は潜在的な脅威
- 新型インフルエンザ等特別措置法案の早期成立を望む
- 疾病リスクへの万全の備えを
新しい法人への移行
中村芳夫 (経団連副会長・事務総長)
- 国民とともに歩む経団連
- 自由で幅広い活動を会員参加で担う組織体制
連載
- 【ルポ】 農商工連携(シリーズ第7回)
- 企業の生産管理のノウハウを活用して農業の食品産業化につなげる
生鮮野菜の調達・販売 〜 ニチレイアグリ - (経団連産業政策本部)
- 食品メーカーとして国内農業の発展に貢献
- 生産者、ユーザー双方にメリット
- 製造業の生産手法を農業経営に活かす
- 農業者との信頼関係の構築が重要
- 【ルポ】 オンリーワンで市場を開く(シリーズ第3回)
- 「共創」の精神で市場ニーズに応える
食品、環境・エネルギー分野で世界に飛躍 〜 前川製作所 - (経団連産業政策本部)
- 冷却技術を核に国内外に幅広く展開
- 自然冷媒「空気」で超低温市場を開拓、経済産業大臣賞を受賞
- 食鶏加工に革命を起こす
- 市場に対応した社内組織・制度の見直し
- 人間力を糧に成長を続ける
- 経営者のひととき
わが家のアイドル
山崎修二(蝶理社長) - エッセイ「時の調べ」
理想を追求すれば、不景気でも本物は生き残る
高木 裕(ピアノ・プロデューサー) - 翔べ!世界へ―奨学生体験記
一歩ずつ前へ
藤井さやか(筑波大学大学院システム情報工学研究科講師)