ここでは計画論としての経営方針について整理します。でも,基本計画との位置関係から説明していく必要があるのが,ある意味最大の課題かもしれませんね...
【参考】
1)経営方針策定の意義
水道における一般的な基本計画については別のページに掲載していますが,水道で基本計画というと,下図の下側のフローで示すように,需要予測>施設計画>財政計画,のフローで作成するのが普通でした。つまり,必要な大きさを決めて,必要な施設を決めて,必要な費用を決める。お金がたりないときは料金アップで回収をはかるわけです。実は認可申請書の掲載順序もこうなっています。
でも,これは,要するに,拡張の時代のロジックなわけであります。
これからのほとんどの水道経営では,まず現在の経営状況を診断したうえで,投資可能な範囲を探り,そのうえで,供給条件の方をきめていかなければなりません。現代において,料金アップを前提とした拡張計画は許容されにくいケースが多いことなどを考えると,場合によっては区域拡張をあきらめるようなことも必要になるでしょう。
このように,今後の基本計画では,需要予測の前にまず経営診断を中心とした情勢分析(需要予測もここに含まれる)を行い,その結果を技術的かつ経営的に検討して,いかにして水道事業の経営を持続するか,にフォーカスすべきと考えます。
2)経営方針の策定にあたって検討すべき項目
経営方針を検討するためには,まず最初に事業の情勢を把握する必要があることは前述したとおりです特に重要なチェックポイントとしては以下のようなものが考えられますが,現状ではここまで視野に入れた計画策定は稀です。
【参考】
1)企業会計に基づいているかどうかの確認
一般的な水道事業は地方公営企業法に則って経営されており、企業会計基準に基づいた信頼に足る財務データがありますので、経営診断は比較的取組み安いといえるでしょう。ただし、簡易水道ではこのような複式会計のデータがないことがあるので、一気に経営診断はやりにくくなります。
なお、企業会計にのっとっていない事業を企業会計に則った経営に切り替える作業を「法適化」といいます。
近年、下水道とかでアセットマネジメントの必要性が指摘されることが多いのですが、企業会計に基づいた経営さえされてれば、必要最低限のアセットマネジメントは成立しているわけです。このため、水道で言うアセットマネジメントはもう少し高度なものになります。余談ですが。
2)経営診断指標の要目
経営は、経営の現状を把握し、将来にわたって経営を継続できるかどうかを、企業会計上の情報からチェックすることが中心です。いわゆる管理会計による、経営の健全性の把握です。
公営事業の場合、通常の私企業のような競争がなく、利潤の最大化を目的としていないため、経営診断の目的は「水供給の継続性の確保」に重きが置かれることになります。また、経営診断で見るべきポイントも、一般の私企業とは大きく異なってきます。
水道を含む地方公営企業の経営診断の指標については、地方公営企業年鑑が充実しており、これらの指標はそもそも「地方公営企業の経営分析に関する研究」(昭和54年3月、地方自治協会)にて整理されたものがスタートとなっているそうですが、時代の変化に基づいて断続的に見直されており、最近では、経済性の視点などがより強化されてきているとのことです。
大枠としてのチェック項目はおおよそ以下のようになっていますが、これは資料によってまちまちです。
【参考】
お金面でのチェックはこんなところですが、お金以外のチェックも重要。この辺もあわせて経営診断を行うことになります。後日追記予定。