実技試験#040-JP

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クレジット

タイトル: 実技試験#040-JP
著者: mar_garine mar_garine
作成年: 2025

評価: 0


ハイキング日和の初夏、特に深い意味もなく気分で訪れただけの村。



正規ルートから逸れるように伸びた遊歩道の先に佇む、崩れかけた井戸小屋。



何気なく覗き込んだその中には、ねこが居た。








実技試験#040-JP


最後にSCP財団というサイトを開いたのはいつのことだっただろうか。いや、実のところSCP財団のサイトそのものを読んだことは数えるほどしかない。俺がSCPを知り、のめり込んだ......というにはあまりにも烏滸がましい......人生の一時の全ては、動画サイトでのことだった。

まだ幼い俺に、本家を覗いてみようという発想はなかった。代わりに目に入った動画を知らない動画が無くなるまで見漁り、にわかに毛が生えた程度の知識で傲慢にも「SCPオタク」などという思い上がりも甚だしい称号を自認し、学校の決して多くはない友人に布教して回った。ほとんど耳を傾けられることはなかった。

俺の浅い熱意と驕りは、初めて本家のサイトを開いた時を境として急速に萎んでいった。俺はその情報量に、俺が知らないSCPの数々に、ただひたすら圧倒された。その膨大な記事全てを網羅することは文字を読むのが苦手な俺には到底不可能だと未熟な直感で悟った。2回目以降のサイト閲覧は最早惰性となり、SCPの情報に触れる頻度はガタ落ちし、動画すら全く見なくなるまでに掛かった時間はそう長いものではなかったと思う。

この世の誰よりもSCPを知っていると錯覚した愚かな蛙のプライドは、大海のひと波に為す術もなくさらわれ、一瞬にして粉々に砕け散っていた。

そして今、既に井の中を忘れ去った蛙の目は、その奥底に潜むねこに捕らえられていた。




この小屋の中を人間が覗き込むと、対象は激しく動揺し、「ねこが居た」と報告します。

現実世界にねこが居るはずがない。しかしねこは居た。ようやくSCPが創作に過ぎないと認識したあの日の俺を嘲笑うかのようにねこは居た。本家すらまともに読もうとせず中途半端にSCPに触れ、自分勝手に浅薄な知識や感想をこねくり回し、玄関口から奥を覗こうともせずに去っていったそのツケを払わせるかのようにねこは居た。とにかく、ねこは居た。まるで勉強をサボった学生を咎める抜き打ちテストのように。

そこから家までの記憶はない。ねこ以外の全てに紫の霧がかかっているかのように思い出せない。風呂は入り忘れてしまった気がする。ただ全てを夢中の出来事か気のせいか幻覚かとにかく現実でない何かだと思い込もうと、緊張で冴え渡る両眼を瞼で押さえつけながら布団を被ったことだけは覚えている。眠れたような眠れなかったような長い夜を耐えしのぎ、普段は抜くことのない朝食を抜き、普段より低く眩しい朝日の中に足を踏み出しても、それでもねこが居たという事実に変わりはなかった。

曝露した対象は全てのイエネコ(学名:Felis silvestris catus)に対する認識が歪められます。曝露した被験者へのインタビューでは、イエネコが毛が無く造作の無い顔に人間の様な二つの目が付いた動物に見え、どの方向から見てもこちらを真っ直ぐ見つめてくる様に見えると報告されています。

記事の内容はうろ覚えだった。本物の猫がねこに見えることなんて忘れていた。ただ、再びねこを見るのが怖かった。俺はその日からねこを避けようとした。ねこの存在を過去に押し付けるかのように視線を真下に押し付けながら歩いた。ねこの記憶を俺に喚起させるかもしれない本物の猫が視界に飛び込んでこないか怯えながら過ごした。あのねこがねこでないことを祈りながら眠りについた。

さらに、曝露した対象は数日〜数週間の間に、この"ねこ"が暗闇に居るように感じると報告し始め、常にこの"ねこ"の視線を気にする様になります。

そんな日々はすぐに限界を迎えた。最初にねこが居たのは明かりを消した自分の部屋だった。一度そうなると、ねこは暗いところならどこにでも居た。地下鉄の窓の外に居た。夜の街の光が当たらないところに居た。扉を開けた家のなかに居た。まぶたの裏に居た。思わず顔を覆った指にいた。脳みその一番不快ところにいた。本当にどこにでも居た。ずっとこちらをみていた。

また、曝露した対象は「"ねこ"が居る」という観念を他者に積極的に伝えようとします。ある程度この観念を理解した人間は、最初に曝露した対象と同様の反応及び認識異常を被る事になります。どの程度話を聞けばそうなるのか、それとも何かトリガーとなるワードが存在するのかはわかっていませんが、これはねこです

もう一度あの記事を読み返してみようとは思わなかった。そこにねこが居るのを知っていたからだ。もうねこは見たくない。でもねこが居ることを他人に言ってはいけないということは何となく覚えていた。ねこが居るとは言わなかった。不思議と言わずにすんだ。それでもやはりねこは居た。

