三船美優「青いメモリー」 (40)(完)
1:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 22:59:32.75:i64BYL/V0 (1/37)
画像 画像 画像 画像 画像
モバP「泰葉からチョコもらった時の話?」
絵里「なんとかストロガノフ!」穂乃果「そう、カレーです」
タマ「ニャー」タラオ「タマ口臭いですぅ!」タマ「!!!!!!!」
玲音「風邪を引いてしまったようだ...」
苗木「霧切さん、この蝶ネクタイつけてみてよ」
2:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:01:24.44:i64BYL/V0 (2/37)
「スッ、スウィーティー...」
「声が上ずってるぞ☆ もっかい☆」
「スウィーティー↑」
「慣れてない感じがいいけど、もっかい☆」
「スウィーティ...♪」
「......ちょっと色っぽいからえぬじー☆」
「えぇっ!?」
「スッ、スウィーティー...」
「声が上ずってるぞ☆ もっかい☆」
「スウィーティー↑」
「慣れてない感じがいいけど、もっかい☆」
「スウィーティ...♪」
「......ちょっと色っぽいからえぬじー☆」
「えぇっ!?」
3:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:02:19.56:i64BYL/V0 (3/37)
――私とユニットを組むなら、とりあえず特訓からだぞ☆
そんな心さんの宣言から、私三船美優と心さんの特訓の日々が始まりました。
秋のライブに向けて、二人でダンスレッスン、ボイスレッスン、衣装合わせ...。
目まぐるしい忙しさの中で、私たちは着実に積み重ねていくのでした。
――私とユニットを組むなら、とりあえず特訓からだぞ☆
そんな心さんの宣言から、私三船美優と心さんの特訓の日々が始まりました。
秋のライブに向けて、二人でダンスレッスン、ボイスレッスン、衣装合わせ...。
目まぐるしい忙しさの中で、私たちは着実に積み重ねていくのでした。
4:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:03:19.49:i64BYL/V0 (4/37)
「はぁと、唐突だけどわかったことがある」
「...なんでしょう?」
レッスン終わりの昼食時。
『たまには体重気にせず外食しよっ☆というか腹減った☆』と、心さんに引っ張られて中華料理店へ。
私は小さめの天津飯、心さんは炒飯半ラーメンセット。
少しずつ食べる私とは裏腹に、男性顔負けのペースで平らげていきます...。
......そういえば心さん、この間減量したばかりだけど、大丈夫なんでしょうか...。
「はぁと、唐突だけどわかったことがある」
「...なんでしょう?」
レッスン終わりの昼食時。
『たまには体重気にせず外食しよっ☆というか腹減った☆』と、心さんに引っ張られて中華料理店へ。
私は小さめの天津飯、心さんは炒飯半ラーメンセット。
少しずつ食べる私とは裏腹に、男性顔負けのペースで平らげていきます...。
......そういえば心さん、この間減量したばかりだけど、大丈夫なんでしょうか...。
5:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:04:47.32:i64BYL/V0 (5/37)
「美優ちゃんセクスィーなんだわ」
「えほっ!」
思わず飲み込んだ卵がむせる。
...な、なにをいきなりっ...!
「はぁとも我ながら『そこそこセクスィー☆』を自負してるけど、美優ちゃんは違うわ。フェロモンが違うわ」
心さんは私に水を差し出して、そのまま食事を続けます。
女性ながら本当にいい食べっぷりで...アイドルとしてそれはいいんでしょうか...?
「美優ちゃんセクスィーなんだわ」
「えほっ!」
思わず飲み込んだ卵がむせる。
...な、なにをいきなりっ...!
「はぁとも我ながら『そこそこセクスィー☆』を自負してるけど、美優ちゃんは違うわ。フェロモンが違うわ」
心さんは私に水を差し出して、そのまま食事を続けます。
女性ながら本当にいい食べっぷりで...アイドルとしてそれはいいんでしょうか...?
6:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:05:39.95:i64BYL/V0 (6/37)
「フェロモンって...礼子さんとか、留美さんなら分かるんですけど...」
「はふはふっ、まーね。でも美優ちゃんのは、そういうセクスィーとは違うかな」
「......?」
水を受け取って飲むと、こくこくと喉が鳴る。
冷たさが心地よく体に染みこんで、はぁっと息を吐いた。
「それそれ」
「はい?」
「フェロモンって...礼子さんとか、留美さんなら分かるんですけど...」
「はふはふっ、まーね。でも美優ちゃんのは、そういうセクスィーとは違うかな」
「......?」
水を受け取って飲むと、こくこくと喉が鳴る。
冷たさが心地よく体に染みこんで、はぁっと息を吐いた。
「それそれ」
「はい?」
7:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:06:48.64:i64BYL/V0 (7/37)
「その時々見せる『無自覚の色っぽさ』に、男の子はドキドキってわけ☆ドキメロ☆」
「そ、そうなんですか...?」
「はむっ。そんなもんよ、若い男の子はふごふごっ...ちょろふごっ」
「炒飯食べながら喋らないでくださいっ」
今度は私から心さんに水を差し出すと、心さんはぐっと一気飲みします。
気がつけば、心さんのお皿は空っぽになっていました。
「その時々見せる『無自覚の色っぽさ』に、男の子はドキドキってわけ☆ドキメロ☆」
「そ、そうなんですか...?」
「はむっ。そんなもんよ、若い男の子はふごふごっ...ちょろふごっ」
「炒飯食べながら喋らないでくださいっ」
今度は私から心さんに水を差し出すと、心さんはぐっと一気飲みします。
気がつけば、心さんのお皿は空っぽになっていました。
8:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:07:54.72:i64BYL/V0 (8/37)
「これをライブに活かさない手はないわ。やっぱり決め台詞の『スウィーティー☆』をマスターしてもらわないと」
「ら、ライブでやるんですか......」
「プロデューサーには、はぁとの直談判で許可貰っておくから☆物理で☆」
「...物理?」
「乙女の秘密よん」
......乙女っていう年でもないような。
たぶん心さんのNGワードだから飲み込んでおきます。...私も同じ年ですし。
「おやっさーん! ギョーザ一枚追加☆」
って、まだ食べるんですか?
「これをライブに活かさない手はないわ。やっぱり決め台詞の『スウィーティー☆』をマスターしてもらわないと」
「ら、ライブでやるんですか......」
「プロデューサーには、はぁとの直談判で許可貰っておくから☆物理で☆」
「...物理?」
「乙女の秘密よん」
......乙女っていう年でもないような。
たぶん心さんのNGワードだから飲み込んでおきます。...私も同じ年ですし。
「おやっさーん! ギョーザ一枚追加☆」
って、まだ食べるんですか?
9:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:09:08.27:i64BYL/V0 (9/37)
「心さん、いい加減にしないとそろそろ...」
「美優ちゃんも食べたいの? おやっさ――」
「だめですっ! というか、どうせ私の分も心さんが食べる気ですよね!」
「...あっ、バレた? というかバレバレ?」
「たくさん食べたこと、プロデューサーさんに言いつけますよっ」
「...美優ちゃん、はぁとの対策分かってきたな?」
小さく怒る私を尻目に、心さんはニヒッと笑います。
なぜだか満足そうに見えたのは気のせいだと思います。たぶん。
「心さん、いい加減にしないとそろそろ...」
「美優ちゃんも食べたいの? おやっさ――」
「だめですっ! というか、どうせ私の分も心さんが食べる気ですよね!」
「...あっ、バレた? というかバレバレ?」
「たくさん食べたこと、プロデューサーさんに言いつけますよっ」
「...美優ちゃん、はぁとの対策分かってきたな?」
小さく怒る私を尻目に、心さんはニヒッと笑います。
なぜだか満足そうに見えたのは気のせいだと思います。たぶん。
10:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:10:07.22:i64BYL/V0 (10/37)
**
それからというもの、心さんは冒険を始めました。
...暴走というのは、ちょっと心苦しいですからね。
「衣装いっぱい借りてきたぞい」
「こんなにたくさん...」
「あるだけ借りてきた☆物理で☆」
「...物理?」
「乙女の秘密よん」
「小さい子たちのマーチングの衣装まで...さすがに入らないですよ? あとこの着ぐるみは、ちょっと...」
「いいじゃん、ライブでぐさーっとさ☆...って、やっべ! この着ぐるみ、今日使うって言ってたんだった!」
「急いで返して来てください!」
**
それからというもの、心さんは冒険を始めました。
...暴走というのは、ちょっと心苦しいですからね。
「衣装いっぱい借りてきたぞい」
「こんなにたくさん...」
「あるだけ借りてきた☆物理で☆」
「...物理?」
「乙女の秘密よん」
「小さい子たちのマーチングの衣装まで...さすがに入らないですよ? あとこの着ぐるみは、ちょっと...」
「いいじゃん、ライブでぐさーっとさ☆...って、やっべ! この着ぐるみ、今日使うって言ってたんだった!」
「急いで返して来てください!」
11:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:11:20.91:i64BYL/V0 (11/37)
**
「...今度は何を持ってきたんですか?」
「写真よ写真。都ちゃんから貰ってきた☆」
「...物理ですか?」
「うんにゃ、今回は金よ☆ 具体的に言うと焼き肉おごる☆」
「それならいいですけど...」
机の上に散らばっていたのは、見覚えのあるスーツ姿。
目線はどれもカメラを見ていないので、すぐに盗撮だと気が付きました。
**
「...今度は何を持ってきたんですか?」
「写真よ写真。都ちゃんから貰ってきた☆」
「...物理ですか?」
「うんにゃ、今回は金よ☆ 具体的に言うと焼き肉おごる☆」
「それならいいですけど...」
机の上に散らばっていたのは、見覚えのあるスーツ姿。
目線はどれもカメラを見ていないので、すぐに盗撮だと気が付きました。
12:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:12:19.62:i64BYL/V0 (12/37)
「おやおやー、美優ちゃんも気になるぅ?」
「...そ、そんなことは...」
「こんなところにプロデューサーの寝顔が!」
「......!」
高く掲げられた心さんの右手には、ブレブレの写真。
途端に体温が上がるのが分かりました。
「じょーだんじょーだん☆」
「......」
「むすっとしないで、ね! はぴはぴ☆」
「......」
「今度いい写真あげるから、今度はマキノちゃんに頼むから、ね?」
「......貰いますけど」
「素直でよろしい」
「おやおやー、美優ちゃんも気になるぅ?」
「...そ、そんなことは...」
「こんなところにプロデューサーの寝顔が!」
「......!」
高く掲げられた心さんの右手には、ブレブレの写真。
途端に体温が上がるのが分かりました。
「じょーだんじょーだん☆」
「......」
「むすっとしないで、ね! はぴはぴ☆」
「......」
「今度いい写真あげるから、今度はマキノちゃんに頼むから、ね?」
「......貰いますけど」
「素直でよろしい」
13:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:13:27.80:i64BYL/V0 (13/37)
**
「うぇーっと、おっすおっす」
その日の心さんは、レッスンの集合時間に少しだけ遅れてきました。
いつもよりテンション低めで、あからさまに顔色も良くないです。
「心さん...二日酔いですね?」
「ピンポーン。昨日はナナせんぱ...違った、一人で飲んでてさー。うえっぷ、ナナせんぱいのグチがね...いや一人で飲んでたんだけど」
「......その、察したので。レッスンのメニュー変えましょう」
「美優ちゃん察しが良くて助かるぅ...」
「トレーナーさんに相談してきます」
**
「うぇーっと、おっすおっす」
その日の心さんは、レッスンの集合時間に少しだけ遅れてきました。
いつもよりテンション低めで、あからさまに顔色も良くないです。
「心さん...二日酔いですね?」
「ピンポーン。昨日はナナせんぱ...違った、一人で飲んでてさー。うえっぷ、ナナせんぱいのグチがね...いや一人で飲んでたんだけど」
「......その、察したので。レッスンのメニュー変えましょう」
「美優ちゃん察しが良くて助かるぅ...」
「トレーナーさんに相談してきます」
14:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:15:12.14:i64BYL/V0 (14/37)
私からトレーナーさんに相談すると、今日はオフにした方がいいと提案が返ってきました。
どうやら昨日の二人を見たらしいです。
...菜々さんは、見られたら色々とマズいんじゃ...?
