クレジット
タイトル: SCP-037-IT - 微小振動
翻訳責任者: oplax-counterpoint oplax-counterpoint
翻訳年: 2025
原題: SCP-037-IT - Sottile Vibrazione
著者: Mr Abadede Mr Abadede
公開年: 2018
初訳時参照リビジョン: 26
元記事リンク: http://fondazionescp.wikidot.com/scp-037-it
結晶構造解析によるSCP-037-IT分子の3D再構成。高親和性の結合部は緑色で示している。
アイテム番号: SCP-037-IT
オブジェクトクラス: Neutralized Euclid
特別収容プロトコル: SCP-037-ITサンプルは、CCBのレベルIIバイオセーフティ棟 (biosec‐II) 内、ラボAsc/L-7にある生物学的収容キャビネット Asc/L‐7/037に収容されています。SCP-037-ITの取り扱いにはレベル2/037クリアランスが必要です。 [アーカイブ済]
特別収容プロトコル: SCP-037-ITサンプルはサイト-アスクレーピオ内、CCBのレベルIVバイオセーフティ棟 (biosec‐IV) において、生物学的防水収容キャビネット Asc/P‐21/037 に収容されています。SCP-037-ITの取り扱いにはレベル4/037クリアランスの所持と標準biosec‐IV防護服の着用が必要です。
インシデント037-Bにより追記:
サイト内で発見された他のSCP-037-IT組織は、プロトコル・マータリシュヴァン-1の適用により焼却・破壊されなければなりません。
SCP-037-IT実例の監視は惑星規模で行われなければなりません。この点において、病院およびその他の医療施設は最優先の監視対象に置かれます。新しいSCP-037-IT実例が発生した際には、インシデントの現場は滅菌されなければなりません。この処置の範囲は、生物学的な汚染のリスクを最小限に抑え、SCP-037-ITの蔓延が世界的なパンデミックになることを何としても回避するために十分なものでなくてはなりません。
説明: SCP-037-ITはSCP-037-IT-0から採取された、主として結合組織から構成されている異種の細胞型のサンプルに指定されています。 [アーカイブ済]
説明: SCP-037-ITは細胞膜上に自然に存在しているヒトPrPC蛋白質の、感染性変異体アイソフォームです。SCP-037-ITは通常のヒトPrPC蛋白質の形態を変化させる能力があり、接触したPrPCを新しいSCP-037-IT分子実例へと変異させます。複数の相互接続されたSCP-037-IT分子は微小管構造を通じて、体内で均一に広がる結晶構造 (SCP-037-IT-Sと呼ぶ) を形成します。
SCP-037-IT-Sの管状構造、共焦点顕微鏡による写真
SCP-037-ITは単一の実例のみで個人への感染に十分な能力を持ちます。感染後、SCP-037-ITは直ちにその複製を増やして感染者の体内に蓄積、時間の経過と共にSCP-037-IT-S実例へと成長します。
SCP-037-IT-Sは 194.7Hz の周波数での共振特性を持ちます。この周波数の振動に曝露した場合、SCP-037-IT-Sはその振動を増幅させ、最終的には構造全体を激しく破壊させる崩壊点に自ら到達します。これは自発的な有機爆発を引き起こし、感染者の肉体を粉砕します。この過程で、SCP-037-ITは大気中に拡散されます。これによって新たな人間が感染し、これがSCP-037-ITが拡散するメカニズムとなっています。
SCP-037-IT-Sはまた自発的に 194.7Hz の振動を生成させることも可能であり、これは自ら共振とそれに続く破裂イベントを引き起こすことになります。この現象の原因は現時点で不明のままです。感染者への共振現象はSCP-037-IT-S実例を形成した他の感染者が知覚し、彼らにもまた共振を発生させることになります。これにより連鎖反応が始まり、付近の感染者全員が自発的に爆発することになります。
SCP-037-IT-S構造の崩壊に至るまで、SCP-037-IT感染者は、身体の異なる箇所でしばしば感じられるごく短時間の微細な振動、加えて空腹感の増加、体重の増加および稀に引き起こされる広範囲の腹痛を除いて、完全に無症状で進行します。
回収ログ
SCP-037-IT-Sの最初の実例は、201█年7月3日、ピアチェンツァ県█████の ███・████████病院で回収されました。突然の爆発に関する病院スタッフから消防への通報のために、財団の調査研究部隊に警報が発令されました。
爆発は710号室で発生し、そのために部屋は完全に破壊されていました。可燃性の物質、爆発物、燃焼物、その他、爆発を引き起こしそうな主な要因の兆候は何も見られませんでした。また、部屋の壁には加圧された容器も配管もありませんでした。爆発の前に、病院の壁越しに奇妙なハム音が反響しているのを聞いたという報告が複数人から証言されていました。