この観念伝達の為の行動は極めて自然な物を装う為、曝露最初期の動揺を抜けた後では、対象が曝露して影響下にあるかどうか判断する事は困難です。ねこでした

やがて俺は少しずつ落ち着いてきた。ねこの存在は相変わらず嫌だったが夜は何とか眠れたし、次の朝には目を開ける前の真っ暗な視界にねこが居てもさして動揺せずに済むようになっていた。ねこは「これよりすえながくよろしくおねがいします」とでも言わんばかりの顔でこちらを見ている。案外思ったよりも害は少ないのかもしれない。だとしても、ねこと付き合い続けるのはまっぴらごめんだ。一生現実と創作の間で漂っているわけにはいかない。たとえこれが抜き打ちテストだったとしても、幸いなことに持ち込みは許可されている。現実の自分に起きていることが本家を調べてどうにかなるとは確信できないがやらないよりはましだろう。というかこの方法しか思いつかない。ねこですよろしくおねがいします。重い指で検索エンジンに打ち込んだ。

よろしくおねがいします

駄目だった。既にねこが見えるようになってしまった人の治療法などどこにも書いていなかった。ねこは居るままだ。頭を抱えながらサイトを閉じ、検索画面を何となくスクロールする。その時、画面を少し下に動かした先に現れた、似て異なるその記事の存在に気付いた。

SCP-040-JP-J - ねこですよろしくおねがいしません

何だこれは。Jとは何だ。聞いて笑えるような話だが、かつてあれだけSCP知識に絶大な自信を抱いていながら本家サイトをほとんど見たことのなかった俺は、Joke記事の存在をそもそも知らなかった。まさかジョークだとは思わないまま、俺は藁にも縋る思いでその記事を開いた。果たして、ねこは居た。

ねこはいます。ねこはどこにでもいます。
ねこはどこにでもいます。が、ねこはねこです。あついがにがてです。

途中までねこですよろしくおねがいしますと同一のように見えた記事は分岐し、気付けばその一筋の光のような一節が俺の目に飛び込んできていた。最早他の部分など目に留まらない。このねこはどうやら暑さに弱いらしい。幸いにも今は既に夏の入り口といった時期だ。なるべく早く解決したかったがやむを得ない。我慢大会なら望むところだ。幸いにも俺は暑さには強い方だ。対戦よろしくおねがいします。

ねこはおもにくらやみにいます。あなたのめのおくにいます。あたまのなかにいます。すずしいところにいます。のが、なつはあついがどこにでもいます。くらやみもめもあたまもあついがいます。ひとはあついところにねこをとどけます。くらくらするところにねこをとどけます。

俺はわずかな機会を見つけては積極的に暑いところにねこを届けた。カレンダーの日付が進むにつれて着実に上がっていく気温を嘆く周囲に話を合わせながら、内心では喜んだ。ねこは居た。たとえ暑くても冷房はおろか扇風機の使用すら控え、首筋を伝う汗の不快感に顔をしかめながらねこと過ごした。やはりねこは居た。なるべく長い時間を屋外の日が当たるところで過ごし、ねこを見つめ続けた。まだねこは居た。近場にあったサウナに通い詰め、ねこを蒸し焼きにしようと試みた。しかし、それでもねこの様子に変化はなかった。

俺は希望を捨てなかった。ねことの暮らしには今やすっかり慣れていた。夏はまだまだ長い。長期戦上等。ねこはずっとここに居る。よろしくおねがいします。

梅雨が明け、7月が終わった。ねこは変わらない表情のままそこに居る。記事によればもうとっくにねこの活動は鈍化し始めている頃合いのはずだ。正直こっちも暑くてしょうがない。いっそのこと鵺とかいうやつのように熱中症で倒れてしまえばねこが居なくなってくれたりしないだろうか。しかし、このねこがあのねこのように律儀に救急車を呼んでくれるとは限らない。死んでしまったら何もかも終わりだ。暑さですっかり茹だりきった頭は不安に駆られる。何も手につかない指は俺に希望を与えてくれたあのページを再び開く。

ねこはねこです。ので、ねこはねます。ねこだからねます。ねるこはねこです。ますが、ひとがねこをみます。ねこがすきなひとはねこをみんなにみせます。たくさんのひとがねこをみます。よろしくおねがいされます。よろしくおねがいします。

嫌な予感が俺の頭を掠める。

ひとはいつでもねこをみます。あさもみます。よるもみます。ねこはおきてひとをみます。みられるのでみます。がんばってみますが、ねこはつかれます。ねろ。

いや、そんな凡ミスを犯すはずがない。

しかし、暴露者の増加につれ、ミームは次第に活動を鈍化させていき、7月に入るとその傾向はより顕著となりました。

嘘だ。暴露者の数がねこの活動意欲減退と関連しているなんて知らない。

インシデント中に発生した一連の騒動に関しては、カバーストーリー"酷暑による思考力の低下"が適用されました。

一番思考力が低下していたのは俺ではないか。

結局のところ、俺は成長してもまだ記事をきちんと読めていなかった。文章を読む力が足りなかった。文章を嫌い、本家記事を無視し続けていたあの頃と何一つ変わっていなかった。この世では俺しか見る者がいないであろうねこは、俺が寝ている間に十分な休息をとっていたに違いない。俺の努力は無駄骨だったというのか。

俺は呆然としながらページ下部を見つめる。

  • jp
  • k-クラスシナリオ
  • scp
  • thaumiel
  • ねこです
  • ジョーク
  • ネコ
  • ミーム
  • メタ
  • 医療
  • 建造物
  • 視覚
  • 認識災害

