HIV検査 Q&A
みなさんからよくお問い合わせのある、HIV検査に関する質問にお答えします。
※(注記)原則として、個別のご相談はお受けしていません。
HIVやエイズに関する個別の相談や情報が必要な方はエイズ電話相談窓口やエイズ関連情報へのリンク集をご利用ください。
- 1ヶ月前に感染機会がありましたが、感染したのではないかと心配でノイローゼ気味です。3ヶ月経たないと検査をしても意味がありませんか?
抗体検査では約1ヶ月あれば抗体が検出されてきますので、現在の状態で検査しても意味がないことはありません。その結果「陽性」であれば、すぐに病院で必要な検査、治療が受けられますし、「陰性」であれば、感染していない可能性がかなり高いと言えます。しかし、きちんと陰性を確認するためには、3ヶ月過ぎてからもう一度HIV検査を受けることをおすすめします。
- 検査の時に採血をされましたが、採血に使用された注射針から感染することはないでしょうか?
検査施設や医療機関で使用されている採血に必要な注射針、注射筒、採血管等はすべて滅菌されており、個別に使い捨てとなっていますので、検査をしたことによって感染することはありません。
- 風邪を引いたりして免疫力が低下した時にHIVに感染した場合、抗体産生が遅れることはありますか?
骨髄移植等のための強力な免疫抑制剤等を使用中の場合には、抗体産生が遅れることもあるかもしれませんが、一般的な生活を送られている方では、風邪を引いた時に感染機会があったとしても、抗体産生が遅れるということはありません。
- 喘息の持病があって気管支拡張剤やステロイド剤を使っています。3ヶ月後の検査で陰性の結果をもらったのですが体調が思わしくなく、結果を信じてよいのか不安です。もう一度時期をおいて検査するべきでしょうか?
気管支拡張剤が抗体検査に影響するということありません。免疫抑制作用のあるステロイド剤ですが、ステロイド剤を飲んでいる人がHIVに感染後、いつ抗体陽性になるかというデータがないので正確なお答えは出来ません。しかし、3ヶ月目に陰性であればまず心配いらないと思います。
- スクリーニング検査で陽性となった場合、本当の陽性である確率はどの程度ですか?
スクリーニング検査が陽性となった人の中で”真の陽性(感染者)”が占める割合と偽陽性が占める割合は、受検者集団の偽陽性率と感染者の存在率、また使用する検査法によって異なってきます。保健所検査の受検者における感染者の割合はおよそ0.3%(1000人に3人くらい)です。通常のスクリーニング検査試薬(通常検査)を用いた場合は、およそ0.3%(1000人に3人くらい)の偽陽性が発生しますので、スクリーニング検査で陽性となった人の50%が真の陽性となります。迅速スクリーニング検査試薬を用いた場合は、およそ1%(100人に1人くらい)の偽陽性が発生しますので、スクリーニング陽性者の約23%が真の陽性となります。
- 即日検査を受けました。結果は陰性でしたが、20分後には結果が分かり、簡単すぎて結果を信頼してよいのか不安です。結果を信じても大丈夫ですか?
現在、即日検査で使用されているHIV抗体迅速診断試薬は日本においてきちんと薬事承認を受けた試薬ですので、通常のHIV抗体検査法と同様にその検査結果を信頼して頂いて大丈夫です。HIV陽性検体を用いた感度比較では、迅速診断キットでもほぼ同等の検出感度であることが確認されています。ただし、迅速検査試薬は偽陽性率がおよそ1%と、HIVに感染していなくても100人に1人は陽性反応が出てしまい、通常検査に比べて偽陽性の頻度が高いことが分かっています。スクリーニング検査で陽性であった場合は、必ず確認検査を行わないと結果は確定できません。
- 会社の健康診断で何も異常が無い場合には、HIVに感染していないと考えて良いのでしょうか?
HIV検査は本人の希望または了解無しには検査は出来ません。普通、会社等で行っている健康診断(血液検査)にはHIV検査の項目はないと思います。HIV感染が気になる場合には、保健所等のHIV検査機関でHIV検査を受けることが一番良いと思います。
- 献血をしたのですが、HIV陽性だった場合、通知はされるのでしょうか?