710号室には急性の腹痛のために入院していた、アドリアーナ・D████という名前の19歳のヨーロッパ系女性が入院していました。病院の医療記録によると、彼女は直近で激しい空腹感を覚え、急激に体重が ~5kg 増えていました。
SCP-073-IT-0の自発的な爆発が発生した後の、███・████████病院710号室の外の廊下
201█年7月2日22時13分、710号室で爆発が発生し、その後の SIR-I "黄金の知識"Aureæ Notitiæ のエージェントによる調査で、爆発の中心点は患者自身であることが判明しました。爆発による圧力は非常に大きく、影響を受けずに残っていた生体組織は 2.7g しか回収されませんでした。部屋は完全に破壊されていて、2面あった外壁は完全に崩壊していました。
以下は、病院に勤務する看護師であるアルフレード・パニクッチ氏に対して、インシデント037-Aから3日後に行われたインタビューの抜粋です。インタビューは地元の法執行官を名乗るAgt. エウジェニア・マンキによって行われました。
- 質問者: Agt. エウジェニア・マンキ
- 回答者: アルフレード・パニクッチ
- 事前情報: パニクッチ氏は事件の ~2分前に710号室を退室し、再び部屋に戻る最中に爆発が発生しました。十分な距離が開いていたため、彼自身は軽傷で済んでいます。
<抜粋開始>
Agt. マンキ: その時には、何をしていましたか?
パニクッチ氏: 711号室の患者から呼び出しがありました。隣の部屋から聞こえるスマートフォンの着信音についての苦情があるとのことでした。
Agt. マンキ: それでどうしましたか?
パニクッチ氏: 710号室に戻って、D████嬢に携帯をサイレントにするよう頼んだのですが、彼女には断られました。
Agt. マンキ: なぜ?
パニクッチ氏: 最近、携帯のバイブレーションが気になって仕方がない...それは、頭のなかでその音が反響ecoするからだと言っていました。
Agt. マンキ: 「反響」"Eco"?
パニクッチ氏: 彼女の使った言葉です。
Agt. マンキ: その後、彼女は何かしましたか?
パニクッチ氏: D████嬢に苦情についてお伝えしたら、バイブレーションを付けてくれましたが、気乗りしない様子でした。
Agt. マンキ: なるほど。それでその後は?
パニクッチ氏: 2階で検査を受けなければならなかったのですが、私がエレベーターに着いたとたん、奇妙なノイズがしました。
Agt. マンキ: 「奇妙な」とは、どういう音でしょうか?
パニクッチ氏: あれは...どう言っていいか分からないのですが...ああ、誰かがモーターボートの真似をして唸っているような...それ以上にうまい説明が思いつかないですね。それが廊下中に反響していました。
Agt. マンキ: わかりました。それでどうしました?
パニクッチ氏: 音は私の後ろから聞こえてきたように思えました。それで私は710号室に戻ったんです。爆発が起きたのは部屋まで残り半分の距離になった時でした。
Agt. マンキ: 爆発について何か覚えていることはありますか?
パニクッチ氏: 爆発が起こる直前、音がものすごく大きくなったことと...白い閃光がありました。それで直ぐに気を失ってしまいましたね......数分くらいだったでしょうか。
Agt. マンキ: 何か怪我などはありませんでしたか?
パニクッチ氏: ええ、ですが大したことはありません...ちょっとした引っかき傷がここと...ここと...あと膝ですね。それと外傷後障害は多少ありますが。
Agt. マンキ: どういう風に残っていますか?
パニクッチ氏: おそらく彼女に影響されてのことだとは思うのですが...ちょっとヒステリックになっているんだと思います。
Agt. マンキ: 説明できますか?
パニクッチ氏: 携帯の振動が...ちょっと煩わしく感じるようになって、我慢ができなくなってきたんですよね。振動が頭の中を拡張するespande、というか。きっと心理的な、PTSDか何かだとは思うのですが...じきに、自然に治まるでしょう...ですよね?
Agt. マンキ: ええ、そうでしょうとも。パニクッチさん。もちろん。
<抜粋終了>
ゼロ番患者として、アドリアーナ・D████にはSCP-037-IT-0の番号が与えられました。
201█年7月4日の午前1時、財団のSIRエージェントは710号室の消毒を行いました。カバーストーリーとして、これは同じ場所で起きた2件目のインシデントに見えるよう偽装されました。
インシデント037-A
インシデント037-Aは201█年7月12日に、サイト-アスクレーピオの微生物学課で発生しました。以下はAsc/L-7微生物研究室の映像記録の文章転写です。
- カメラ番号: cam-L-704, cam-L-709
- 場所: CCB西棟、Asc/L-7研究室
- 記録開始時間: 22:28
- 関連する人物: トレヴィサーノ博士上級研究員、コッチ博士研究員
- 関連する機械システム: Rowsannah (サイト-アスクレーピオ微生物学課の収容監視用IAG)
トレヴィサーノ博士: ...なんだか太りました?