「相当悪酔いしてたからな...」
「はぁ...」
「その、なんだ。高垣なんか比じゃない悪酔いだぞ」
「それは相当ですね...」
私からトレーナーさんに相談すると、今日はオフにした方がいいと提案が返ってきました。
どうやら昨日の二人を見たらしいです。
...菜々さんは、見られたら色々とマズいんじゃ...?
「相当悪酔いしてたからな...」
「はぁ...」
「その、なんだ。高垣なんか比じゃない悪酔いだぞ」
「それは相当ですね...」
15:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:18:31.75:i64BYL/V0 (15/37)
「心さん、レッスンは中止です」
「ううっ...なんだか気持ち悪くなってきた...口からはぁとが出る...」
「そ、外行きましょう!」
「はぁとくんリバース!」
「ふざけてないで、外行きますよっ!」
はぁとリバースは防げました。それだけでよしとします。
「心さん、レッスンは中止です」
「ううっ...なんだか気持ち悪くなってきた...口からはぁとが出る...」
「そ、外行きましょう!」
「はぁとくんリバース!」
「ふざけてないで、外行きますよっ!」
はぁとリバースは防げました。それだけでよしとします。
16:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:19:49.00:i64BYL/V0 (16/37)
**
他の子のレッスンのジャマしちゃ悪いからと、私と心さんは近くの公園まできました。
最悪路上に吐いてもいいっしょ☆なんて軽口を叩いてましたけど。
秋風に吹かれて二人歩いてみると、不思議と口数も少なくなっていました。
「ふひー、だいぶ調子戻ってきたー」
「でも今日はレッスン禁止ですからね、ダンスレッスンなんてもってのほかですからね」
「......ライブいつだっけ」
「来週ですよ」
「はぁと、ちょっと反省してる。メンゴ」
「あれだけ毎日てんやわんやで練習してたんですから、たまにはいいんですよ」
「はー、優しさが染みるわぁー。ついでに寒いわー」
**
他の子のレッスンのジャマしちゃ悪いからと、私と心さんは近くの公園まできました。
最悪路上に吐いてもいいっしょ☆なんて軽口を叩いてましたけど。
秋風に吹かれて二人歩いてみると、不思議と口数も少なくなっていました。
「ふひー、だいぶ調子戻ってきたー」
「でも今日はレッスン禁止ですからね、ダンスレッスンなんてもってのほかですからね」
「......ライブいつだっけ」
「来週ですよ」
「はぁと、ちょっと反省してる。メンゴ」
「あれだけ毎日てんやわんやで練習してたんですから、たまにはいいんですよ」
「はー、優しさが染みるわぁー。ついでに寒いわー」
17:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:21:03.10:i64BYL/V0 (17/37)
秋も終わりに近いのか、歩いた後には落ち葉の足跡ができました。
二人の足跡が点々と、ときどきフラフラと。
「......よし!」
心さんはふと立ち止まって、私を真正面から見つめました。
「こんな機会でもなきゃ話せないし! 腹割って話そう!物理で!」
「...物理ってなんですか、物理って!」
「それは乙女の秘密よん☆ それにほら、26にもなるとさ、人と腹割って話す機会なんてないじゃん?」
秋も終わりに近いのか、歩いた後には落ち葉の足跡ができました。
二人の足跡が点々と、ときどきフラフラと。
「......よし!」
心さんはふと立ち止まって、私を真正面から見つめました。
「こんな機会でもなきゃ話せないし! 腹割って話そう!物理で!」
「...物理ってなんですか、物理って!」
「それは乙女の秘密よん☆ それにほら、26にもなるとさ、人と腹割って話す機会なんてないじゃん?」
18:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:22:43.16:i64BYL/V0 (18/37)
ベンチに落ちていた葉を払って、心さんは体重を預けます。
私もそれに合わせて、少しだけ距離を空けて座りました。
「...美優ちゃんはさ」
「はい」
「はぁとの無茶振りに、文句言わないよね。というか...なすがまま?」
...なすがまま、でしょうか...?