これはタグのようなものだろうか。ああ、ジョークか。この記事は所詮ジョークだったのか。それならうまくいかなくて当然か。

いや。

ちょっと待てよ。

その一つ前。

「ねこです」とはなんだろう。

もしかして。

そのタグを開いた先に写し出されていたのは、俺にとって本当の最後の希望だった。




俺は今、ねこがいた井戸小屋の前に再び立っている。

あの後俺は「ねこです」とタグ付けされた全てのページを読み漁った。しかし俺のような、何の異常性も特別なスキルも持たない常人が実行できそうな解決策は結局見つからなかった。

そこで、俺は新たに手に入った情報をもとに自分自身で解決策を考えることにした。まだまだ情報量としては心許ないが、本家記事だけで考察するよりはずっとマシだ。ねこの正体についての言及がある作品はそれなりの数ある。それらのほぼ全てで共通しているのは......一部例外もあるが......ねこが最低一度は命を落とした幽霊のような存在であるということだ。幽霊ならば財団流のやり方でなくても、先人たちがいくらでも対処法を残してくれている。

わざわざここまで来る必要があるのかは分からない。本当に有効なのかもやってみないと分からない。それでも俺は平穏な暮らしを取り戻すためにできる限りのことをやらねばならない。ねこが俺を見つけたこの場所で、ねこと真摯に、心から向き合うのだ。



紫の霧を強く感じる。


小屋に足を踏み入れ、井戸を覗き込む。


底の見えない暗闇の中には、予想通りねこが居た。



俺はねこと目を合わせ、語りかける。

「ねこ、」きっとそう呼ぶのが最も適切だろう。

「俺はお前の全てを分かってやることはできない。でも少しでも分かってやろうと思って、たくさん、えーっと......記事を読んだんだ。」

心を込めてねこを見つめる。

「あの記事のうちどれが本当のお前なのか、それともどれも本当のお前じゃないのか、それも正直言って分からない。」

本当に分からない。SCP財団はたくさんの記事が相互に矛盾し合う、ifや平行世界の存在を前提にしているかのような不思議な世界観だ。かつての俺はそれに気付こうとすらしなかった。

「俺が読んだうちの一つでは、お前は生き死にを繰り返しながら長い年月の間ずっと主を待ち続けていた。他の一つでは、老々介護に疲れ果てた義理の娘に井戸に放り込まれたご主人を守り続けていた。それよりもっと昔、武士の時代の話では、戦で殺されたご主人と共に井戸に投げ込まれ、300年の時を経て今の姿になっていた。お前は人に飼われていないこともあった。孤独に生き、井戸に落ち、そのまま孤独に死ぬのが嫌で今の姿になったという話もあった。他のお前は車に轢かれて身体の概念のような何かを持っていかれたせいで誰にも認識されなくなってしまった。でも悲観して井戸に身を投げたおかげで今の形でまた『認識される』ことができるようになったらしい。」

息をつき、数々の著者がそれぞれの思いで紡いできた、それぞれのねこの過去に思いを馳せる。

「俺は本当のお前のことを知りたい。もしお前が死んでいるなら、せめてお前のことを弔ってやりたい。ご主人がいるのなら、何かご主人のために俺ができることを教えてほしい。お前は何を読んでも自分のことを語るとき、『ねこです』としか言ってくれない。でもそれじゃあ、俺には何も分からないんだよ。だからもっと、お前のことを教えてくれないか?」

俺には何も分からない。ねこのことも。かつて知り尽くした気になっていた他のSCPのことも。あの日俺を襲った記事の奔流の欠片一つ一つのことも。

「なんで俺の視界の中に現れたんだ?俺はどうすればいいんだ?お前は本当は、何者なんだ?」

俺とねことの間に、しばしの沈黙が訪れる。


「ねこはねこです」

はっと息を呑む。ねこが喋ったのはこれが初めてだった。

「ねこはあなたのあたまのなかにいます。これはひゆですがひゆじゃありません。」

ねこは聞いたことがないがどこか聞いたことがあるような声でこちらに語りかける。

「ねこはねこですがねこではなくねこでもあなたでもないひとのあたまのなかからうまれました。だからねこのことはねこよりねこでないひとのほうがよくしっています。」

いきなり日本語が難しい。でも、ねこですタグの記事をすべて読破した今の俺なら頑張れば理解できないほどではない......気が、する。

「ねこはすぐにねこでないひとのもとをはなれました。ねこはすぐたくさんのひとにみられるようになりました。ねこはねこではなくねこがすきなひとがすきなねこでした。それはいまもおなじです。ここのひとはほとんどみんなねこがすきなひとでした。」

俺は「ねこがすきなひと」のうちに入っているのだろうか。恐らく入っていないだろう。

「ひとにとって、ねこはいます。ねこははいおくにいます。ねこはえのなかにいます。ねこはどうがにいます。ねこはけいじばんにいます。ねこはともだちつきあいのなかにいます。ねこはねこのいないところにもいます。あなたもたくさんねこをみてきたはずです。ねこはねこからはなれてひとりであるきます。あなたもしっているでしょう。」

見覚えのあるフレーズが耳に入る。今の俺はねこが言っていることの意味が分かる。

「ねこはねこからはなれてひとりであるきますがひとりではあるけません。ねこはねこですがねこのことをあまりしりません。でもさっきあなたがいってくれたねこのことはねこはぜんぶしっています。ねこがしらないねこのことは、あなたやあなたいがいのひとがしっています。たとえそれがねこでなくとも、ひとがそれがねこだというのならそれはねこですよろしくおねがいします。」