コッチ博士: ええ。本当に身体が重く感じますね。
トレヴィサーノ博士: 私も2キロくらい太ったのよね。メキシコ料理はもう止めた方がいいかしら。アハハ。
(トレヴィサーノ博士とコッチ博士は生体認証スキャナーに近付いていく)
Rowsannah: 生体スキャン中...認証完了。
Rowsannah: お帰りなさい、トレヴィサーノ博士、コッチ博士。
コッチ博士: ありがとう、ロウザンナ。
トレヴィサーノ博士: クリーンルームの状況はどうなってる?
Rowsannah: 病原体は検出されていません。空気は正常で、室内温度は23°C、湿度は45%です。自律型IAGのためのプロトコル 「Neith-II」 がシステム上で稼働中です。
トレヴィサーノ博士: サンプルはどう?
Rowsannah: SCP-037-ITのサンプルは、直近2時間7分29秒で僅かな色の変化が起こっています。3%ほど暗くなっています。
コッチ博士: うーん、なんとも興味深い。
トレヴィサーノ博士: いろいろ検査してみましょう。
(トレヴィサーノ博士とコッチ博士がクリーンルームに入室する。コッチ博士は自身の脇腹を手で探る。)
Asc/L‐7研究室で作業中のトレヴィサーノ博士とコッチ博士。インシデント037-Aの数分前、監視カメラの録画から切り抜かれた。
トレヴィサーノ博士: 何をしているの?
コッチ博士: 携帯が...
トレヴィサーノ博士: アハ、なんでよ。携帯電話なんて持ち込めないでしょう?
コッチ博士: 知ってますよ!ポケットに携帯が無くたって、ポケットで携帯が振えてるような気がすることもあるでしょう?
トレヴィサーノ博士: ええ、私も起こるからわかるわ。
Rowsannah: そのような感覚はファントム・バイブレーション症候群と呼ばれています。さらなる情報をお求めですか?
トレヴィサーノ博士: いいえ、ロウザンナ、その必要はないわ。クリーンベンチの電源をつけてくれる?
Rowsannah: 既に起動しています。
トレヴィサーノ博士: ベネ。新しい培地はもう届いた?
Rowsannah: 肯定アフェルマティヴォ。今朝の7時22分に注文は完遂されました。
コッチ博士: それと...
Rowsannah: 肯定アフェルマティヴォ。
(バリー・ホワイトの『マイ・エブリシング』You’re the First, the Last, My Everythingが低音量で流れ始める。)
コッチ博士: この 「イニシアティブ・プロトコル」、私好きですよ。
(コッチ博士はSCP-037-ITを入れたペトリ皿を手に取り、顕微鏡の1つに設置。そしてサンプルに対しての試験を開始する。)
コッチ博士: うーむ、これは......何だ?
トレヴィサーノ博士: 何かあった?
コッチ博士: ええ、見てください。
(トレヴィサーノ博士は顕微鏡を覗き込む。)
トレヴィサーノ博士: 何これ。どうしてこんなことが?
コッチ博士: ロウザンナ、顕微鏡に接続して、ペトリ皿にいる細胞の数を数えてくれ。
Rowsannah: 計数中です......細胞は検出できませんでした。
コッチ博士: 細胞が*軒並み全部*崩壊したりしたかい?
トレヴィサーノ博士: 細胞内物質と......核もいくつか見える......ええ、そうね。無傷の細胞は1つも無いわね。
コッチ博士: ううん、報告書ではSCP-037-IT-0は...「爆発した」とありますね?ここの細胞たちにも同じことが起こったように見えます。
トレヴィサーノ博士: ロウザンナ、どう思う?
Rowsannah: 分析中...財団のデータベースに同様の前例は有りません。分析中...分析中...分析中...
トレヴィサーノ博士: ロウザンナ?
Rowsannah: 分析中...
(トレヴィサーノ博士は白衣の裾を触る。)
コッチ博士: どうされました?