私が首を傾げていると、心さんはすかさずフォローを入れます。
ベンチに落ちていた葉を払って、心さんは体重を預けます。
私もそれに合わせて、少しだけ距離を空けて座りました。
「...美優ちゃんはさ」
「はい」
「はぁとの無茶振りに、文句言わないよね。というか...なすがまま?」
...なすがまま、でしょうか...?
私が首を傾げていると、心さんはすかさずフォローを入れます。
19:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:23:32.39:i64BYL/V0 (19/37)
「なにがあっても、全部受け入れちゃうカンジよ」
「あぁ...この事務所にきてから、色んなことがありましたからね...」
「がおー☆とか?」
「そうです、がおー...とか」
「慣れってやつか...こえーなー...」
「......慣れとは、違うかもしれません」
「なにがあっても、全部受け入れちゃうカンジよ」
「あぁ...この事務所にきてから、色んなことがありましたからね...」
「がおー☆とか?」
「そうです、がおー...とか」
「慣れってやつか...こえーなー...」
「......慣れとは、違うかもしれません」
20:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:24:56.58:i64BYL/V0 (20/37)
私は、振り返る。
例えば、あのトラ柄の衣装を着たとき。
最初は戸惑ったけれど、いつの間にか楽しくなったりして。
例えば、雨に降られて撮影したとき。
あじさいの道を歩いた思い出を、大事にしたりして。
例えば、ウェディングドレスに袖を通したとき。
...胸の高鳴りを、抑えられるか不安になったりして。
私は、振り返る。
例えば、あのトラ柄の衣装を着たとき。
最初は戸惑ったけれど、いつの間にか楽しくなったりして。
例えば、雨に降られて撮影したとき。
あじさいの道を歩いた思い出を、大事にしたりして。
例えば、ウェディングドレスに袖を通したとき。
...胸の高鳴りを、抑えられるか不安になったりして。
21:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:25:39.63:i64BYL/V0 (21/37)
「みんなから色んなことを教わって、自分じゃ絶対にやらないこともやってみて...新しい私になってるなって、思ったんです」
次はどんな私になれるんだろう。
...ちょっとだけ期待してるんですよ、プロデューサーさんにも、心さんにも。
「みんなから色んなことを教わって、自分じゃ絶対にやらないこともやってみて...新しい私になってるなって、思ったんです」
次はどんな私になれるんだろう。
...ちょっとだけ期待してるんですよ、プロデューサーさんにも、心さんにも。
22:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:27:07.54:i64BYL/V0 (22/37)
「楽しくて、しかたないんです...本当に」
「なるほど。だから、はぁとの無茶振りにも応えちゃうんだ」
もちろん、限度はありますよ。
鈴帆ちゃんの着ぐるみとか、年齢的に着れない衣装、とか。
「しかし新しい自分かぁ...。はぁとは何をしても、はぁとを辞められないな。つーか無理☆はぁと以外、想像できない」
「...それが普通ですよ」