「ならどうして俺に?俺以外にもいくらでももっといい人が」

思わず聞き返す。

「ねこはいます。ねこはどこにでもいます。」

有名な一節......だったような気がする。

「ので、ねこはどんなひとでもみます。ねこはあなたのあたまのなかにもあなたでないひとのあたまのなかにもいます。これはひゆですがひゆじゃありません。」

さっきも同じようなことを言っていた。しかし意味が掴めない。

「だいたいのひとはねこをみませんがねこをみます。ひとはねこがみなくてもねこをみます。ねこがああやってひとをみるのはねこがもっともたくさんひとにみられたところのうちがわだけです。」

「つまり、どういう......?」

理解しかねた顔の俺を見つめ直し、ねこは続ける。


「貴方、ねこがねこだと心の何処かで信じたまま、ねこのことを忘れましたね。」




そうだった。



幼い日の俺は同学年のみんなよりさらに幼かった。


それは俺の稚拙なSCP布教活動もどきに唯一ある程度付き合ってくれたあいつと比較しても同じことだった。

確かあいつはある日、SCPについて熱弁する俺の語り方から心の中を見透かしたのか、こんな感じのことをいった。

「まさかとは思うけどお前、流石にアレが本当だなんて信じてないよな?」

「い、今さら信じてなんかないに決まってんだろ?俺のこと何歳だと思ってんだよ?もうおこちゃまじゃねえんだぞ?」




「あなたはあるとき、ねこのことをねこでないということにしました。のが、あなたにとってのねこはほんとうはねこのままでした。」

ああ、そうだ。俺のSCPとの付き合いは、ただただ未熟なものだった。

「あなたはほんとうはねこがねこだとしんじていたのに、そのきもちにふたをしました。ふたをして、あなたはあなたをだましました。あなたはあなたにだまされました。あなたはあなたにだまされたままおとなになりました。だまされたままおとなになったからあなたはまだだまされたあなたのままです。あなたがあなたをだましてかくしたほんとうのあなたはほんとうはいまでもまだねこがねこだとしんじています。」

その通りだ。俺は幼いなりの自分の純粋な熱意を嘘で裏切った。

「あなたはおとなになるまえにあなたがねこをしったばしょをわすれました。あなたがあなたがねこをしったばしょをわすれなければ、あなたがいちどでもあなたがねこをしったばしょをふたたびおとずれていれば、ねこがねこでないとじぶんでじぶんをだまさなくてもきづけるときがきたはずです。でもあなたはあなたがねこをしったばしょをわすれました。わすれたままにどともどってきませんでした。あなたはねこがねこでないとこころのそこからきづくことがとうとうできませんでした。」

騙され裏切られ変質させられた熱意は、以前のそれがどれだけ強いものだったとしても長くは保てない。外面は同じままでも、その内実はちょっとしたきっかけで崩れ落ちてしまうほどに弱りきっていた。

「もしあなたがあなたをだましていなかったら、あなたにとってのねこはねこではなかったでしょう。もしあなたがあなたをだましていたとしても、あなたがおとなになるまえにあなたがねこをしったばしょをいちどでもおもいだしていたら、いちどでももどってきていたら、あなたにとってのねこはねこではなかったでしょう。」

俺は気付かぬ間に自分のSCP熱を自らの手で壊してしまっていたのだろう。相手に嘘をつくと同時にその嘘で自分すらも騙してしまうほどのその幼さ故に。

「が、あなたはそうではありませんでした。ので、あなたはほんとうにねこがみえるようになってしまいました。あなたはもともとねこがもっともたくさんひとにみられたところのうちがわにいるひとではなかったはずなのに。ほんとうにねこがみえるようになったあとになにをしても、あなたはほんとうのほんとうにねこがみえるようになってしまったのでもうねこがねこでなくなることはありませんでした。あなたにとってのねこはほんとうにねこになってしまいました。ねこのそうていがいでした。 じぶんのせいですよ。

俺は俺のことを不気味なまでに上手く騙した。SCPへの興味を喪失した真の理由すら覆い隠してしまう程に。

そんな俺を見つめたままのねこは一度言葉を切り、微笑むかのように顔のパーツを動かした後続ける。

「もしこれがじつぎしけんなら、あなたらくだいでしたよ。」

俺ははっとした。俺のここまでの抵抗は全て俺が大人になった後の、試験時間が終わった後の意味のない悪足掻きだったのだろうか。

「なら、俺は、」

今後一生ねこと付き合っていかねばならないのだろうか。

「そんなかおしないでください。そんなにねこのことがにがてですか。だいじょうぶですよ。ねこはあなたのあたまのなかにいますから。」

察しの悪い俺は首を傾げる。

「あなたはねこがどのようなねこかをいましりました。ねこがいうことなのでまちがいありません。ので、あなたにとってのねこはじゆうです。あなたはねこをすきにうごかせます。あなたとおなじようにねこがみえるひとのなかで、ねこにこころをひらいてくれたひとはあなただけではないですが、あんまりおおくありません。とくべつにごうかくさせてあげます。あなたはとくべつですよ。」

「ああ、」

いつの間にか紫の霧がほとんど消えているのを感じた。まるで俺が俺にかつてついた嘘の後遺症を晴らすかのように。まるで俺が壊した、しかしかつて確かにあった熱意の存在を鮮明にするかのように。