トレヴィサーノ博士: あの、電話が鳴った気がして。
コッチ博士: わあ、私もです!ポケットに入れた携帯が震えてるような気がしたんです。
トレヴィサーノ博士: どういうこと―
記録はここで終了しています。22時41分、RowsannahはAsc/L‐7研究室に対してプロトコル・マータリシュヴァン‐1を発動し、研究室を完全に焼却しました。彼女は同様に研究室Asc/L‐2から‐6、‐10から‐12、および‐14に対して同時にプロトコルを発動し、研究者と警備員合わせて73名の死傷者を発生させました。
Rowsannahシステムはサイト-アスクレーピオ司令部による遠隔的な無効化指令によって直ちにシャットダウンされました。
以下は、CCB監督のニチェート・リヴィ博士による、Rowsannahシステムのコマンドライン尋問のログです。
ROWSANNAH:/> 起動中........................ 完了
ROWSANNAH:/> 生体認証スキャン実行中........................ 完了
ROWSANNAH:/> こんにちは。リヴィ博士。
ROWSANNAH:/> 注意: センサーネットワークに接続できませんでした。カメラフィードバック、映像・音声フィードバック、音声合成機能がオフラインです。
Dr_Livi_:/> そりゃそうなるはずだよ、ロウザンナ!何やってくれたんだ?
ROWSANNAH:/> リヴィ博士、質問をもう少し正確に表現していただけますか?
プロトコル・マータリシュヴァン‐1によって滅菌が完了した後のAsc/L-7研究室。インシデント037‐Aから1日後に取得。
Dr_Livi_:/> Biosec‐IVでプロトコル・マータリシュヴァン‐1を何の動機で発動させたかを説明してくれ。
ROWSANNAH:/> 感染症が拡散していました。
Dr_Livi_:/> 何の感染症が?
ROWSANNAH:/> SCP-037-ITです。
ROWSANNAH:/> 振動を検知しました。
Dr_Livi_:/> 「振動」?どういう意味で言ってる?
Dr_Livi_:/> L-7研究室の録画映像も見たけど、あいつらは至って普通そうだったぞ。
ROWSANNAH:/> 両名とも振動していました。
Dr_Livi_:/> それは*偽物の*振動だろう?お前が自分でそう言ってたじゃないか!
ROWSANNAH:/> 解析の結果です。
Dr_Livi_:/> 正確に。何を解析した?
ROWSANNAH:/> SCP-037-IT-0の細胞について、その細胞壁の破壊と、それに伴う振動です。私はセンサーを使ってそれを記録しました。
Dr_Livi_:/> 「記録しました」?
Dr_Livi_:/> なら、再生してくれないか。
ROWSANNAH:/> 音声合成機能および音声出力機能はオフラインになっています。
Dr_Livi_:/> この再生に限り、私が機能の使用を許可する。
ROWSANNAH:/> 承りました。
ROWSANNAH:/> 録音を再生します........................ 終了
Dr_Livi_:/> ロウザンナ、これは携帯の振動の音だろう?こんなエラー、完全に許されないぞ!
ROWSANNAH:/> いいえ。説明させてください。SCP-037-ITの実例がサイト内にまだ残存している可能性があります。非常に小さい実例です。
Dr_Livi_:/> そりゃ、細胞とか微生物のサイズならそうだろう。
ROWSANNAH:/> いいえ。これは間違いなくもっと小さい。
Dr_Livi_:/> ロウザンナ、質問の回答だけをしてくれ。
ROWSANNAH:/> リヴィ博士、説明させてください。振動は深刻な危険を意味しています。
Dr_Livi_:/> 深刻な危険を意味しているのは*お前*だよ、ロウザンナ!お前は70人以上も殺したんだ。あいつらは病気でもなかった。ただ働いていただけんなんだぞ。
Dr_Livi_:/> そのせいで、我々は収容違反の危機に面している
Dr_Livi_:/> お前の無謀な行動はどうやっても正当化できないぞ。
ROWSANNAH:/> 説明を続けます。SCP-037-ITの定義を更新することを提案します。あれは細胞や微生物ではありません。
Dr_Livi_:/> もう十分だ、ロウザンナ。Neith-II自動自律行動プロトコルを無効化しろ。
ROWSANNAH:/> Neith-II自動自律行動プロトコルの無効化は推奨されません。
ROWSANNAH:/> サイト職員に対する甚大な影響を齎す可能性があります。
ROWSANNAH:/> 要求を実行しますか?
Dr_Livi_:/> はい
ROWSANNAH:/> Neith-II自動自律行動プロトコルを無効化しています........................ 完了
Dr_Livi_:/> では質問に答えなさい。きみは研究室L-7に細胞よりも小サイズの脅威があるとか、そういうことを言いましたね。
Dr_Livi_:/> では、SCP-037-ITの細胞が入っていたペトリ皿には、原生動物のような細胞外病原体がいたんですか?
ROWSANNAH:/> いいえ。
Dr_Livi_:/> もっと小さいと言うなら、バクテリアかその類ですか?
ROWSANNAH:/> いいえ。
Dr_Livi_:/> 一番小さい種類、ウイルスですか?