「でも26年も連れ添ってるから――後悔はない、かな」
「楽しくて、しかたないんです...本当に」
「なるほど。だから、はぁとの無茶振りにも応えちゃうんだ」
もちろん、限度はありますよ。
鈴帆ちゃんの着ぐるみとか、年齢的に着れない衣装、とか。
「しかし新しい自分かぁ...。はぁとは何をしても、はぁとを辞められないな。つーか無理☆はぁと以外、想像できない」
「...それが普通ですよ」
「でも26年も連れ添ってるから――後悔はない、かな」
23:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:28:24.39:i64BYL/V0 (23/37)
心さんは後悔しない。
強い自分が好きだから、後悔しない。
私は――
「......」
――新しい自分になりたいのは、古い自分が嫌だから。
心さんは後悔しない。
強い自分が好きだから、後悔しない。
私は――
「......」
――新しい自分になりたいのは、古い自分が嫌だから。
24:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:29:09.44:i64BYL/V0 (24/37)
「...私は後悔しながら、生きてます」
「知ってる」
はぁとも似たようなもんだしと、心さんは私の肩に頭を預けます。
何を後悔しているのか、問いただそうとはしませんでした。
ただ静かに、ぽつりと。
「26年って長いよね」
懐かしむように、目を閉じました。
「...私は後悔しながら、生きてます」
「知ってる」
はぁとも似たようなもんだしと、心さんは私の肩に頭を預けます。
何を後悔しているのか、問いただそうとはしませんでした。
ただ静かに、ぽつりと。
「26年って長いよね」
懐かしむように、目を閉じました。
25:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:30:40.90:i64BYL/V0 (25/37)
お互い言葉を発さずに、遠くで聞こえる喧騒に耳を傾けて。
ほのかな秋の香りと、冬を待つ風に体を震わせながら。
――遠い季節を、巡っていく。
どれだけ新しい自分になっても、忘れられないものがあるんです。
...たぶん、心さんにも。
「はぁと今ね、何考えてると思う?」
「...むかしのこと、ですかね」
お互い言葉を発さずに、遠くで聞こえる喧騒に耳を傾けて。
ほのかな秋の香りと、冬を待つ風に体を震わせながら。
――遠い季節を、巡っていく。
どれだけ新しい自分になっても、忘れられないものがあるんです。
...たぶん、心さんにも。
「はぁと今ね、何考えてると思う?」
「...むかしのこと、ですかね」
26:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:32:16.66:i64BYL/V0 (26/37)
「ぶっぶー。正解は、今日の昼ごはんのメニュー。さっきからお腹がペコりんなの」
......はい?
「はぁと、考え込むとかキャラじゃねぇの。それならカツ丼でもかきこんだ方がマシ」
「えっ、その...はい?」
「...あんまり深く考えたってさ、時間は戻ってこないし」
心さんは、私の額をピンと弾く。
「この道を選んでない美優ちゃんもいないんだから...胸張れよ☆」
「ぶっぶー。正解は、今日の昼ごはんのメニュー。さっきからお腹がペコりんなの」
......はい?