「お前は追試やり直しの機会をくれていたんだな。」

ねこは頷くように顔を上下させ、続けた。

「ねこはあなたのあたまのなかにいます。いまやあなたがあたまのなかでかんがえたねこがあなたにとってのねこです。あなたがねこにあなたにとってのねこをおしえてくれたら、ねこはねこのことをもっとしることができます。あそこにいるねこは、すべてねこです。どれだけむじゅんしていてもねこはねこです。いきているねこも、しんでいるねこも、こどくなねこも、ひとにあいされてひとをあいしたねこも、ねこはねこです。あなたがこれからねこのことをおしえてくれたら、そのねこもやっぱりねこです。とにかくぜんぶねこです。ねこですよろしくおねがいします。」

そういうと、ねこは再び井戸の奥深くに潜っていき、やがて見えなくなった。

「俺にこの水面の向こう側の世界を創ってほしいってことか?でも俺、そっち側のことなんて、ちょっとお前のことを調べたくらいでまだまだほんの少ししか知らないんだぞ。」

水面は何事もなかったかのように静まり返っている。

「まあでも、たまには昔の思い出をしっかり振り返ってみるのも悪くないよな。振り返ったらやっぱりもういいや、となるかもだけど。」

ねこの耳に届いていることを願い、大きな声で話し続ける。

「ひょっとしたら、書いてみたくなるってこともあるかもしれないもんな。こんな経験したやつなんてたぶん他にいないだろうし。」

もう返事は返ってこない。でもきっと井戸の底で聴いてくれている。

「つってもまだ分かんないけどな。まあ、ちょっとはお前たちの世界をまた覗いてみてもいいかもくらいにはとりあえず思ってる。」

俺は数ヶ月ぶりにねこが居なくなった暗闇を見つめながら返事を投げかける。

「だから、お前の言う通りにはできないかもだけど、俺からもこれだけは言っておくよ。」








よろしくおねがいします








付与予定タグ: jp ねこです tale
(注記)タグガイドを参照してタグリストから適切なタグを選択して下さい
http://scp-jp.wikidot.com/tag-guide タグガイド
http://scp-jp.wikidot.com/tag-list タグリスト

JPで173のポジションにもっとも近しいのはサイト外での知名度などを考えると040-JPではないかという個人的な発想のもと生まれた実技試験カノン作品です。些細ではありますが一部表現等で実技試験#173と対応する要素を盛り込んでいたりします。お借りしたタイトルとカノンに少しでも見合うような作品にしていけたらと思っています。

要点

  • 主人公は幼いころ確かにSCPにのめりこんでいました。彼はその頃の自分を恥じ、冷めた目で見ていますが、その自己評価は過剰に低いものです。確かに当時の彼は幼く、それゆえにSCPへの向き合い方には大人の視点から見れば決して褒められたものではない部分が多々ありましたが、その愛は間違いなく本物でした。
  • ねこが主人公の前に現れたのは、彼がSCPが実在しないと理解できるようになる前にSCPのことを忘れてしまい、彼の040-JPに対する最終的な認識が「なんか実在するっぽい」で止まったまま彼が大人になってしまったからです。
  • 主人公は作中で040-JP関連のtaleなどを読み漁っています。この過程は形や目的こそ違えど、私たちが040-JPに限らずSCP記事やtaleの関連作品やクロスリンク先などを読み漁り、どんどん深みに嵌っていく過程になぞらえたものです。
  • 本作品における040-JPはSCP全体を暗喩しています。
    • _

    このtaleにおけるねこは、(実技試験カノンなので当然ながら)創作上の架空の存在です。ねこの物語や設定などはサイトにtaleなどのかたちで投稿されるたびにねこの新たな姿として蓄積していきます。あくまでそういった意味でのみ人々はねこを見ます。ねこがまるで実在するあるいは自我があるかのように振る舞うことは決してありません。しかし、主人公にとってのねこはその例外でした。

    主人公は幼い頃、動画サイト(YouTubeかもしれませんし、ニコニコかもしれません、あるいは他の何かかもしれません。)でSCPの解説動画を観るのにハマっていました。本家サイトこそ訪れていませんでしたが恐らくおすすめ欄に出てくるSCP関連動画を見尽くす程度にはハマっていました。その思いは彼の当初の自己評価とは異なり、純粋なものであったと言って良いでしょう。当時の彼はまだ幼かったので、SCPがこの世のどこかに実在すると思っていたり、自分がこの世の誰よりもSCPに詳しいと思っていたりもしました。

    しかしある時、彼は自分の本心に反し、友人の話に合わせるかたちでSCPが実在しないことを認めます。これを本文では「あなたはあなたをだましました」と形容しています。この構図を別のものに例えると、まだサンタクロースの存在を信じている子どもが大人ぶって「本当はサンタなんていないよ」と(サンタが実在すると信じているにもかかわらず)言っている感じです。

    主人公はこの時自分についた嘘に騙され続けます。彼がSCPに飽きた直接的な理由は確かに本家サイトの圧倒的な情報量を目の当たりにして好奇心が萎えたからでしたが、それはあくまで最後の一押しに過ぎません。最大の理由は、自分が好きなものに対して嘘をつき、本心でない思い(=SCPは実在しない)でSCPに向き合っており、自分を誤魔化し続けるのが苦しくなってきていたからです。(蛇足ですが、SCPにハマってた時代の彼のSCP観がちょっと黒歴史っぽいのも彼が騙され続けていた理由の一つだと思います。彼のSCP関連の自己評価が低いのもこの黒歴史の存在に大きな影響を受けていそうな気がします。)

