復曲能「菅丞相(かんしょうじょう)」上演

復曲能『菅丞相』記者会見

大槻文藏(観世流シテ方) 天野文雄(京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター所長)

京都造形芸術大学 舞台芸術研究センターでは8月2日(日)に 京都芸術劇場 春秋座にて復曲能『菅丞相』上演します。 1300年の歴史のある能の中で現在上演されている 現行曲が約250曲ほどであるのに対し、 その10倍もの2000〜2500曲が作られ、現在では廃曲となっています。 大槻文藏氏はこれまで意欲的に復曲活動をおこなってきており、 今日まで現行曲の一部の復活演出も含めると20曲ほどになります。 その中でも平成14年に500年ぶりに復曲上演をした『菅丞相』を ここ京都・春秋座にて再演することは、 現代の能における復曲の意義を考える機会となるでしょう。 公演を控えた7月に大槻能楽堂にて 大槻文藏氏と天野文雄氏による記者会見を行いました。

はじめに(企画意図) あらすじ

質疑応答(敬称略)

Q.歌舞伎舞台を用いることによる影響は?

大槻
能舞台の平面性をそのまま春秋座の歌舞伎舞台に当てはめるというよりは、 歌舞伎舞台の立体性を活用して、花道の演出などを取り入れようと思っている。
天野
今後の能は劇場能にも取り組んでいく必要がある。
大槻
劇場の額縁舞台での演能では、能舞台をセットすることが多いがその場合、 能舞台をそのものが舞台のセットのようにみえてしまうという問題がある。
天野
能舞台をセットしない劇場能のための演出や演技が工夫される必要がある。

Q.『雷電』が現行曲として残った一方で、『菅丞相』が廃曲になっていた理由は?

天野
はっきりした理由はなかなか掲示できないが、ひとつには観客の変化ということがあったと考えられる。『雷電』が作られたのは、室町後期で、大衆的な作品が好まれる時代でしたから、『菅丞相』のような深みのある作品より、見せ場が派手で誰にでも良くわかる『雷電』のほうが受け入れられたのではないか。
大槻
演能形態の変化も一因である。『菅丞相』はかつて1日に5〜6番の能を上演していた中の5番目あるいは6番目に上演される曲であり、短くパーッとした雰囲気が求められたのではないか。今日では1日に上演される曲数が減少していて、1番という催しも多くなっています。

Q.時代によって作品の見方が変わるが、『菅丞相』のテーマは現代に合っているか?

大槻
どうやって復曲するかというと、いろいろな方法がありますが、そのなかで一番大事なものはテーマだと考えています。能のもつテーマがいつの時代でも普遍的に共有できるテーマが必要であり、『菅丞相』でいうと「罪」と「許す」ということであると思っています。
天野
大槻さんのように能の「テーマ」というものを演者が問題にすることはたいへん珍しい。しかし、これは今後の能を考える場合たいへん重要な点だと思う。現在の能はもっぱら芸(わざ)を中心として演じられまた鑑賞されている傾向があるが、演劇としての能には当然テーマがあるわけですから。

司会:今井尚美 舞台芸術研究センター 記録:中岡愛 松田ゆみ 平成27年度「大学の劇場」を活用した総合的な舞台芸術アートマネジメント人材育成事業 「公演制作のプロセス」講座インターン生

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