できるだけ安全性の高い血液や血液製剤を供給するために、日赤では献血された血液について、非常に厳格なHIV検査を行っています。しかし、HIV検査の結果は献血者本人には伝えないことになっています。なんで?と思う人もいるかと思いますが、その理由は、感染リスクのある人の検査目的の献血を防ぐためです。ウイルス感染直後では、検査を行っても感染を見つけることができない期間(ウインドウ期:通常感染から数週間程度)があるため、その期間に献血されると検査をすり抜けてしまい、輸血された患者さんにウイルスを感染させてしまう恐れがあります。このため検査だけでは輸血によるHIV感染を完全には防止できません。そこで、より安全な血液を提供するためには、HIV感染の心配のある人の献血を防止することが必要となります。
もし、HIV感染の心配がある場合は献血は止め、 先ず、保健所等のHIV検査機関で検査を受けましょう!
そして、絶対に検査目的の献血は止めましょう!(輸血を受ける患者さんのために)
- 自分の手元ですぐに結果がわかるHIV自己検査キットがネット上で販売されていますが、使用して問題ないでしょうか?
日本では、自分で採血し郵送した検体を専門機関が判定し、その結果を受け取る方法(郵送検査キット)があります。
この郵送検査キットとは異なり、HIV自己検査キットは「検査を受ける人自身が結果の判定まで行うもの」です。HIV自己検査キットの使用はお勧めできません。
HIV自己検査キットの中には、直接健康や生命に関連するものがあります。病気の診断を行うには、良い性能の製品を正しく使用しないと、正しい診断ができず、却ってその後の治療や生活、周囲への拡大防止にマイナスの影響を及ぼします。現在、厚生労働大臣が性能や安全性を審査し流通を認めたHIV自己検査キットはありません。また、そのようなものを宣伝広告することも禁止しています。ネット上では「購入は自分自身の責任で」と断り書きをつけて、実際は一般の雑貨と同じように輸入を煽っています。
HIV自己検査キットのほとんどはチェック機能の整った先進国で許可されていません。さらに、ネットから送付されるものは自己使用向けではなく医師など専門家が使用するためのものや、研究用です。品質管理の行き届いた施設で製造されている保証もなく、偽造品だったこともあります。使用法や判定法の説明も不十分で、一般人が正しく使用できるか疑問のあるもの、また、偽陽性や偽陰性を示すものもあります。使用者に対して、使い方が分からない時や気になる結果が出てしまったときのカウンセリング体制もありません。
前述のように、日本では保健所や専門検査施設、一般の医療機関で専門家の助言を受けながら、信頼できる検査が受けられます。面倒がらず、恥ずかしがらず、信頼できる検査を受けましょう。それが貴方自身を一番幸せにし、家族や友人の幸福にもつながります。
(平成23年度 研究分担者 木村和子)
- 米国ではHIV自己検査キットが薬局で販売されていますが、日本国内でも使用できるのでしょうか?
日本でのHIV検査は、医療機関または保健所での検査が基本です。自己採血による郵送検査も選択肢としてはありますが、家庭で使用できる自己検査キットとして承認されたものはありません。一方海外では、一部地域で医療用ではなく一般用として販売されている自己検査キットがあります(当研究班の調査では、その中には偽造品や粗悪品が混入している等さまざまな問題があることが分かっています)。また、米国では2012年7月3日に米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration、FDA)により、だ液による家庭用HIV検査キット(OraQuick In-Home)の米国国内における薬局での店頭販売が承認されました。昨今、インターネットを通じて海外から検査キットを個人輸入することも可能ですが、日本ではこの試薬は薬事承認を受けていませんので、使用する場合には全て自己責任となります。日本においては保健所等の公的検査機関で「無料・匿(とく)名」で検査が受けられますので、是非、保健所での検査をご利用ください。
(平成26年度 研究分担者 坪井宏仁)