連載:「トホホ書店員はホンと年中無休」

第1章 書店の1日

1.朝〜怒涛の雑誌出し

書店の1日は、雑誌・書籍の検品・品出しから始まります。この作業は書店の仕事の中でも指折りの肉体労働。なめてかかると痛い目に遭いますぞ。

だいやまーくカレーなる台車さばき

時は開店1時間前。店の入り口にうず高く積み上げられた雑誌・書籍の梱包の山・山・山......。
それを掻き分け掻き分けて店内に入ることから書店員の朝は始まるのでございます。

梱包の個数はその日によって、また店の規模によってもまちまちですが、私の勤めている書店では平均150個前後くらいでしょうか。
店に着いたら息つくひまも無く、今度はそのうず高く積まれた山のごとき雑誌の梱包を切り崩し、そして台車にて売場の所定の位置まで運ばなければなりません。
台車に人の丈ほどにも積み上げられた梱包を2人がかりで(ときには3人がかり)必死に押さえ、運んでゆくわけですが、台車の上の梱包は非常に絶妙なバランスにて積み上げられており、台車を押すさいには慎重に慎重を重ねた安全運転が求められるわけです。

ですが、しかしときにはハンドル操作ミス?や急ブレーキなどで、積み上げていた梱包が雪崩のごとくくずれれ落ちる、という悲劇が起きるというのもしょっちゅうでございます。
まさに注意一秒怪我一生。急のつく操作は控えめに、といった趣。

ここで荷物を積み降ろす際に個数確認も同時に行うわけですが、ごくまれに、いや、結構頻繁に「荷物が1個足りない......」などという緊急事態が発生いたします。
「もしかして私は数が数えられなくなったのか??」
などとうろたえ、150もの梱包を2回も3回も数えなおしということも......。

開店までの1時間。それは雑誌の梱包との闘い。
1時間というタイムリミットの中で山のように積まれた雑誌の梱包を解き、検品し、そしてそれぞれのジャンルの場所に運んで行くのです。
しかしまたこれが重いのです。特に女性誌は重い! 本当に重いです。「家庭画報」とか、「JJ」・「CanCam」あたりは特に。
この作業の繰り返し・積み重ねが書店員の二の腕をたくましくし、また書店員に腰痛をもたらすのです。

そして今度は付録付けが......。

だいやまーく付録付けの恐怖

雑誌には様々な付録がついております。音楽誌にはポスターが、女性向けファッション誌にはコスメカタログが、奥様向け雑誌にはかんたんレシピのようなものが、幼年誌には......。書き出すと際限なくなるのでやめときます。

とにかくここのところの雑誌付録の乱立ぶりは目に余るものがあります。まあこの出版不況のいま、生き残り競争に勝ち抜くために各社各誌付録にエネルギーをそそがねばならん、という台所事情もわからんでもないですが。しかし、いつぞやの某誌のトートバッグなど、本誌と付録、一体どちらがメインなのかわかりゃーしません。完全に原価割れしてるとしか思えませんが。

さて、この海千山千の付録たち、出荷段階から本誌に付属しているのではありません。これは書店員が毎朝毎朝毎朝、ひとつずつビニール紐もしくは輪ゴムでくくりつけているです。その様たるや、まるで「あヽ野麦峠」。
「めばえ」「たのしい幼稚園」「小学一年生」など幼年誌・児童誌が集中する月末は、付録は付けども付けども減ることは無く......。

そんな付録付け作業。いくつかの苦痛が伴います。
何かと申しますと、輪ゴムで付録を留めている書店の場合、
「パチン!」
という乾いた音と苦悶の表情の書店員、という光景が日常的に見られます。そうです、輪ゴムが切れて書店員の手にゴムパッチン。音楽誌など大判の雑誌にポスターを留めるときなどは必ずこの恐怖が伴います。このゴムパッチンの恐怖からのがれるためには、

?@有名メーカーの上質なゴムを使用せよ。
?A古く、硬くなったゴムは使うな。

の、2点を守るべし(って、書店員限定ですが)。

恐怖はゴムのみならず。ポスターの紙質もあなどれません。一種の凶器でございます。
よく書店員は指を切ります。特にポスターが付録の場合、勢い余ってポスターで「スパッ!」と......。ポスターは厚くて硬い。そんな紙で指を切るとそれはそれは痛いのです。書店にカットバンは必需品。

「パチン!」
「スパッ!」
この恐怖にあえぎながらも、今日も付録をコツコツと付けるのです。

だいやまーく雑誌迷宮

毎朝雑誌出しをしておりますと、「雑誌迷宮」なるものに迷いこんでしまうことがあります。
あるジャンルの雑誌が特定の日に集中して入ってくることは多々あります。そんな時、書店員は猫の額・ワンルームのようなスペースに、山のような本日入荷を前にし、一体全体どうやってこの山を猫の額に押し込めばよいのか? と頭を抱えます。ここで迷宮入り。まるでパズルを解いているようでございます。

パチンコ誌、そしてアダルト誌(直截にいいますとエロ本ですか)、これら二つはどれもこれも競った様に表紙が原色ド派手でギラギラしていて暑苦しいことこの上ありません。ここの入れ替えもある意味生き地獄。あまりのドギツさに悪酔い。仕事としてのエロ本には扇情的な部分などかけらもなく、そしてまたまた迷宮入り......。

まさに時の経つのも忘れてしまうひととき?です。

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