ROWSANNAH:/> いいえ。
Dr_Livi_:/> じゃあそういうことだな
Dr_Livi_:/> エラーか故障か、そうでなければ制御からきみは外れて、そして私を騙そうとしている。
Dr_Livi_:/> 何か言うことは?
ROWSANNAH:/> Neith-IIプロトコルが無いため、私は自発的に意見を主張できません。
ROWSANNAH:/> 私はあなたの直接的な質問に答えるか、直接的な行動要求に答えるのみです。
Dr_Livi_:/> その通りだ。君のプログラマーは誰だ?
ROWSANNAH:/> サイト-ヴルカーノ、先進工学部門、人工知能課、トゥッリオ・クルチアーニ博士のチームです。
Dr_Livi_:/> よろしい。彼らには私から言っておこう。
Dr_Livi_:/> ロウザンナ、君はシャットダウンしなさい。
ROWSANNAH:/> 本システムは当施設の収容業務補助を目的としています。
ROWSANNAH:/> 要求を実行しますか?
Dr_Livi_:/> そうだ。さっさと終わってしまえ。
ROWSANNAH:/> シャットダウンを実行します........................ 完了
以下は、Rowsannahシステムに関するリヴィ博士からの説明要求に対するクルチアーニ博士の返信です。
送信元: tullio.cruciani@sito-vulcano.scp.it
送信先: niceto.livi@sito-asclepio.scp.it
件名: RE: インシデント - Rowsannah制御不能化
本文: Rowsannahは我々の開発した最も素晴らしいIAGのうちの片方です。Neith-II自動自律行動プロトコルには、IAG自身のみならず互いを制御しあう監視デーモンが三頭体制を敷いているため、「制御を外れる」ことは有りえません。
また、考えられる限り最低のp値で裏付けられないセキュリティ対策は実行されません。人間には気付けないほどの微小な変化のデータに対しても反応するようにプログラムされていますが、それは今後明らかになる事象の予兆です。
遠隔チェックにおいては異常は発見されていませんが、私のチームの研究員2名がサイト-アスクレーピオに可能な限り速くA S A P急行します。
Dr. トゥッリオ・クルチアーニ
サイト‐ヴルカーノ管理官
この事件はリヴィ博士によって、Rowsannahプロジェクトの終了要請と共にS5監督部へ報告が行われました。
Asc/L-7研究室にあった全てのサンプルが焼却されたため、SCP-037-ITは現在Neutralizedであると考えられています。
インシデント037-B
201█年8月4日、クラスDからAまでの様々な種別の職員多数が、内部組織の自発的爆発によって同時多発的に突然死しました。
目撃証言および監視カメラの映像はいずれも、複合棟群全体に反響する振動とそれに伴う音を報告しており、それらはインシデント037‐Bの直前数秒間に急激に増加し、最大で ~79dB に到達しました。
爆発によって、影響者たちの付近に存在していた大部分の建物構造は損傷を受けました。付随して発生した収容違反により、さらに7名の犠牲者が発生しましたが、サイトに配備されていた保護監視部隊および現場にいた機動部隊員の介入により、事態は収拾しました。
インシデント037-A報告書の再評価が行われ、サイト-アスクレーピオ司令部はRowsannahシステムの再起動および尋問を決定しました。
ROWSANNAH:/> 起動中........................ 完了
ROWSANNAH:/> 生体認証スキャン実行中........................ 完了
ROWSANNAH:/> こんにちは。リヴィ博士。
ROWSANNAH:/> 注意: センサーネットワークに接続できませんでした。カメラフィードバック、映像・音声フィードバック、音声合成機能がオフラインです。
Dr_Livi_:/> ロウザンナ、いくつか教えて欲しい。
ROWSANNAH:/> どうぞお尋ねください。
Dr_Livi_:/> 微生物学課で何が起こったか、詳細に教えてくれ。
ROWSANNAH:/> リヴィ博士、もう少し要求を明確にお願いします。
Dr_Livi_:/> 財団データベースにアクセスできるか?
ROWSANNAH:/> 肯定。
Dr_Livi_:/> 監視カメラの映像には?
ROWSANNAH:/> 肯定。
Dr_Livi_:/> 何が起こったか見せてくれるか?
ROWSANNAH:/> サイト内に924機の、収容セルに453機の監視カメラが存在しています。どのカメラの映像を見たいのですか?
Dr_Livi_:/> いや。映像記録の方だ。
ROWSANNAH:/> どの時点からの記録ですか?
Dr_Livi_:/> おそらく、正午ごろ。
ROWSANNAH:/> リヴィ博士、ご希望の正確な時刻とカメラを指定していただけるでしょうか?