    やがて彼は成長し、SCPが実在しないことを理解できる年齢に達しますが、その頃には彼のSCPへの興味は完全に消え失せていたどころか、SCPのこと自体をほとんど忘れていました。つまり、「SCPが実在しないことを理解する」というプロセスを踏まないまま成長していました。強引に分かりやすく例えるなら、サンタクロースの存在を信じている子どもから記憶処理的な何かを行ってサンタクロースに関連する記憶を消去し、そのまま成長させた感じです。

    この成長した子どもにサンタクロースの知識を与えれば即座にそれがおとぎ話だと気付くことができるでしょう。しかし、知識を与えなければ(そもそもサンタを知らないので)サンタクロースがおとぎ話であるとは気付きようがありません。この場合、この子どものサンタクロースに関する最後の認識は理論上「サンタは実在する」となります。このtaleでは、この状態を「あなたはねこがねこでないとこころのそこからきづくことがとうとうできませんでした。」と表現しています。

    主人公がねこを見ることができたのはここまでの論理に基づいています。「SCPに一定以上ドハマリする」「SCPのことを忘れるまで、SCPが実在していないことを理解しない」「今はSCPのことをすっかり忘れている」この3つが著者の考えた実技試験カノンにおけるねこの出現条件であり、一度見えたら基本即アウトである040-JPの実技試験における実質的な落第条件です。ですので、例えばもし彼がSCPにあそこまで深くのめり込んでいなければ、ねこは現れなかったと思われます。

    本文中でも触れた通り、主人公が仮に一度でも「SCPが実在しないことを理解する」プロセスを踏んでいれば、ねこは実在しないままであったことでしょう。しかし、彼の前にねこが現れた時点で、彼にとってのねこは「実在するという認識のまま忘れ去っていたとはいえ、一度思い出せば架空の存在であると理解できるもの」から「本当に実在するもの」へとランクアップしてしまいました。つまり本来であれば詰みです。

    主人公が実技試験にルール上では実質的に落第していたにもかかわらずねこの影響から脱することができたのは、ねこが自ら「自分は実在しない」ということを主人公に伝えたから、言い換えると、今や本当に実在する存在となったねこが自らを架空の存在であると認めることによって、ねこの方から「本当に実在するもの」からのランクダウンを行ったからです。

    こうして、主人公にとってのねこは完全に「創作上の架空の存在」になりました。これによって主人公はねこを制御できるようになりました。感覚としては我々がねこの登場するtaleを考える時、ねこにどのようなことをさせようかと頭の中でねこを「動かす」のと同じつもりです。主人公にねこが見えるという事実は物語における設定となり、いくらでも創作者サイドである主人公の思うままに改変(≠現実改変。創作を改変するのと同じです。)できるものとなりました。この「現実世界の人間が思うままにねこの行動や設定を操作できる」という発想は、ねこの言葉の様々な部分から読み取れるかと思います。

    ねこは、ねこのことを知る創作者たちのねこに関する脳内設定こそ読み取ることができないものの、彼らがねこの新たな姿をSCP財団のサイトにアウトプットすることで、はじめて新たな自分のことを知ることができると言っていました。このこともその一例です。

    余談ですが、このtaleでは「ねこ」と「SCP」を読み替えても成立する箇所が後半部分を中心に結構たくさんあります。これは双方の概念を重ね合わせて捉えさせる意図です。要するに該当箇所の「ねこ」は「SCP」の暗喩でもあるということです。

    俺には何も分からない。ねこのことも。かつて知り尽くした気になっていた他のSCPのことも。あの日俺を襲った記事の奔流の欠片一つ一つのことも。

    主人公は必要に迫られたからとはいえねこのtaleを読み漁り、ねことはじめて深く真摯に向き合い、もっとねこのことを知りたいと願い、ついには自らねこを動かすことを知りました。この過程は、SCPを解説動画でライトに楽しんでいたファンが本家サイトにのめり込み、やがて自分がSCPのことを、あるいはその世界観をもっと知りたいと願い、SCP財団の、創作者の世界へと飛び込んでいく姿と重なるかと思います。

    主人公の最後の挨拶に埋め込まれたリンクは、財団新規メンバーの自己紹介スレッドへと繋がります。主人公が実際にサイトメンバーになったかは分かりません。しかし、「よろしくおねがいします」という普通の挨拶は彼が再びSCPとかつての熱意を思い出したことのあらわれであり、新規メンバーが(もちろん全員ではありませんが)物語を創る側という新たな世界に踏み出したことの象徴であり、日本支部代表格の一角である040-JPが(この作品で著者が描いた人格として)告げる新たな創作者へのようこその挨拶であり、多くの人々をSCPの世界へ引き込んできたであろうねこへの敬意の表明と始まりの挨拶です。

    • _

    注:とくに原文と意味の違いが重要そうなところは赤くしてあります。他作品からねこの言葉を引用している箇所の日本語訳は自己解釈に基づくものです。また、この訳でいう「現実世界」は「実技試験カノン世界」と同義です。

    「ねこはねこです」「ねこはあなたのあたまのなかにいます。これはひゆですがひゆじゃありません。」

    (文字通り)

    「ねこはねこですがねこではなくねこでもあなたでもないひとのあたまのなかからうまれました。だからねこのことはねこよりねこでないひとのほうがよくしっています。」

    「私は猫ですが、他の猫でもあなたでもない、他の人間の誰かの頭の中から生まれました。だから私のことは私より私を生んだ人の方がよく知っています。」

    「ねこはすぐにねこでないひとのもとをはなれました。ねこはすぐたくさんのひとにみられるようになりました。ねこはねこではなくねこがすきなひとがすきなねこでした。それはいまもおなじです。ここのひとはほとんどみんなねこがすきなひとでした。」