「はぁと、考え込むとかキャラじゃねぇの。それならカツ丼でもかきこんだ方がマシ」
「えっ、その...はい?」
「...あんまり深く考えたってさ、時間は戻ってこないし」
心さんは、私の額をピンと弾く。
「この道を選んでない美優ちゃんもいないんだから...胸張れよ☆」
27:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:33:18.23:i64BYL/V0 (27/37)
――この道選んでいない自分は、いない。
「...この道を選んでいない心さんも、ですか」
「もっちろん。はぁとは最初っからはぁとだけどな☆」
にぃっと、心さんはVサインをしました。
シュガーハートに悩みは不要、そう言っているようでした。
――この道選んでいない自分は、いない。
「...この道を選んでいない心さんも、ですか」
「もっちろん。はぁとは最初っからはぁとだけどな☆」
にぃっと、心さんはVサインをしました。
シュガーハートに悩みは不要、そう言っているようでした。
28:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:34:12.99:i64BYL/V0 (28/37)
「はぁと、わかった。美優ちゃんなら、はぁとの背中を預けられる。というか心中できる」
「し、心中はちょっと...」
「いや、やっぱなし! 美優ちゃんと心中って絵面、シャレになんないわ!」
「こらっ」
二人で笑って、秋風が通り抜けていく。
いつの間にか、距離はなくなっていました。
「はぁと、わかった。美優ちゃんなら、はぁとの背中を預けられる。というか心中できる」
「し、心中はちょっと...」
「いや、やっぱなし! 美優ちゃんと心中って絵面、シャレになんないわ!」
「こらっ」
二人で笑って、秋風が通り抜けていく。
いつの間にか、距離はなくなっていました。
29:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:35:26.80:i64BYL/V0 (29/37)
**
そしてライブ当日。
「最初は私だけステージに上がって、『スウィーティー』って言ったら」
「はぁとが『おいおい本家本元の『スウィーティー』はコレだぜ☆』で登場。つかみはばっちし」
「......大丈夫でしょうか...」
「失敗しても、はぁとがなんとかしてあげる☆物理で☆」
「ふふっ...失敗するなってことですか?」
「思い切りやっていいってことよん。遠慮はNGってこと」
**
そしてライブ当日。
「最初は私だけステージに上がって、『スウィーティー』って言ったら」
「はぁとが『おいおい本家本元の『スウィーティー』はコレだぜ☆』で登場。つかみはばっちし」
「......大丈夫でしょうか...」
「失敗しても、はぁとがなんとかしてあげる☆物理で☆」
「ふふっ...失敗するなってことですか?」
「思い切りやっていいってことよん。遠慮はNGってこと」
30:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:44:45.01:i64BYL/V0 (30/37)
そう言って、心さんは私の背中を押しました。
とても心地よいエールでした。
胸を張らなきゃ、『物理☆』で背中をまた押されそうで。
自然と胸を張って、ステージを見ていました。
(...この道を選んでいない三船美優はいない...だから、胸を張れ...)
震える鼓動を抑えて、スポットライトに手を差し伸べて。
不安を振り切る高揚感を、糧にして。
私の声を、みんなにちゃんと届けられるように。
――振り絞れ、三船美優。
そう言って、心さんは私の背中を押しました。
とても心地よいエールでした。
胸を張らなきゃ、『物理☆』で背中をまた押されそうで。
自然と胸を張って、ステージを見ていました。
(...この道を選んでいない三船美優はいない...だから、胸を張れ...)
震える鼓動を抑えて、スポットライトに手を差し伸べて。
不安を振り切る高揚感を、糧にして。
私の声を、みんなにちゃんと届けられるように。
――振り絞れ、三船美優。
31:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:45:44.48:i64BYL/V0 (31/37)
「スウィーティー...❤」
時間が止まる。
スポットライトへ、世界が一つになる。
「スウィーティー...❤」
時間が止まる。
スポットライトへ、世界が一つになる。
32:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:46:38.80:i64BYL/V0 (32/37)
「あなたのハートをシュガシュガスウィート♪ みなさんの三船美優ですっ」
正直、不安でした。
いつもと違う私に、ファンが答えてくれるか不安でした。
でもすぐに、ワァァと歓声があがって、青い光が踊り出しました。
――掴んだ。
確かに、私はそう感じました。
...これなら、みんなに届けられる。
「あなたのハートをシュガシュガスウィート♪ みなさんの三船美優ですっ」
正直、不安でした。
いつもと違う私に、ファンが答えてくれるか不安でした。
でもすぐに、ワァァと歓声があがって、青い光が踊り出しました。