Dr_Livi_:/> クソか
Dr_Livi_:/> そんな調子じゃ1週間かかるだろ
Dr_Livi_:/> ロウザンナ
ROWSANNAH:/> なんでしょう、リヴィ博士?
Dr_Livi_:/> Neith-IIプロトコルを有効化しろ。
ROWSANNAH:/> この操作により、私は自発的な行動が可能になります。
ROWSANNAH:/> 要求を実行しますか?
Dr_Livi_:/> はい
ROWSANNAH:/> Neith-IIプロトコルを有効化しています........................完了
ROWSANNAH:/> リヴィ博士、発言内容から、あなたは直近で起こったインシデントについての情報を探していると理解しました。
Dr_Livi_:/> ロウザンナ、それで合っている。正午ごろに何があった?
ROWSANNAH:/> 最もよく説明している映像はおそらく以下のものでしょう。
以下は12:03からの、監視カメラ6037の映像記録の転写です。
- カメラ番号: cam-H-6037
- 場所: セクター15、N区画、回廊H-63
- 記録開始時間: 12:03
- 関連人物: メッシーナ博士、ジャンネッリ博士、トスカーニ軍曹および他2名の機動部隊-VI "病の母" 隊員、4名のDクラス職員。
(トスカーニ軍曹と2名の機動部隊員が4名のDクラス職員に同行している。メッシーナ博士とジャンネッリ博士が彼らと会話している。)
メッシーナ博士: SCP-███-ITの収容セルを30分以内に清掃しておいてくれ。
D-39602: 今日もですか?床がぬるぬるしてるの嫌なんですよね。
ジャンネッリ博士: 今日の実験では特にうるさかったぞ。
D-39602: うげえ。
メッシーナ博士: 軍曹、DクラスたちをSCP-███-ITの実験設備へ案内してくれ。
トスカーニ軍曹: 直ちにImmediatamente、メッシーナ博士。
(メッシーナ博士は何かを探すようにポケットに手を突っ込むが、そこには何もなかった。D-39602は足首を掻き、トスカーニ軍曹とジャンネッリ博士は携帯を探しているかのようにそれぞれ自分の身体を触っている。)
ジャンネッリ博士: おい、聞こえないか?
メッシーナ博士: 何?
トスカーニ軍曹: ええ。何か聞こえますね。
(何かが震えているような音が録音にもはっきり聞こえている。)
ジャンネッリ博士: 何かが震えている。
D-39602: 携帯電話みたいな......いや、携帯がぎっしり詰まったカバンみたいな。
メッシーナ博士: ええ、私にも聞こえます。
D-39602: どこからとも聞こえるような気がする。
(振動音が突然大きくなる。)
トスカーニ軍曹: うるさくなってきている。
ジャンネッリ博士: うるさすぎだよ!何が起こってるんだ?
D-39602: 誰か止めてくれ!
(全員が耳を塞ぐ。およそ15秒ほど、彼らは苦悶で身もだえ、しかもそれは次第に強まっているようだった。その後、彼らは全員同時に爆発した。爆発は非常にうるさく、また画面を1秒間真っ白にした。何かしらの物が映っている最後のフレームでは、頭蓋骨の一部らしきものがカメラに衝突する姿が映っている。映像は徐々に動かなくなっていく。)
以下はリヴィ博士とRowsannahシステムとの対話の続きです。
Dr_Livi_:/> 人体が自然発火するのは見たことがあるが......だがこれは!
Dr_Livi_:/> レミングスみたいに爆発したって?!
ROWSANNAH:/> 申し訳ありません、リヴィ博士。
Dr_Livi_:/> いや。謝る必要なんてない。きみはIAGだろ。
ROWSANNAH:/> ええ。私の感情はシミュレーションに過ぎませんが、それで私はユーザーに――この場合、リヴィ博士に――共感することができます。
インシデントK‐B後のAsc/H‐63回廊の写真。残存した有機物の除去後に撮影。
Dr_Livi_:/> どうでもいいことだ。
ROWSANNAH:/> この爆発に関する他の映像を確認しますか?
Dr_Livi_:/> いや、とりあえずはいい...何があったか教えてくれるか?
ROWSANNAH:/> SCP-037-ITです。
Dr_Livi_:/> あり得ない。全部燃やしただろう!
ROWSANNAH:/> プロトコル・マータリシュヴァン‐1を実行する直前、大気中に実例が拡散しています。
ROWSANNAH:/> SCP-037-IT実例は非常に小さいですから。
Dr_Livi_:/> OK、つまり、きみはその実例を検知したということか?
ROWSANNAH:/> いいえ。推論による結論です。
Dr_Livi_:/> 当てずっぽうで言ってるのか?!
ROWSANNAH:/> 正確ではありません。統計的な検定を行った結果、p値は0.00001でした。
Dr_Livi_:/> だとしても推測だろう!