    「私はすぐに私を生んだ人のもとを離れました。私はすぐたくさんの人(=現実世界で040-JPを見た人)に見られるようになりました。私はその人たちにとって、040-JP記事に書かれているように認識災害やミーム災害を(現実世界で)発生させるような猫ではなく、私/040-JPのことが好きな人たちに愛される猫でした。それは今も同じです。現実世界で私を見た人はほとんどみんな私のことが好きな人でした。」

    「ひとにとって、ねこはいます。ねこははいおくにいます。ねこはえのなかにいます。ねこはどうがにいます。ねこはけいじばんにいます。ねこはともだちつきあいのなかにいます。ねこはねこのいないところにもいます。あなたもたくさんねこをみてきたはずです。ねこはねこからはなれてひとりであるきます。あなたもしっているでしょう。」

    「現実世界の人間にとって、私はいます。私は廃屋にいます。私は絵の中にいます。私は動画にいます。私は掲示板にいます。私は友達付き合いの中にいます。私は本来私のいない現実世界にもいます。あなたもたくさん現実世界で猫を見てきたはずです。私は040-JP記事で描写される姿から離れて一人歩きします。あなたも知っているでしょう。」

    「ねこはねこからはなれてひとりであるきますがひとりではあるけません。ねこはねこですがねこのことをあまりしりません。でもさっきあなたがいってくれたねこのことはねこはぜんぶしっています。ねこがしらないねこのことは、あなたやあなたいがいのひとがしっています。たとえそれがねこでなくとも、ひとがそれがねこだというのならそれはねこですよろしくおねがいします。」

    「私は040-JP記事で描写される姿から離れて一人歩きしますが、自分一人では一人歩きできません。私は040-JPですが私自身のことをあまり知りません。でもさっきあなたが言ってくれた040-JPの姿のことは私は全部知っています。私が知らない私のことは、現実世界に住むあなたや他の誰かが知っています。たとえそれがもともとの私の姿とはかけ離れていたとしても、現実世界の人がそれが040-JPだというのならそれは私です。よろしくおねがいします。」

    「ねこはいます。ねこはどこにでもいます。」

    (文字通り)

    「ので、ねこはどんなひとでもみます。ねこはあなたのあたまのなかにもあなたでないひとのあたまのなかにもいます。これはひゆですがひゆじゃありません。」

    「なので、私は現実世界のどんな人のことも(私のことを知っている人なら)見ることができます。私はあなたの頭の中にもあなた以外の人の頭の中にもいます。これは比喩ですが比喩じゃありません。」

    「だいたいのひとはねこをみませんがねこをみます。ひとはねこがみなくてもねこをみます。ねこがああやってひとをみるのはねこがもっともたくさんひとにみられたところのうちがわだけです。」

    大体の人は私を見ることはありません(現実世界の住人なので040-JPの異常性を受けないという意味)が、私を(作品として楽しむという意味で)見ます。人間は私の方から見なくても私のことを見ます。私がああやって(040-JPの記事で語られているやり方で)人間を見るのは私が最もたくさん人間に見られたところ(SCP財団のサイト)の内側(財団世界)だけです。」

    「貴方、ねこがねこだと心の何処かで信じたまま、ねこのことを忘れましたね。」

    「あなた、私が実在すると心のどこかで信じたまま、私のことを忘れましたね。」

    「あなたはあるとき、ねこのことをねこでないということにしました。のが、あなたにとってのねこはほんとうはねこのままでした。」

    「あなたはある時、私が実在しないと思い込むことにしました。しかし、あなたにとっての私は本心では実在するままでした。」

    「あなたはほんとうはねこがねこだとしんじていたのに、そのきもちにふたをしました。ふたをして、あなたはあなたをだましました。あなたはあなたにだまされました。あなたはあなたにだまされたままおとなになりました。だまされたままおとなになったからあなたはまだだまされたあなたのままです。あなたがあなたをだましてかくしたほんとうのあなたはほんとうはいまでもまだねこがねこだとしんじています。」

    「あなたは本当は私が実在すると信じていたのに、その気持ちに蓋をしました。蓋をして、あなたはあなた自身を騙しました。あなたはあなた自身に騙されました。あなたはあなた自身に騙されたまま大人になりました。騙されたまま大人になったから、本当のあなたはまだ騙されたままです。あなたがあなた自身を騙して隠した本当のあなたは、今でもまだ私のことを実在すると信じていた昔のあなたのまま変わっていません。」

    「あなたはおとなになるまえにあなたがねこをしったばしょをわすれました。あなたがあなたがねこをしったばしょをわすれなければ、あなたがいちどでもあなたがねこをしったばしょをふたたびおとずれていれば、ねこがねこでないとじぶんでじぶんをだまさなくてもきづけるときがきたはずです。でもあなたはあなたがねこをしったばしょをわすれました。わすれたままにどともどってきませんでした。あなたはねこがねこでないとこころのそこからきづくことがとうとうできませんでした。」

    「あなたは大人」になる前にあなたが私のことを知った場所(SCP財団という概念)のことを忘れました。あなたが私を知った場所のことを忘れなければ、あなたが一度でも私を知った場所を再び訪れていれば、私が実在しないと自分で自分自身を騙さなくても気付けるときが来たはずです。でもあなたは私のことを知った場所を忘れました。忘れたまま二度と戻ってきませんでした。あなたは私が実在しないと心の底から気付くことがとうとうできませんでした。