――掴んだ。
確かに、私はそう感じました。
...これなら、みんなに届けられる。
33:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:49:21.05:i64BYL/V0 (33/37)
「今日はパートナーの真似をしてみましたっ、どうでしたか? 似てましたか?」
「...やっぱり似てないですか? 本人に訊くのが一番早い...ですかね?」
「えっ、呼ばなくていい? こっ、こまりますっ」
「それじゃあみなさんっ、私のパートナーの名前、呼んでくれますかっ!」
「せーのっ!」
「今日はパートナーの真似をしてみましたっ、どうでしたか? 似てましたか?」
「...やっぱり似てないですか? 本人に訊くのが一番早い...ですかね?」
「えっ、呼ばなくていい? こっ、こまりますっ」
「それじゃあみなさんっ、私のパートナーの名前、呼んでくれますかっ!」
「せーのっ!」
34:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:50:39.84:i64BYL/V0 (34/37)
**
「...やりやがったな、三船美優」
三船美優という女を侮っていた。
不安げな優しい女だと思っていた。
違った。いや、変わったのだ。
...三船美優は、魔性のアイドルになったのだ。
「へへっ、そうでなくっちゃ...そうでなくっちゃな!」
三船美優は私にウインクする。
「何が後悔しながら生きてるだ。したたかに出し抜いてんじゃねぇか。――最高かよっ!」
**
「...やりやがったな、三船美優」
三船美優という女を侮っていた。
不安げな優しい女だと思っていた。
違った。いや、変わったのだ。
...三船美優は、魔性のアイドルになったのだ。
「へへっ、そうでなくっちゃ...そうでなくっちゃな!」
三船美優は私にウインクする。
「何が後悔しながら生きてるだ。したたかに出し抜いてんじゃねぇか。――最高かよっ!」
35:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:51:55.87:i64BYL/V0 (35/37)
++
心さんは、笑っていました。
苦いような、甘いような、スウィーティーな笑顔。
そして、声に応じて走りだしていました。
「遅れて登場ッ! アナタのはぁとをシュガシュガスウィート☆ しゅがーはーとだぞ♪」
歓声が心さんを包み込んで、黄色い光が踊ります。
「スウィーティー♪ ってもういっか! お前ら堪能したろ!」
「へ!?」
「はぁとのスウィーティーより、とびっきりスウィーティーだったな! うーんデリシャス!」
++
心さんは、笑っていました。
苦いような、甘いような、スウィーティーな笑顔。
そして、声に応じて走りだしていました。
「遅れて登場ッ! アナタのはぁとをシュガシュガスウィート☆ しゅがーはーとだぞ♪」
歓声が心さんを包み込んで、黄色い光が踊ります。
「スウィーティー♪ ってもういっか! お前ら堪能したろ!」
「へ!?」
「はぁとのスウィーティーより、とびっきりスウィーティーだったな! うーんデリシャス!」
36:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:52:49.79:i64BYL/V0 (36/37)
『したー!』と、みなさんからの声がたくさん聞こえます。
心さんは、私の手を掴んで走り出しました。
「もっともっと堪能させてやるから、覚悟してろよーッ! 主に物理で!」
「だから物理ってなんですかっ、物理って!」
私もその手を握り返して。
――スウィーティーなライブは、幕を開けました。
『したー!』と、みなさんからの声がたくさん聞こえます。
心さんは、私の手を掴んで走り出しました。
「もっともっと堪能させてやるから、覚悟してろよーッ! 主に物理で!」
「だから物理ってなんですかっ、物理って!」
私もその手を握り返して。
――スウィーティーなライブは、幕を開けました。
37:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年11月30日(月) 23:54:48.47:i64BYL/V0 (37/37)
以上で終了です。
慣れない投稿で、お粗末さまでした。
以上で終了です。
慣れない投稿で、お粗末さまでした。
38:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年12月01日(火) 00:01:08.49:OeyLT/q20 (1/1)
乙
乙
39:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年12月01日(火) 00:05:36.89:fFVjDzCMo (1/1)
乙
乙
40:以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします:2015年12月01日(火) 02:47:05.08:y6+cW26bO (1/1)
おつ
良い組み合わせ
おつ
良い組み合わせ
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