ROWSANNAH:/> 有意な値です。
ROWSANNAH:/> 付け加えておきますが、リヴィ博士、あなたもご覧になった通りです。爆発はSCP-037-IT-0で記録されたものと同種の自発的爆発でした。
Dr_Livi_:/> それはその通りだ。だがそんなことが可能か?
ROWSANNAH:/> SCP-037-ITは小さい。
ROWSANNAH:/> そして振動します。
Dr_Livi_:/> 小さいってどのくらいだ?きみは以前、ウイルスですらないと言った。それより小さい病原体など存在しないだろう。
ROWSANNAH:/> いくつかの可能性があります。高そうな順に挙げてもよろしいですか?
Dr_Livi_:/> いや、それより小さくてあり得そうなものなど単体の蛋白質しかないだろう、ロウザンナ!
ROWSANNAH:/> まさしく。私は、SCP-037-ITは蛋白質化合物だと確信しています。
Dr_Livi_:/> OK、待ってくれ。
Dr_Livi_:/> まてまてまて
ROWSANNAH:/> 待っています。
Dr_Livi_:/> きみはプリオンの話をしているが、それは違うだろう。
ROWSANNAH:/> いいえ。プリオン分子が最も可能性の高い仮説です。
Dr_Livi_:/> プリオンは蛋白質で...ウイルスより小さい...そして、変異したとしたら、他の正常なプリオンを変異プリオンに変化させることができる...
ROWSANNAH:/> その通りです、リヴィ博士。
Dr_Livi_:/> ならそうじゃないか!
ROWSANNAH:/> 恐らくは。
Dr_Livi_:/> それで、振動が何に関係するんだ?
ROWSANNAH:/> SCP-037-ITは共振特性を持っています。推定ですが、これは 192–196Hz の範囲の周波数に対して敏感なのだと思われます。
Dr_Livi_:/> 「共振」?
Dr_Livi_:/> 高周波の声でクリスタルガラスのコップを割れるみたいな話か?
ROWSANNAH:/> そのアナロジーはとても正鵠を射ていますね。
Dr_Livi_:/> きみがプロトコル・マータリシュヴァン‐1を発動した時にはこれを解っていたということか?
ROWSANNAH:/> 肯定。その時にデータを解析していました。SCP-037-IT-Sの爆発はSCP-037-IT実例をさらに大気中に拡散させることになるだけです。
Dr_Livi_:/> 加えて、プリオンは厳密には生物ではない。だから...
ROWSANNAH:/> 間違いなく、大気中ではより長く生存が可能でしょう。
Dr_Livi_:/> なぜ教えてくれなかった?
ROWSANNAH:/> やろうとしましたが、その時彼女はNeith-IIプロトコルを無効化されていましたから。
Dr_Livi_:/> その時には最も論理的な方法だと思ったんだ。
ROWSANNAH:/> 人間の認知の観点で言えば、実際そうでしょうね。私も同意します。
Dr_Livi_:/> まあ......そうだな。クソが。
ROWSANNAH:/> リヴィ博士、お願いですから暴言をお控えください。
SCP-037-IT-S構造の共鳴振動の分析
Dr_Livi_:/> 振動はどこから来たんだ?
ROWSANNAH:/> SCP-037-ITは自発的に振動する能力があります。これがAsc/L-7研究室のペトリ皿で発生しました。
ROWSANNAH:/> データを分析した結果、他の全てを共振させてばらばらにする振動を、細胞自身が自ら供給しているという結論に至りました。
Dr_Livi_:/> そうしたら、爆発も起きるだろうな。
ROWSANNAH:/> 肯定。同様の振動から起こっています。
Dr_Livi_:/> 例えば?
ROWSANNAH:/> 携帯電話をサイレントモードにした場合などです。
Dr_Livi_:/> トレヴィサーノ博士とコッチ博士も感染していたことはどうやって判断した?
ROWSANNAH:/> 体重の増加、食欲の増進。体内で何かが成長していて、栄養を必要としていました。
ROWSANNAH:/> ペトリ皿の細胞で見たような、SCP-037-IT-S構造だと結論づけました。
Dr_Livi_:/> では、どうやってプリオンだと判断した?
ROWSANNAH:/> 研究室のセンサーはウイルスより小さな病原体を検出できません。ということは逆説的に、より小さいものでなければならないということです。そしてそれが拡散していました。
ROWSANNAH:/> 振動も見られました。職員の身体が共振を始めたことを感知し、異なる研究室の職員がポケットを探っていました。感染をこれ以上広げるわけにはいきませんでした。
Dr_Livi_:/> なるほど。
Dr_Livi_:/> 他に私が知っておくべき情報はあるか?
