連載:「トホホ書店員はホンと年中無休」

第3章 書店の謎

だいやまーくなぜ雑誌袋のなかには結婚相談所のチラシが入っているのか?

なぜ? なぜに雑誌袋の中には「結婚相談所」やら「速読術」やら「サラ金」のチラシが入っているのでしょうか?
お客様的立場から見ますと、既婚者にとっては全く無意味な紙切れでしかなく(しかも両面ともすきま無く印刷されているのでメモ紙としてすら使えない)、独身者にとっては、特に私は独身の道を貫くのさという方にしてみれば、それはもう「ほっといてくれ!」的よけいなお世話にほかならないワケでございます。
また、書店員の立場からハッキリ直截に申し上げますと、......邪魔くさい。雑誌を袋に入れる際、その結婚案内所チラシが雑誌に引っかかってしまい、中々スッポリとスムーズに入ってくれないんですこれが。あの長方形の紙切れごときにストレスを与え続けられている書店員。袋界(そんなもんあるのか?)においては嫌われモノ道一直線を突き進んでいらっしゃいます。

これがサラ金チラシになると事はさらに厄介で、一度我が店に
「この俺に金借りれというのか!?」
といったクレームが来たこともあったりで、本当に何て余計なモノが入っているのだと日々訝りながらも、せっせと商品を袋詰めするのです。
上手く雑誌を袋に入れるコツもありまして、一旦チラシを袋より数センチ引き出してから(靴ベラの要領で)商品を入れるようにすると、チラシに引っかかる事無くスムーズに袋詰できるのです。

「そんなに邪魔で忌み嫌われるだけの存在ならばいっそのこと全部袋から抜き取って捨ててしまえばいいじゃない」
という声が聞こえてきそうですが、いや、実際私も以前そういうコトもしておりましたが、実は実はそれをやってしまうとヤバイのですよこれが。

雑誌袋はどこから仕入れているのか? という所からまずは考えてみます。
取次の関連会社なんかでも雑誌袋を書店へ販売しておりますが、これが往々にして割高なのでございます(袋に限らず備品全般)。ただでさえ利幅の少ない書店業界。少しでも1円でも経費節減したいのが本音。であるからしてつねに1円でも安く雑誌袋を仕入れ出来る業者を日々さがしているのでございます。

一方、結婚相談所からしてみれば、不特定多数のお客様が集まる書店というのは、まさに宣伝ターゲットとしてうってつけなワケで、これを使わない手は無い! ということで、自社チラシを入れる事を条件に格安にて雑誌袋を書店に提供しているのでございます(結婚相談所が自身で行うケースと、広告代理店が代行するケースがあり)。書店と結婚相談所双方の利害の一致の結果が雑誌袋に封入されたあの「邪魔くさい」「余計なお世話」としか思えないチラシたちであるわけです。

これを書店が「邪魔くさい、商品を入れづらい」と袋からチラシを抜いてしまった場合どうなるか? という事について考察してみます。
ええと、結婚相談所はキチンと効果測定しております。チラシはハガキになっておりまして、そのまま結婚相談所へ返送出来るようになっております。で、そのハガキは何処の書店から返送されたものかをリサーチし、あまりにも返送率の低い書店については、広告宣伝効果が薄い、つまり単刀直入にいうと「使えん書店」と認定され、
「そういういうワケで今後一切の雑誌袋提供お断り!」
という事態にまで発展する事があります。実際私は某結婚相談所のお方から、先の文句と寸分違わぬ文句にて袋の注文を断られたコトがあります。結婚相談所は雑誌袋屋さんではないのだから至極まっとうな話でございます。であるからして、書店は「邪魔くさい」チラシを泣く泣く今日も数センチ引っ張り出すのです。

しかし、あのチラシで結婚相手を探そうなんて方いるんでしょうか?(いや、これだけ雑誌袋作ってもらってんだから結構いるんだろねきっと。)
「〜私たちが知り合ったきっかけは、ある本屋の袋に入っていた一枚のチラシでした......」ってか。

AltStyle によって変換されたページ (->オリジナル) /