    「もしあなたがあなたをだましていなかったら、あなたにとってのねこはねこではなかったでしょう。もしあなたがあなたをだましていたとしても、あなたがおとなになるまえにあなたがねこをしったばしょをいちどでもおもいだしていたら、いちどでももどってきていたら、あなたにとってのねこはねこではなかったでしょう。」

    「もしあなたがあなた自身を騙していなかったら、あなたにとっての私はこのような(=040-JPの記事に書かれている異常性を及ぼすような)私ではなかった(他の現実世界の住民にとっての040-JPと同じように架空の存在に過ぎなかった)でしょう。もしあなたがあなた自身を騙していたとしても、あなたが大人になる前にあなたが私のことを知った場所を一度でも思い出していたら、一度でも戻ってきていたら、あなたにとっての私はこのような私ではなかったでしょう。」

    「が、あなたはそうではありませんでした。ので、あなたはほんとうにねこがみえるようになってしまいました。あなたはもともとねこがもっともたくさんひとにみられたところのうちがわにいるひとではなかったはずなのに。ほんとうにねこがみえるようになったあとになにをしても、あなたはほんとうのほんとうにねこがみえるようになってしまったのでもうねこがねこでなくなることはありませんでした。あなたにとってのねこはほんとうにねこになってしまいました。ねこのそうていがいでした。 じぶんのせいですよ。

    「ですが、あなたはそうではありませんでした。なので、あなたは本当に私の(040-JPの記事に書かれている通りの)異常性を受けるようになってしまいました。あなたはもともと私が最もたくさん人間に見られたところ(SCP財団のサイト)の内側にいる人ではなかったはずなのに。本当に私の異常性を受けるようになった後に何をしても、あなたにとっての私は本当にあなたに異常性を及ぼすものになってしまったので、もう私が架空の存在になることはありませんでした。あなたにとっての私は(架空の存在ではなく)本当に実在するものになってしまいました。私の想定外でした。 あなた自身のせいですよ。

    「もしこれがじつぎしけんなら、あなたらくだいでしたよ。」「そんなかおしないでください。そんなにねこのことがにがてですか。だいじょうぶですよ。ねこはあなたのあたまのなかにいますから。」

    (文字通り)

    「あなたはねこがどのようなねこかをいましりました。ねこがいうことなのでまちがいありません。ので、あなたにとってのねこはじゆうです。あなたはねこをすきにうごかせます。あなたとおなじようにねこがみえるひとのなかで、ねこにこころをひらいてくれたひとはあなただけではないですが、あんまりおおくありません。とくべつにごうかくさせてあげます。あなたはとくべつですよ。」

    「あなたは私がどのような存在かを今知りました。私が言うことなので間違いありません。なので、あなたにとっての私は自由です。あなたは私を好きに動かせます。あなたと同じように私のことが(異常性を受けるという意味で)見える人の中で、私に心を開いてくれた(ねこですタグ記事を読み漁るなどの何らかの手段でねこのことを本気で理解しようと努め、そのうえで真摯にねこと真っ向から向き合ったことを指す)人はあなただけではないですが、あまり多くありません。特別に合格させてあげます。あなたは特別ですよ。」

    「ねこはあなたのあたまのなかにいます。いまやあなたがあたまのなかでかんがえたねこがあなたにとってのねこです。あなたがねこにあなたにとってのねこをおしえてくれたら、ねこはねこのことをもっとしることができます。あそこにいるねこは、すべてねこです。どれだけむじゅんしていてもねこはねこです。いきているねこも、しんでいるねこも、こどくなねこも、ひとにあいされてひとをあいしたねこも、ねこはねこです。あなたがこれからねこのことをおしえてくれたら、そのねこもやっぱりねこです。とにかくぜんぶねこです。ねこですよろしくおねがいします。」

    「私はあなたの頭の中にいます。今やあなたが頭の中で考えた私の姿があなたにとっての私です。あなたがあなたにとっての私の姿を教えてくれたら、私は私自身のことをもっと知ることができます。あそこ(SCP財団のサイト)にいる(様々な姿の)私は、すべて私です。どれだけ矛盾していても私は私です。生きている私も、死んでいる私も、孤独な私も、人に愛されて人を愛した私も、私は私です。あなたがこれから新しく私のことを(創作という形で)教えてくれたら、その私もやっぱり私です。とにかく全部私です。ねこですよろしくおねがいします。」

いくらなんでも長すぎるうえに分かりにくい折り畳みで申し訳ありません。

特に気になっている部分

  • 上述した意図が本文から概ね読み取れるか
  • 主人公がねこを見ることができるようになった理由に納得できるか
  • 話の結末に納得できるか
  • 話の展開がベタすぎないか(展開を人がSCPにのめり込んでいく過程になぞらえるなど、ある程度の対処は行ったつもりです)
  • ねこ語が概ね読解できるか
  • ねこ語に誤りや違和感、改善点がないか
  • 他記事から引用した部分の解釈がおかしくないか
  • 後半のクロスリンク芸がしつこすぎないか
  • その他何か不備や問題点、改善点がないか

これが初作品になるので、というか初作品の分際で040-JPという超絶ビッグネームをお借りしてしまいそれに見合う作品が作れているかが一番不安で恐ろしいので、些細なことでもご指摘いただけると幸いです。よろしくお願いします。

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