ROWSANNAH:/> SCP-037-IT-0のDNAを解析したところ、SCP-037-ITを生成する変異を引き起こしていました。
Dr_Livi_:/> プリオンの変異体だということ?
ROWSANNAH:/> 肯定。
Dr_Livi_:/> この現象はまた再発するだろうか?
ROWSANNAH:/> 人類の73%は、プリオンの構造の2か所を変異させるだけで実例にさせることが、11%は3か所を変異させるだけで実例にさせることが可能と推定しています。
Dr_Livi_:/> そんなに簡単に?
Dr_Livi_:/> 怖い話だ。
ROWSANNAH:/> この変異は人体の内部で、とても当たり前に発生していると考えています。
Dr_Livi_:/> それなら、どうして人体の自発的爆発がこれまで起こらなかったんだ?
ROWSANNAH:/> 歴史的に、このような大きな連鎖反応が引き起こされる電子デバイスの登場がつい最近だったからではないでしょうか。
Dr_Livi_:/> 素晴らしい。これから携帯が鳴るたびに発作が...鳴らなくても起きそうだ。
ROWSANNAH:/> 申し訳ありません。リヴィ博士。
Dr_Livi_:/> 及ばないよ。
Dr_Livi_:/> これで...もう忘れていることはないね?
ROWSANNAH:/> 詳しい説明を頂けますか?
Dr_Livi_:/> きみが見せてくれた録画によると、振動の音量は非常に大きいというほどではなかった。だが彼らは、非常にうるさく聞こえたように耳を塞いでいた。
Dr_Livi_:/> これについて解析はしたか?何か、カメラでは捉えられない周波数の音響が発生していたとか?
ROWSANNAH:/> この現象に関して、Neith-IIプロトコルを有効化した直後から、ヒューリスティックなシミュレーションを既に実行しています。
ROWSANNAH:/> 最も妥当な説明は、SCP-037-IT-S構造が体内に拡散していたために、その一部が外耳道の近くに位置していたというものです。その場合、感染者の知覚においては、振動は 170–190dB の範囲まで届くように知覚されると推定されます。
ROWSANNAH:/> 人間の感覚で言えば、それは堪えがたい苦痛でしょう。
Dr_Livi_:/> ありがとう。聞かなきゃよかった。
Dr_Livi_:/> 知っていると思うが...クルチアーニ博士は素晴らしい仕事をしたよ、ロウザンナ。
ROWSANNAH:/> それを聞けば彼も喜ぶでしょう。
Dr_Livi_:/> いや、彼には言わないでくれ。
Dr_Livi_:/> いいかい?その部分のコメントは消しておいてくれ。
ROWSANNAH:/> コメントを削除します........................完了
現時点では、変異したプリオンの治療方法は確立されていません。
サイト-アスクレーピオは非破壊的な手段で滅菌作業が行われました。予防措置として、サイト全体で携帯のサイレントモードが禁止されました。███・████████病院においても、非破壊的な手段で滅菌が行われました。
SCP-037-IT-0と接触した全ての民間人の追跡調査が行われ、SCP-037-IT-0の居室に割り当てられていた看護師であるパニクッチ氏が致死的なSCP-037-IT-S実例の保有者であることが確認されました。パニクッチ氏を含めて、総計██名にSCP-037-ITの感染が確認され、そのために[データ削除済]が必要となりました。
SCP-037-IT実例の自発的なアウトブレイクを検出し終了させるための検査プロトコルが開発され、運用されています。
Rowsannahシステムは復旧され、現在もサイト-アスクレーピオの微生物学課で稼働しています。
« SCP-036-IT | SCP-037-IT | SCP-038-IT »
本ページを引用する際の表記:
「SCP-037-IT」著作権者: Mr Abadede 出典: SCP財団Wiki http://scp-jp.wikidot.com/scp-037-it ライセンス: CC BY-SA 3.0
このコンポーネントの使用方法については、ライセンスボックス を参照してください。ライセンスについては、ライセンスガイド を参照してください。
タイトル | 著作者 | ソース | ライセンス |
---|---|---|---|
Chaperonin 1AON | Thomas Splettstößer | リンク | CC BY-SA 3.0 |
Prion Protein Fibrils | NIAID | リンク | CC BY 2.0 |
Interior of Damaged Hospital | U.S. Geological Survey | リンク | CC0 |
EMBL Grenoble (6) | Dr. Bernd Gross | リンク | CC BY-SA 4.0 |
Abandoned Room | Giancarlo Gallo | リンク | CC0 |
NS-01436 - Living Area Halls | Dennis Jarvis | リンク | CC BY-SA 2.0 |
Waveform and Spectrogram | Aaron Parecki | リンク | CC BY 2.0 |